NPO法人全国初等教育研究会(JEES)の「第1回JEES教育シンポジウム 授業力をつけよう、若手教師たち!〜若手教師を育てるしくみづくり〜」が6月2日に開催され、全国から約250名の教育関係者が参加した。
JEESは、ベテラン教員のノウハウを継承し、若い先生の授業力を向上させることを目的に設立された。シンポジウムでは柳瀬修理事長(元東京都算数教育研究会会長)の基調講演、堀田龍也理事(玉川大学教職大学院教授)と藤川大祐理事(千葉大学教育学部教授)の対談が行われた。
教師は授業で勝負
柳瀬氏は、「教師は授業力を磨くべき。授業での教師と子どもとの信頼関係が教育の基本になる。一方指導力とは教育活動全般の中で発揮される力だ」と、授業力との違いを示した。
授業力には、教育に対する熱意と使命感、豊かな人間性と思いやり、子どもの良さや可能性を引き出すこと、「わかる授業」を追求し実践できることが不可欠と話した。
また中学の恩師に「なぜ補助線を引く場所が分かるのか」と尋ねたところ「勘だ」と言われもっと数学を勉強しようと思ったエピソードや、初任の学校の校長に「1+1はなぜ2になるのか」と質問され正解できなかったこと、厳しい指導を受けた大学院の指導教官のことなど、大きな影響を受けた恩師3人のエピソードを語った。
具体的指導法を 若手はまず実行
続いて行われた堀田理事と藤川理事の対談で、堀田理事は、「若手教員は具体的な指導方法を身につけなくてはならない。生活規律の徹底、ノート指導の徹底などの指導と成績との相関性は高い。義務教育段階において、学習の型の徹底は悪いことでない」と話した。
堀田理事は現在、指導を徹底するためにベテラン教師が行っている方法をリーフレットにして、若手教員に配布しているという。そして「私はICTばかりしていると思われていますが、ICTは指導方法の1つで、ドリルの活用法などベーシックな指導方法をベテランから若手教師に伝承することに取り組んでいる」と話した。
藤川理事は、「変化が速い社会において、社会の問題は自分たちで解決する姿勢や、市民が寛容さを持ち異質原理と差別化を認め合うことが大切だ」と、問題に取り組む姿勢について話す。
若手教師には、ベテラン教師の経験などを含めた日本の学校教育の成果を受け継ぎながら、その上に新たな学校文化をつくっていくことが求められている。
ベテランが退職し若手教員が大量に入れ替わるこのタイミングは、教師の財産伝承の危機であるが、新しい学校文化をつくるチャンスでもあるととらえたい、と期待を表明した。
外部との連携の 手助けをしたい
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そのためには、教師が学び続ける場が必要だ。
JEESや研究会で教師同士が交流する場や、他の職業の人と教育について考える「教師が越境して社会とつながる場」が今後、一層大切になる。
設立に尽力した森達也副理事(教育同人社代表取締役社長)は、「JEESを設立するに至った理由は二つある。図書教材出版社の立場で、多くの先生方から意見を伺っているが、最近は教材の効果的な使い方への問合せが増えており、ベテランの技術や知識を若手に伝承する取り組みを思案していたこと。そして、学校が企業やNPOなどの団体の協力を取り入れることも必要だが、学校が学校外と連携するには難しい点もある。そこでJEESは、社会と学校の両方の事情を知り、間に立って支援できる存在として先生を応援していきたいと願っている」と語った。
【2013年7月1日】
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