教育の情報化推進フォーラム “21世紀の学び”を考える―CEC

 一般財団法人コンピュータ教育推進センター(CEC)は3月1・2日、平成24年度CEC成果発表会「教育の情報化推進フォーラム」を開催した。テーマは「今、21世紀にふさわしい学びの実現を、すべての人に!」。当日は、「インターネット・リテラシー」「情報モラル」「21世紀型コミュニケーション力の育成」「情報モラル」「コミュニケーション力」などをテーマにした分科会やICT活用に係る各種事業報告、実証実験、事例発表が多数開催された。

【事例発表】Webカメラの活用で思考共有―人吉市立東間小

CEC

 熊本県人吉市立東間小学校では、低学年に学年10台ずつタブレットPC(以下タブレット)を配布。西口雄一郎教諭は、タブレットを活用して算数の解き方の過程を目に見えるようにしてクラスで共有する実践を行っている。

 西口教諭は、2年生の授業でこれまで口頭や実物投影機を使って子どもたちに解答などを発表させていた。タブレットに書き込みながら発表することで、よりスムーズに思考の過程を可視化できるのではないか、と考えた。そこで、算数の計算方法、判断理由、解法順序を可視化し、共有する授業を構想。「たし算とひき算のひっ算(2)」の単元で、タブレットに付属するWebカメラで児童のノートを撮影し、PCに取り込み。児童は、電子黒板に接続したタブレットに書き込みを加えながら説明していった。説明の書き込みもリアルタイムに映し出されるので、理解しやすい。

 また、「かけ算」の単元で、2人ひと組になって校内でかけ算が行える場面を探してWebカメラで撮影。その写真をタブレットに表示して、計算式を書き込んだ。

 生活科「ぐんぐんのびろ」の単元では、児童が各グループで育ててきた野菜を、Webカメラで撮影。異なる野菜の部分を画面に2つ並べて提示することで、比較考察がより容易にできるようになった。校庭も無線LANが整備され、運動場や栽培園でも使用できる。

 西口教諭は、「実物投影機を使用すると児童はカメラを意識して集中力が切れてしまうことがある。文字や線を書き加えるときはタブレットが適している」とタブレットの利点を語る。

家庭科でTPC 拡がる“つながり”― 佐賀市立若楠小

  佐賀市立若楠小学校には、4年生以上の全教室に電子黒板と書画カメラ、4年生以上の全児童に1人1台ずつタブレットが配布されている。

  内田明教諭は5年生の家庭科でタブレットを活用し、保護者や地域の人の参加につながる学習活動を展開している。

  自分の家族の課題を解決する「スペシャルサラダ作り」で、まず、自分で計画して作ったサラダを、各自タブレットで写真撮影し、インターネット上の写真共有サイト「Picasa」にアップロード。保護者や地域の人にも見てもらい、コメントをもらった。続いて、そのコメントを参考に修正したサラダを、家庭で再度調理。そのサラダを保護者に撮影してもらい、「Picasa」にアップロード。同時にサラダの写真を学校の電子黒板に写し、作り方やコメントを発表する「家庭実践報告会」を開催。

  公民館の主事や地域のスーパーの職員、また他クラスの児童も休み時間にタブレットでアクセスし、「Picasa」に感想を書き込んでいる。保護者からは、「子どもの作品が分かって楽しい。家族に会話も増えた」というコメントも。今後は、図工科などでの作品鑑賞や他学年でも、活用を広げていきたい考えだ。

SNS利用で協働学習を展開―浜松市立豊岡小

  浜松市立豊岡小学校の菊地寛教諭は、5年国語科「物語をつくろう」の単元で「伝える相手を意識した学習活動」を展開。

  コンピュータでデジタル物語を作成し、それをSNS(ソーシャルネットワークサービス)にアップして交流校の児童に感想や評価を書き込んでもらう実践を行った。

  グループごとに決めた物語のテーマに合わせて写真を撮り、一人ひとり物語を書く。その後お互いの物語のよい個所を生かしながらグループで1つにまとめ、教育用動画編集ソフトに写真を配置してナレーションを録音、物語の動画を作成。

  作成したデジタル物語は、和歌山大学が運営する子ども用SNSシステム「きっずコミュねっと」に掲載。亀岡市の交流校の児童から多数の感想や意見が寄せられた。

  グループで協働して1つの物語を作り、また交流相手校の児童から感想と批評をもらうことで、効果的に伝えることを意識した言語活動を展開することができた。

 

ICT支援員研修プログラムを開発

【分科会】

  分科会「ICT支援員の資質能力を向上させるための研修プログラムの開発」で報告したのは、ICT支援員の養成に関する調査研究委員会の南部昌敏教授・上越教育大学、石野正彦教授・上越教育大学、小柳博崇・(株)ベネッセコーポレーション、霍本仁史・NPO法人ICTサポートスクエア理事長。

  同委員会では平成23年度からICT支援員に関する調査研究に取り組んでおり、24年度は、ICT支援員に期待する資質能力の目標規準及びルーブリック(※)の策定に取り組んだ。主にフューチャースクール及び学びのイノベーション事業による実践校及び先進的に取り組まれている地域のICT支援員を評価、研修プログラムを開発、その有効性を検討した。

  ルーブリックは、同委員会の調査や文科省「教員のICT活用指導力チェックリスト」をもとに作成。5カテゴリー・3ステージ構成で、カテゴリーは「教育補助員としての資質」「授業者(教職員)支援」「学習者(児童・生徒)支援」「学校運営と情報管理」「ICT環境の運用管理」の5つ。各カテゴリーには下位に21項目設けられ、それぞれに、First stage(ICT支援員として必要とされる基本的な資質能力を身につけている)、Second stage(ICT支援員として必要な能力を身につけている)、Third stage(ICT支援員として必要とされる専門的な資質能力を身につけている)の3段階を設けた。

  研修は、これまで累計3700校にICT支援員を提供してきたベネッセコーポレーションに所属するICT支援員16名に対し実施。着任して間もない受講者から支援員歴6年を超える受講者まで経歴も様々だ。

  まず受講者は研修前の資質能力を自己評価。次に「教員補助員としての資質」について研修、「学校の理解」、「児童生徒の理解」など6テーマに沿い受講者同士のセッションを展開。まとめでは各テーマについて押さえておくべき「知識・理解」を解説する。その後、コア教材を用いた研修と情報モラル研修に分かれ、スキルチェック表で自己チェックをする。

  自己チェックリストによる事前事後比較の結果、教育補助員としての資質に関する意識、授業者・学習者支援及び学校運営・情報管理、情報モラル教育に関する支援のあり方に関する意識が向上した。アンケート調査では、研修に参加しての満足度及び研修内容の理解度が高く、今後のICT支援員としての活動に役立つとの回答を得た。

  今後研究委員会では、本研修プログラムをICT支援員の養成と研修に有効に機能するよう、普及・啓発活動に取り組んでいきたい考えだ。

  分科会のまとめとして小柳氏は「最初の支援はリテラシーや文字打ち。2005年前後では情報モラル。これからは授業支援で優れた実践を行い効果の実感できる支援を行って行きたい」と語った。また、霍本氏は「いつでも支援できる体制のためには予算化が必要。SEやプログラマーのようにICT支援員を職業として明確な位置付けにするためにも全国共通の資格を」と訴えた。

※レベルの目安を数段階に分けて記述し、達成度を判断する基準を示す

【2013年4月8日】

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