ICTに積極的な教育機関ほど成果―総務省 情報通信白書

 総務省は7月17日、「2012年版 情報通信白書」を公表した。ICTは成長のエンジンであり、成長戦略と課題解決の要の位置にあるという観点にたち、日本のICTを取り巻く現状と課題について、ICT産業、ICT利用部門の2側面から多面的に分析。教育分野におけるICT利活用とその効果では、積極的にICT化に取り組んでいる教育機関ほどICT化の効果を得ていると報告されている。

日本のICT化は 各国から遅れ気味

  本調査は情報通信の政策の動向や動向について明らかにするために毎年作成しているもので、今回で40回目。

  各国でICTは経済成長に寄与しており、労働生産性の上昇について、資本設備の情報化要因がプラスの効果を発揮しているにも関わらず、各種ICT国際指標で日本は「立ち止まり」傾向にある。

  通信インフラ等での優位度が縮まる一方、普及・利活用面の遅れも見られる。また、世界の通信事業者やICTベンダーが開発途上国も含む海外市場に進出することで成長しているが、我が国企業の海外進出状況は低調だ。

震災後に意識変化

  教育・医療分野においてもICT化を進めている機関について効果があることが分かった。

  ICTを活用した街づくりは7割以上の自治体が肯定的であるが、予算、データ不足、人材不足が課題として指摘された。全体の約7割の地方公共団体が震災を契機としてインターネットの活用を強化するなど、震災を踏まえて意向が変化している。震災後、地方公共団体においては全体の79%がクラウドの導入を検討している。

ICT化の教育効果

  ICT活用の教育効果については、「教員の指導方法・授業内容の改善」や「教職員同士のコミュニケーション活性化」といった項目での効果が高いと評価されている。「生徒への効果」については、「生徒のICT機器利活用技術の向上」の効果が最も高い。また、ICT化が高い程、「生徒の基礎科目の学力向上」や「生徒の学習態度の改善」についてその効果が高いことがわかった。

  平成22年度から実施しているフュ‐チャースクール推進事業における実証校の教員及び生徒に対して行ったアンケート結果も報告。それによると、教員のICT活用指導力は実証研究開始後半年の時点ではそれほど高まっていなかった項目も、1年後には着実に高くなっている。

  また、7割を超える児童がICTを利活用した学習に関する各項目について、いずれも肯定的に評価している。

校務の情報化と教育クラウド化

  平成22年度、総務省の「ブロードバンド・オープンモデル実証事業」に参加、校務支援システムをクラウドにより活用する実証実験に参加した沖縄県宮古島市では、校務文書の共有や児童・生徒の成績管理、出欠管理など実際の校務を行うことで、業務の効率化や情報共有の有効性を検証した。実証前のアンケートでは負担感が大きいとする回答が多かったが、事後アンケートにおいては、継続してシステムを利用した際には校務の負担が軽減されると思うという回答が半数弱に及んだ。

 同実証実験後、宮古島市においては、正式にクラウドによる校務支援システムが導入され活用が進められている。

  本調査報告書はA4カラー刷りの冊子を発売中。子ども向けに情報通信白書 for Kidsも公表。なお今回より情報通信白書ePub版電子書籍を無料化した。

詳細 http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/

【2012年8月6日】

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