「デジタル」「アナログ」使い分けた授業をデザイン―浜松市立豊岡小学校

低ランニングコスト 学校向け フルカラー拡大機で大判教材をもっと手軽に

ICT活用

大型の紙教材とデジタル教科書・教材を使い分けた授業を展開

 小中学校で既に全面実施されている新学習指導要領では、授業におけるICT活用が明記されており、教室のICT環境整備が進むほどその授業デザインや紙教材との使い分けの重要性が指摘されている。電子黒板やデジタルテレビ、デジタル教科書が整備されており、今年度から学校予算でインクジェット式のフルカラー拡大機を導入した浜松市立豊岡小学校(静岡県・秋山直良校長)3年生の「総合的な学習の時間」と「国語」の授業を取材した。デジタル機器と紙教材は授業でどのように使い分ければ効果的なのか。また、フルカラー拡大機は、大判紙教材の使用頻度や活用法にどのような影響を与えているのか。授業者は菊地寛教諭。

 

「総合」でリーフレット

■児童の成果物を拡大して意見交換

ICT活用
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拡大したリーフレットを使った全体学習
(写真下)の後は自分たちが作成したリー
フレットの表現を見直す(写真上)【総合】

 これまで児童は「総合的な学習の時間」において地域学習の一環で浜松市を中心に栽培されている「三方原馬鈴薯」について調べており、「三方原馬鈴薯を知らせよう」をテーマにしたリーフレットをグループごとにまとめている。

  この日は、1グループのリーフレットを拡大出力して提示し、良い表現や適切ではない表現について考え、意見を交換した。

  商品や容器に付けるリーフレットやパンフレット、CMでは、類似製品と比較して素晴らしいと表現することなどが禁じられているため、他地域のじゃがいも「よりも」おいしい、水分が多い、と表現することはできない。菊地教諭はそれについて電子黒板で説明した後、黒板に、児童が作成したリーフレットをフルカラー拡大機でA1サイズに拡大したものを提示した。

  その後、電子黒板で、リーフレット上で今考えるべき箇所について明確になるよう部分的に拡大して提示し、適切ではない表現について話し合った。

  児童の発表内容や意見は、A1サイズに拡大したリーフレット上に記入していく。大型紙教材の活用により、児童の意見交換が活発に行われた。

  次に児童はグループごとに、前時までに作成したリーフレットの表現について話し合い、適切な表現を考えながら「キャッチコピー」を考えた。

■感熱方式の拡大機からフルカラー拡大機へ

  同校ではこれまで、大型紙教材の作成は、感熱式の拡大機を使っていたという。菊地教諭に、今年度からインクジェット方式のフルカラー拡大機を選定した理由を聞いた。

  「初めて見たときからこれならば大型の紙教材をもっと授業に使いやすくなると思いました」と話す。「感熱式の拡大機は、1枚あたりのコストが高く、なかなか授業で積極的に活用できませんでした。また、色がモノクロのみなこと、感熱紙であることから光や熱に弱いため、劣化しやすく、長期間の掲示には耐えられないという課題もありました」

  そこで注目したのが、エプソンのフルカラー拡大機だ。

  大判プリンターとスキャナをUSBケーブルで直接接続することで、PCなしで、手軽に「拡大機」として活用できる。1枚あたりのランニングコストが低いこと、インクジェット方式で保存性にも優れていることから、これまで以上に授業に大型の紙教材を手軽に活用しやすくなると考え、学校備品として要望を上げたという。

  フルカラー拡大機は平成24年度予算で購入、2学期から使い始めている。

  原稿をスキャナにセットしボタンひとつで簡単に拡大コピーできるため、他の教職員にも好評だという。PC作業が苦手な人もコピー感覚で簡単に使えることから、ほとんどの教職員がワークシートや教材を拡大するなど積極的に活用している。

