様々な今日的課題にも積極的に対応できる「学び続ける教員」が求められている。10月15日、文部科学省は「大学院段階の教員養成の改革と充実等について」報告書を公表した。国公立大学の教員養成系修士課程を見直し、教職大学院を重点化、既存の国立の教員養成に関わる修士課程については、原則として教職大学院に段階的に移行する。本報告書に基づき、免許法の施行規則や専門職大学院の設置基準等の見直しが図られる。なお教職大学院は平成20年4月から設置されており、平成25年度には全国で25大学に設置される。入学定員は815。
■「専門性の育成 おろそか」「連携 不十分」と指摘
本報告書では現状のシステムや制度について厳しく課題を指摘している。「大学院段階において、教職としての高度の専門性の育成がおろそか」、「校内研修と教育委員会研修の連携・協働が不十分」であり、「学校教育を取り巻く現状の変化に適切に対応できる即応性・柔軟性のある教員を確固たる理念の下で養成することが強く求められている」とする。
様々な学校課題‐‐いじめ・不登校等生徒指導上への諸課題への対応、英語教育、道徳教育、特別支援教育の充実、外国人児童生徒への対応、新たな学びに対応するICTの活用の要請‐‐に対応するためには教科指導力や学級経営力に加え、児童生徒の発達段階やカウンセリングなどに関する理論について理解し、個々に応じて適切に指導できること、知識・技能を活用する学習活動や課題探究型の学習、協働的学びなどの「新たな学びをデザインできる指導力」が求められており、それらの育成が必要であるものの、現状のシステムでは必ずしもそうなってはいない。一方、平成20年に設置された教職大学院では一定の成果が見られることから、さらに教職大学院を強化、充実していく考えだ。
国立大学の教員養成系修士課程は、原則として教職大学院に段階的に移行。専修免許状の認定課程を有する国公私立大学の教員養成系以外の修士課程は、一定の分野について幅広い知識等を強みとする教員を養成する。
共通に開設すべき授業科目(共通5領域)は、各領域を均等に履修させる考え方を改め、コース等の特色に応じて履修科目や単位数を設定できるようにする。スクールリーダーの育成や校長や教頭等をめざす「管理職特化コース」の設置、特別支援教育やICT教育を取り扱う科目をそれぞれ共通科目の一部として必修化、学校マネジメントを重点的に学修するコースの設置など。
総合的な学習の時間、言語活動など、学習指導要領が提起している知識を活用したり探究したりする能動的な学習に対応した教材や指導法を開発できる力量の育成も目標の1つだ。
それに伴い免許法の施行規則の改正や教員採用選考の改善、教職大学院の設置基準も改正する。
■グローバル対応
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また、学生が外国の大学に留学しても、留年することなく教育実習や介護等体験を受けることができるようにする。外国の大学に留学するなどの事情がある学生については、一定の科目の単位を取得していなくとも教育実習などを受けることを認めるなどの柔軟な取り組みを推進。教員採用選考において、TOEFLやTOEIC、英検など外部検定の成績を評価する。
年間800人では不足―玉川大学教職大学院 堀田龍也教授
教職大学院において教員の実践的な力量を向上するなどの試みは大いに効果が期待でき、方向性は推奨すべき。しかし、25大学・定員800人の枠では、現状の学校ニーズには不足。教育内容の見直しを進めつつも教職大学院の確保、そこで教える教授陣の確保が必要。また、学問に精通しているだけでは初等中等教育における教員の実践力を向上させることは難しい。理論と実践を往還しながら研究を進めてきた教授陣が求められている。
【2013年11月4日】
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