第2回 21世紀型スキルフォーラム―有志市長の会

21世紀型スキルフォーラム

「21世紀型スキルフォーラム宣言」を
した有志市長の会

 「21世紀型スキル」フォーラム有志市長の会(横尾俊彦会長・多久市市長)(以下、有志市長の会)は11月14日、東京都内で第2回「21世紀型スキル」フォーラムを開催し、21世紀型スキルの育成に向けた取り組みを発表した。有志市長の会を立ち上げた横尾俊彦会長は、「21世紀型スキルは、デジタルネイティブを正しく導き自分の受けてきた教育について自信を持って世界で活躍できる力を育む可能性を秘めた壮大なビジョン。世界レベルで同じことを調べることができる環境は様々な可能性を開くための一歩となる」とあいさつした。会の終了時、有志市長の会は今後に向け「21世紀型スキルフォーラム宣言」をした。

 

◆オーストラリア教育・地域社会教育省 ミッシェル・ブルニジス教育長

  ニューサウスウェールズ州(以下NSW州)の教育予算は145億ドル。これは全体予算の約4分の1にあたるという。日本各地の学校と姉妹校として提携しており、中には42年もの長期にわたっている学校もある。NSW州の生徒約10%が日本語を学んでおり、中国語やヒンドゥー語などアジア言語を中等教育学校の約12%が2020年までに話せることを教育目標の1つとしている。

TV会議システム・電子黒板
学習者用端末を全教室に整備

21世紀型スキルフォーラム

  インターネット活用を始めた年齢平均は8歳、12〜14歳の子どもの96%がインターネットを活用しており、変貌する世界に対応していくためには21世紀型スキル「4C」を身につける必要がある。「4C」とは、クリエイティビティ、コミュニケーション、コラボレーション、そしてクリティカルシンキングであり、創造的かつ批判的に考え、協働で問題を解決していくことができる能力の基礎となるものだ。

  知識やスキルは新たな世界通貨。教育者は、世界環境の需要とテクノロジーに順応していかなければならない。学習内容に最も大きな違いをもたらすのは、教師の質の高い指導力であるからだ。

学習者用PCやテレビ会議など

  オーストラリア教育相は2008年、教育目標である「メルボルン宣言」に署名。デジタル教育革命に着手した。NWS州では公立学校9〜12学年(中3〜高3)の生徒全員にラップトップPC約1万台とワイヤレスネットワーク環境、学校用ICT支援員の配備、教員研修などを実施しており、各教室にはテレビ会議システムや電子黒板などが設置されている。具体的には、電子情報ボードとプロジェクター、スピーカー、テレビ会議用カメラとモニター、電子情報ボード用PCや室内コントローラをセットしたキャビネットなど。生徒用PCではオンライン学習ツールや協働学習用ソフト、教育用ブログシステムなどが使えるようになっている。

  NSW州ではテレビ会議が重要なツールとなっており、テレビ会議やWeb会議を通して専門教育を受けることができ、他国・地域の生徒たちと交流を行っている。

教員、保護者向けWEBで情報提供

  オーストラリア初の全国的カリキュラムである「オーストラリア教育課程」は、世界初のオンラインカリキュラムだ。NSW州ではこれを独自のシラバスにまとめ、オンラインで提供している。また、教員のICT活用能力をサポートする目的で、教育者用ネットワーク「PLANE」(NSW州教職員協会認定)を提供しており、研修教材や評価ツールの提供、授業活用のアイデアや教材共有などの場を提供。教育実習生、新人教員、熟練教員、管理職のコミュニティがあり、SNSとも連動している。

  小学校から高校生の子どもを持つ保護者向けにも、コミュニティネットワーク「SchoolAtoZ」を提供。学校の様子や学習サポートに必要な情報の提供、SNSとの連動で保護者ニーズを図るなどを行っている。

  重要なのは教育の質にフォーカスを当てること。そのために必要なことは「第一に学校の強力なリーダーシップ。次に信頼できる未来の教室環境の構築。第三に、刺激的な学習教材。最も重要なのが、教員の質の向上。技術は変わるということを理解し、グローバルな教室環境を生徒に合う形で提供してかなければならない」と話した。

◆マイクロソフトコーポレーション文教部門担当 アンソニー・サルシト副社長

21世紀型スキルフォーラム

 全世界において、教育によって難しい問題を解決し、21世紀で活躍できる働き手を生み出す必要があるという認識が高まっている。そのためのスキルが21世紀型スキルでいわれている「4C」。これは既に「ニーズ」ではなく「マスト」な能力となっており、「4C」を育むことができる「教室環境」を提供していかなければならない。

  しかしデバイスを教室に設置するだけでは不足で、それを活用して「変化に適応しながら明るい未来を描ける力」を育むことができる「教え方」が必要だ。

教師の役割は 変化している

  新しい教室環境を前にすると、「どう使うのか」「コストはいくらかかるのか」という質問から始まることが多い。もちろんそれに回答はできるものの、この質問は伝統的な学習に固執している場合に多いと感じている。本来は、テクノロジーを利活用して「4C」を育むためにどのような学習環境を構築し、どう新しい学習を設計していくべきか、という質問からスタートすべきで、新しいテクノロジーはその質問の一部に回答することができる。教師は知識を伝達する役割からダイナミックな学習への旅路をサポートする役割へとテクノロジーの変化により役割は変わってきている。

基本的な活用から より高度な学習へ

  テクノロジーは今、学校においても頻繁に活用されるようになった。しかし、まだまだやるべきことはたくさんあると感じている。

  教室におけるICT活用について調査したところ、そのほとんどが、情報の検索やドリル型学習、テストの実施や宿題の提出など、「基本的なこと」に使われている。

  テクノロジーによって、かつてできなかったことができる。では私たちはそれを使ってどのような経験を重ねていくべきなのか。情報を検索するだけ、個人学習で学力を上げるだけで良いのか。

  今後は、新しい教室環境を活用して、基本的な使い方から高度な学習にシフトするために何から取り組むべきか、にフォーカスしていかなければならない。例えばデータや情報の分析、クラスメートとのコラボレーション、教室外の人との連携、シミュレーションやアニメーションなどの開発など、より高度な学習を展開していくことで「4C」を育むことができるはずだ。

  現在マイクロソフトでは様々な取り組みに着手しており、その1つが「21世紀型スキル」育成をサポートするWebサイトの構築だ。生徒が自分で活用できる仕組みで、1月からグローバル展開する予定。日本はもちろん全世界に影響を与えていきたいと考えている。

【2012年12月3日】

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