かつては各自治体にサーバを置いてデータを管理する方式が主流であったが、安心と安全を担保しながら教育情報を活用がきる学校環境として、校務支援サービスや教育コンテンツをデータセンターからネットワークを通じて利用できる教育クラウド化が進みつつある。
大規模自治体においても教育のクラウド化や校務の情報化が進んでいる。クラウドサービスにはプライベートクラウドとパブリッククラウドがあるが、校務支援を視野に入れたクラウド構築の際は個人情報保護の観点から、現状ではプライベートクラウドの採用が多い。
■横浜市
横浜市教育委員会では昨年度から、市内小学校の教育基盤をクラウド化した。本年度から全小学校で成績処理システムが稼働を開始している。中学校においては、来年度から名簿や通知表の作成、管理を一元化する校務支援システムの利用をスタートできるよう現在準備中。教育分野における事務作業軽減策として今年度予算を拡充した。
■広島市
広島市教育委員会でもクラウド化を進めている。各学校に設置されていた管理サーバを廃止し、プライベートクラウドを構築。同時に校務支援サービスやブログ型CMSを導入する。
■東広島市
東広島市教育委員会は本庁のセンターと市内49校の小中学校をつなぐ教育クラウドネットワークを構築。3月から稼働している。各校の校務用サーバ、フィルタリングサーバを本庁のセンターサーバに統合・集約し、センターから一元管理。これまで学校ごとにコンテンツを導入してきたが、サーバ統合により、共通のコンテンツを必要に応じて各学校で参照できる環境とした。
■高松市
高松市教育委員会も「クラウドサービス」を活用した新たな校務情報支援システムの構築に向けた検討を開始している。
■北海道
北海道教育委員会では今年度から道立学校のクラウド方式で校務支援システムの稼働をスタート。指導要録の電子化については、平成25年度からを予定。各学校が年間利用費を負担する形で活用を図る。通知表のカスタマイズには対応するが、帳票等のカスタマイズには別途開発費が追加されることから、基本システムの活用を推奨している。なお札幌市では来年度から、道とは異なるシステムで校務支援システムを構築・導入する予定で、現在準備中だ。
NTTコムが
新方式の教育クラウド
プライベートクラウドの構築には一定の予算確保が必要だ。そこでNTTコミュニケーションズではパブリッククラウドとプライベートクラウドのメリットを取り入れた「コミュニティクラウド」を提案。あらゆる自治体規模に対応した教育クラウドサービスを低コストで提供できる仕組みを構築した。
共通の利害関係を持つ複数の教育委員会・自治体等によって共有できるセキュアな基盤をパブリックベースで構築することにより、パブリックのコストメリットとプライベートのセキュリティを両立。サービス利用という形式のため、設計・構築の手間がかからず、従来よりも短期間で利用をスタートできる。
教育クラウド化においても一般に5年間のリース契約形式が多いが、システムの追加が難しくなる。そこで本サービスは契約期間を1年単位とし、必要な時にデジタル教科書や校務支援などの機能を追加できるなど柔軟に対応できるようにした。
校務支援について現在協力しているのは、内田洋行、EDUCOM、システムディなど。教材については、東京書籍、光村図書、教育出版、帝国書院、ベネッセ、ラインズなど。
今後順次参画企業を増やしていく。http://www.ntt.com/edu-cloud/
中規模自治体向け
クラウド型校務支援サービス「スマート職員室」
大規模自治体ではクラウド型校務支援システムの構築が始まりつつある一方で、中小規模の自治体からは、より低価格で負荷をかけずに運用できる形態が求められている。
そこで富士電機ITソリューションでは、10〜30校程度の小中学校を有する中小規模の自治体ニーズに対応できるクラウド型校務支援サービス「スマート職員室」の提供を開始する。
1サーバ上で複数の自治体がシステムを共用できる方式で、従来比6〜7割程度の価格(5年間利用した際の同社実績比)を実現した。大きな初期投資不要で、必要なシステムから段階的に導入できる。
カシオ計算機の小中学校向けWeb型パッケージシステム「校務支援システム」を利用し、教職員などの事務作業(校務)や情報共有をサポート。教育現場における長年の実績から、学校に詳しいサポート要員が帳票カスタマイズ等にも対応。専用コールセンターも設置する。http://www.fujielectric.co.jp/fsl/
学校法人信学会とキャスタリア株式会社(本社=東京都)は本年5月下旬より、スマートフォンやタブレット端末を導入した教育におけるデジタル活用のための実証実験を実施すると発表した。第一段階として、5月下旬より佐久幼稚園(長野県佐久市)にて約30名の教職員にiPod touch及びiPhone端末を配布し、幼稚園の業務の効率化の実証実験を実施する。また、幼児に対してタブレット端末を配布し、教育効果の向上を図る実証実験も予定している。
信学会は、デバイス導入など環境を整備。キャスタリアは、幼稚園の業務効率化を目的とした幼稚園教諭向けアプリ及び園児の成長履歴をデジタルで管理するアプリを開発、提供すると共にデバイス導入にあたって現場での指導及びコンサルティングを行う。
この取り組みは、幼稚園から大学受験の予備学校まで信学会の教育の全段階にて、デジタルコンテンツ及びクラウドなどを利用したモバイルラーニング、タブレットラーニングの導入を行うことによって、教育システムのデジタル化及び学習効果の向上を目指すもの。期間は1年間を予定。
小林経明信学会理事は、「教員及び職員含めて組織全体がモバイルとクラウドを用いた変革が必要なはず。先んじてその変化を取り入れることで、よりすばらしい教育を実現したい」と述べている。
【2012年6月4日号】
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