アドビシステムは9月12日、都内で「2012アドビ・エデュケーション・フォーラム 社会が求める新たな人材」を開催した。これは、次代を担う若者を輩出するために大学教育はどうあるべきかについて、教育のプロと最先端のビジネスのプロが提言するというもの。
これからの大学教育では、デジタルリテラシースキルの養成が求められていること、そのためにいっそう大学の情報化を進める必要があることが明らかになった。
米国大学の教室は マルチスクリーン化
トレイバー・ベイリー氏 |
同社のワールドワイド・エデュケイション担当ディレクターのトレイバー・ベイリー氏が、米国の大学教育における情報化の現状を発表した。
現在米国の大学では、「マルチスクリーン化」「クラウド化」「ソーシャル化」が進んでいる。「学生がタブレットを持つようになり、授業で大小のスクリーンが使われている。また、SNSで教師と学生の交流や教材を公開したり、教師どうしで知識や教育プランを共有したりしている」と話す。
デジタルのクリエイティビティの重要性が高まっていることも指摘した。
米国の大学の費用は4年間で約800万円かかる一方、現在大学卒業生の3人に1人しか仕事の受け皿がない。2007年から企業は70万人の学部卒業生を、従来高校卒業生を対象としてきた職種で採用しているという。その一方で米国連邦準備銀行は、米国経済が雇用者の「スキル不足」に苦しんでいることを明らかにした。
こうした状況を受け、米国の大学では、「学生が将来成功するためには社会で役立つスキルを大学で教えなくてはならない」と考え始め、プログラムを改良している。
大学にソフトをアドビ社が提供
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そこでアドビ社は、グラフィックデザイン及び動画編集、ウェブデザインなどができる統合ソフト「adbe creative suite」で、教育を充実させるデジタル体験の創出の手助けをしている。
オレゴン大学では、タブレット端末を活用して、学生が学内でデジタルマガジンを制作。マーケットで評価される雑誌のデザイン、レイアウト、コンテンツの開発、配信のスキルの習得に役立っている。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学では就職にそなえ学生に21世紀のデジタルリテラシースキルを提供するために、「adbe creative suite」を教員、学生、職員に無償で提供したところ、3か月で3分の1の学生や職員がソフトを所有。データのビジュアル化や分析を使用することで、学生が新しい知識を得ることに役に立っている。
レイク・ワシントン大学では、学生に21世紀型のマルチメディアスキルを身につけるためのトレーニングや資格取得を提供したところ、今日の求人市場が求めるスキルを備えた学生であるとの評価を得ることができ、グローバル企業への就職が可能となったという。
最後にトレイバー・ベイリー氏は、アドビは日本の大学へも同様の学習プログラムを提供し、教育を充実させるデジタル体験の創出し、学生のデジタルスキルの習得の役に立ちたいと語った。
【2012年10月8日】
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