11月10日、東京学芸大学で教育フォーラム2012「ICTを活用した21世紀の授業を考える」が開催され、北京、香港、上海の小学校の授業事例が報告された。主催は東京学芸大学・3市連携IT活用コンソーシアム。なお同日は「学校図書館げんきフォーラム2012 科学と学校図書館の未来」も同学で開催され、「教育の情報化と次世代型読解力」をテーマにデジタル教科書やデジタル教材、電子黒板と学習者用端末連携システムなどが展示された。
【東京学芸大学・3市連携lT活用コンソーシアム】
北京、香港、上海の小学校が報告
ICT活用は授業デザインの前提
北京市の研究校でiPadを活用 |
同コンソーシアムは平成16年度より東京学芸大学と小金井市、小平市、国分寺市の3市教育委員会・学校が連携・協力して、公立学校における情報通信技術を用いた教育の推進と東京学芸大学学生のICT活用実践指導力育成、同学の教育実践研究、各自治体の教育力向上に取り組んでいる。教育フォーラム開催は今回で5回目。
北京市の小学校はiPadを活用した音楽授業事例について、上海市の小学校は美術の授業でのペンタブレット活用について、香港の小学校はモバイル環境とタブレット端末、電子ペン活用における小学校の学習について報告した。
iPadを 音楽で活用
豊師附属小学校は北京市におけるiPadの教育研究校であり、音楽教員は4人でアイデアを出し合って授業を考えている。音楽の授業時、iPadでよく用いられているアプリは「grandband」だ。打楽器かキーボードを選択して演奏することができるアプリで、様々な楽器の音が収録されている。iPadだけで様々な楽器の音を体験できるため、これをきっかけにその他の楽器活動にも良い影響を与えたという。また、自分の担当パート練習のため、iPadの録音機能も活用して聴き返し、歌い方を学んだ。これらの学習を通して児童全員が楽譜を読めるようになり、表現力が豊かになったと報告された。
ICT活用で 遠近法を習得
「遠近感」学ぶのに最適と報告 |
デジタル教材は連携して開発 |
上海市の裏東新区観察潤小学校の報告は、東京学芸大学の木村守氏が代理で講演。美術教育に新しい技術即ちPCを使って絵を描くことで、これまで理解が難しく習得しにくかった遠近感の表現を、体験的かつ容易に学習した。「Atrage」というお絵かきツールとペンタブレットを使って海の背景を描き、ヨットをコピーして拡大したり縮小したりしていくことで、「小さくすると遠くにあるように見え、絵に奥行きが生まれる」ことを学んだ。投影図、斜投影図など理解が難しい技法もICTを使うことで誰でも容易に展開できる学習となると報告された。
ネットワーク活用で 応用力を強化する
香港教育局には情報ITセンターがあり、約50校の提携学校や大学・専門学校、出版社、電子学習システム機構が提携して「情報リテラシーネットワーク」を立ち上げ、教材やカリキュラム、評価システムの開発や相互交流、相互支援を展開。情報ITセンターの算数科学習センターでは「応用力」を身につけるカリキュラム開発や教材開発に取り組んでいる。
香港の朱正賢小学校では、算数科の応用力を強化する目的で4〜6年生でモバイル数学ラーニングを展開。2人1組になり、身の回りにある線対称図形を探して撮影し、対象軸を見つける授業や博物館などの移動学習で端末を持ち込んだ学習、姉妹校とモバイルラーニング活動、マカオなど他地域との文化交流など、提携校、姉妹校、海外、文化施設と様々な学校施設と連携して協働学習や共同作業、児童どうしの意見交換なども随時取り入れており、学習内容や状況によってオンライン学習、オフライン学習を使い分けている。図形の理解を図るための算数教材や、端末を持っているだけで長さや高さを計測できるシステムなども開発。香港のデジタル教科書はシンプルなもので、教材開発は主に教師の役割となっているようだ。
報告者の李志成氏は、課題は教材開発と教師の能力であり引き続き取り組んでいくと述べた。
【2012年12月3日】
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