フューチャースクール廃止判定について、改めて仕分人にレクチャーすべき

 6月16日、日本教育工学会(JSET、永野和夫会長・聖心女子大学)は、「『教育の情報化ビジョン』と教育工学」をテーマにシンポジウムを開催した。登壇者の1人である鈴木寛議員は、文部科学副大臣として平成23年度、「学びのイノベーション事業」を立ち上げた1人。シンポジウムの中で鈴木寛議員は、フューチャースクールの仕分け結果について、「改めて仕分人にレクチャーすべき」と述べた。

この2年間、教育の情報化が進まなかった理由

フューチャースクール

鈴木寛議員

  「文部科学副大臣であった2年間、教育予算は拡充し、高校無償化や奨学金など学習権の拡充も進み、多くの教育ミッションはかなり達成したと考えている。唯一予想通り進まなかったのが『教育の情報化』であった」。この原因のひとつとして、「日本で最も有力な評論家の1人が『デジタル教科書が日本を滅ぼす』などの著書を出し、代表的なメディアが『デジタル教育で日本の心が滅びる』と書くなど、予想以上の逆風があった」。その表れが仕分けによる総務省のFS事業の廃止判定だと言う。

廃止判定が、事業内容を高めるきっかけに

 「前回の仕分けでスパコン『京』が廃止判定を受けた際、担当と共にパブリックコメント15万通を見直して『高性能な計算機』から、津波予測など様々な計算に対応できる『高性能で多様なニーズに対応できるコンソーシアム』として事業のコンセプトを再構築した。その結果、次年度のスパコン『京』は様々な賞を総取りすることができた」と、仕分け廃止判定が、事業内容をより高めるきっかけとなったことを指摘した。

  フューチャースクールについては、「2009年の仕分け騒動からの悪循環を断ち切るためにも、小さな成功体験を積み重ねて好循環を作っていくこと。パブコメなどを精査して検討、事業内容をさらに高めていくと同時に、今回『廃止』認定をしたFS事業の仕分人である『有識者』全てにフューチャースクール事業の意義についてレクチャーし、それでも廃止判定をするのかどうかを改めて問う必要がある」と述べた。

  「これから求められる人材」について、「日本はいまだに、正確に記憶しそれを正確に繰り返すという工業社会に役立つ人材育成が教育の柱になっている。『考えるな』『皆と同じことをやりなさい』という教育は、変革していかなければならない。今必要なのは、クリエイティブでコラボレイティブな働き手。イノベーションを起こせる人材、グローバルコミュニケーションができる人材、スポーツや芸術、医療などに優れた人材が必要であり、いずれの人材育成においてもICT活用は重要だし外せない」

  また、学力中低域層の底上げのポイントは少人数教育であるとし、「教員が児童・生徒と向き合う時間の確保のためにもデジタル教材や校務の情報化、個別の状況をアーカイブできる学習カルテなど、ICTは学びの質に影響を与える。これら教育の情報化に対応するためにも、現場をリードする教員や支援員の養成や拡充を」と述べた。

◆パブコメ募集は7月中旬まで  http://www.soumu.go.jp/menu_yosan/jigyou.html#h24
 フューチャースクールを含めたパブリックコメントは7月中旬まで募集中。

 なお川端総務大臣は6月15日の閣議後の記者会見で、フューチャースクール仕分について「本事業は新成長戦略や新たな情報通信技術戦略によって文科省と総務省が連携して進んでいる3か年事業で現在継続中のもの。基本的に私自身は、本事業自体は大変有意義で有効なものと考えており、世界の流れでもあると考えている。今後は文科省とより緊密に連携を取り、仕分け結果も含めて、議論していく」とコメントしている。

【2012年7月2日号】

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