文部科学省が実施した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」(平成23年3月)では、「教育用PC」「校務用PC」「クラス用PC」の台数が調査された。しかし今後、そのような分類は難しいかもしれない。授業用や校務用、さらには学習者用として1台の端末で使い分けができる環境の時代が到来するかもしれないからだ。それを可能にするという「NFC搭載タブレット」を用いたソリューションとは何か。
今日的な課題を 一気に解決する
総務省・フューチャースクール推進事業等の実証実験に倣い、1人1台の学習者用端末環境の整備に着手する学校が増えている。しかしその活用と管理については解決すべき課題が多い。
ASUS JAPAN法人営業課 鈴木真二課長 |
また、校務用PCを100%配備したものの、教育用PCと兼用している教育委員会もある。情報漏えいリスクの関係から自宅での校務作業が制限されている自治体もあり、それを不満に感じる教員もいる。
これら学校の情報化における各種課題を一気に解決すべく、ASUS JAPAN、アイズ、ミカサ商事の3社は共同で「NFC搭載タブレット」を用いたソリューションを提案する。鈴木真二氏(ASUS JAPAN法人営業課課長)、川邊浩氏(アイズ代表取締役)、徳永秀俊氏(ミカサ商事ソリューションビジネス本部ビジネス推進部部長)、畑中寿氏(同マネージャー)に聞いた。
ICカードで専用端末化する
校内において教員や児童生徒が自分のICカードを端末のNFCリーダーにかざすと、それぞれの用途に合った個別のデスクトップが現れる。自宅など校外でも、ICカードをかざすだけで校内と同じ環境を再現できる。そんな教育環境を実現するのが、3社が掲げる「NFCソリューション」だ。
端末をICカードで「専用端末化」できる仕組み「iZE Smart Desktop」は、アイズが開発。同社の川邊氏は高校・大学のシステム構築に携わってきた経験もあり、「簡単・安全に端末を活用でき、教室環境に生かせるソリューションとして提供したかった」と話す。
教員は、専用の管理画面からクラウドにアクセス、授業用、学習者用、校務用などのデスクトップを設定する。デジタル教科書、各種コンテンツや教材、校務支援システムなど、ネットワーク上にあればすべて設定できる。
児童生徒は、ICカードでログインすると、どこにいても自分専用のデスクトップが現れ、学習できる。児童生徒のリテラシーにあわせ、インターネットに接続するか否か、課題を提示する期間等、教員側で設定できる。
川邊氏は「ICカードを個人に割り当てるというNFCソリューションで、端末に縛られない自由度の高い環境をユーザに提供するという考え方です。こうすることで1台の端末を授業用、校務用、学習者用など複数の用途で活用できます。教育委員会や学校にとっては、導入及び管理コストが低くなり、端末を全員分整備予定であっても当初は兼用とする、など導入の柔軟性も高くなるのでは」と話す。
授業中に機器トラブルがあっても、授業データは端末に依存しないため、端末を変えるだけで学習を継続でき、万が一端末を紛失・盗難されても個人情報は漏えいする危険がない。
京都外大西高で導入
この「iZE Smart Desktop」をカスマイズし、学校・教育委員会等の各教育機関ニーズに合わせた安全な教育クラウド環境を構築するサービス「MIKASA Cloud for Education」を提供するのがミカサ商事だ。既に京都外大西高等学校では、今年度4月から開設した通信制課程で、この取り組みを開始している。
NFCソリューションの1世代前の仕組みであるUSB認証によるシングルサインオンでの稼動となるが、3か月経過後もトラブルなどの報告はほとんどないという。
教育機関に特化したクラウド体感 ショールームを提供
「MIKASA Cloud for Education」は月額制かつ低価格設定のため導入コストを抑えやすいのが特徴だ。Windows端末、Andoroid端末いずれも対応しており、既存環境をそのまま活用できる。
同社の徳永氏は「大阪において、文科省が示す『教育の情報化ビジョン』を実現する教育環境を体感できるショールームを建設予定。教育関係者だけではなく、児童生徒にも近未来のIT学習を体感してもらう構想もある」と話す。完成は来年4月の予定だ。
NFC内蔵で さらに進化するタブレット端末
ASUS JAPANでは今後、NFCを内蔵したタブレット製品の開発を強化する方針だ。そして「iZE Smart Desktop」及び「MIKASA Cloud for Education」とのパッケージで提案していく。
これまでNFCソリューションを利用するには、端末に外付けのICカードリーダーを接続する必要があったが、NFC内蔵タブレットではその必要がない。ICカードを端末にタッチするだけで専用デスクトップが瞬時に現れ、シームレス化が実現する。
同社の鈴木氏は「文部科学省や総務省による国の実証事業において外資系メーカーの端末が採用されることは極めて少ない。それは端末ハード単体の提案に留まってしまっているため。しかし昨年度、総務省フューチャースクール推進事業の実証校1校において、Windows7搭載タブレット『EeeSlate B121』が69台導入されたことは、教育市場に対する大きな自信になった」という。
「今後、弊社はアイズやミカサ商事との協業により、NFCソリューションの提案を強化していく。近い将来、弊社タブレット端末が導入採用候補機に挙がった際、『Why ASUS?』が明確に伝わるような環境構築を進めていきたい。また、タブレット端末で利便性の高い学習環境を提案し、児童生徒どうしの情報交換や保護者への連絡シェアなども視野に入れた総合的な学習環境の構築を目指す」と話す。
【2012年10月8日】
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