  モノクロだけでなく、カラー原稿も拡大できる。インクジェットなので長期保存が可能な点も魅力だ。繰り返し振り返らせたい学習内容や定着させたい内容などを教室に長期間に渡り掲示することができる。

  もちろん大型プリンターとしても活用できる。

 

国語で小見出し作り

■大判の紙教材は 振り返りや定着に

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大判の紙教材は長期間掲示したい
ものに使う【国語】

 国語では、単元「かるたについて知ろう」で、段落ごとに小見出しを考える授業内容だ。

  児童は、段落の中で「大事」だと思える言葉に線を引き、発表した。菊地教諭は、フルカラー拡大機で出力した大判の紙教材に、児童が大事だと考える言葉を記入していく。

  さらにデジタル教科書の本文を電子黒板に投影し、キーとなる言葉を絞り込みながら「不要な言葉」を消していく。児童はキーワードを組み合わせたり表現を変えたりして「小見出し」を考えた。

  児童が考えた小見出しはまとめとしてフルカラー拡大機で出力した大判の紙教材に記入していった。

  菊地教諭は、電子黒板や書画カメラ、デジタル教科書・教材などのICT機器とともに大判の紙教材を授業で多く活用しているという。菊地教諭に、紙教材とICT機器の使い分けについて聞いた。「子どもの作業は、繰り返しやり直しができることから、電子黒板などのICT機器で行っています。また、一過性の情報を提示する際にも電子黒板などを活用しています。大判の紙教材は、教室に長く掲示して振り返りに使いたいものや定着させたいものなど、長期間掲示しておきたいものに使っています」

  教室には、前回の授業で作成した大判の紙教材が提示されていた。この日使った紙教材も教室に掲示し、次時以降に活用する予定だ。

■授業でも行事でも大型提示物を活用

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印刷室にはフルカラー拡大機の
使い方が提示されていた

  ランニングコストが大幅に低くなったことから、ちょっとした授業アイデアも手軽に実現できるようになった。

  算数の授業で、図形を拡大してグループごとにそれを折り、円の中心を見つける活動を行ったところ、「大きな折り紙」は児童の興味関心を大いにひきつけた。

  社会科で児童が作成したチラシを拡大出力してみんなで評価し合う活動にも使った。

  授業以外でも活用の幅は広がっている。

  これから実施予定の学校説明会に訪れる保護者に向け、パソコンクラブで作成した学校紹介のチラシを拡大して廊下などに掲示する予定だ。

  校内研修でもフルカラー拡大機は活用されており、学習指導案を拡大して付せんを貼るKJ法で事後研修に取り組んでいる。

  同校の秋山直良校長は、「これまで使用していた拡大機の経年劣化に伴い、買い替える際にインクジェット方式のフルカラー拡大機にしたいという要望が教員から上がった。カラーでも拡大でき、色あせにくい点、ランニングコストがこれまでよりも低い点などのメリットを考え、学校予算で購入した」と話す。

  菊地教諭は「黒板も、電子黒板などのICT機器も、紙教材も、全てを使って授業ができる環境になった。フルカラー拡大機は、カラーなのに低コストである点、掲示すると大きくて目立つのに手軽に活用できる点がメリット。新学期には、学級写真を拡大コピーして教室に掲示したいですね」と話す。

  教室の雰囲気づくりには昔から学級掲示物が欠かせない。学級掲示物は紙が基本。それがフルカラー拡大機によって、より手軽に低コストにできるようになった。

  ICT環境の活用が進むほどに「デジタル」と「アナログ」の「併用」や「使い分け」の重要性が指摘されており、大型紙教材には、手書きして教材を作成していた時から変わらない魅力がある。そんな大型紙教材の魅力を活かした授業実践がフルカラー拡大機によって、より増えていくことが期待できそうだ。

ICT活用 ICT活用
スキャナに原稿をセットすると
大型プリンターから拡大出力される
学校に導入されているフルカラー拡大機
「PX−F80MSSC」(エプソン販売)

 

【2013年2月4日】

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