【校務の情報化】教育の質向上に貢献する環境を

 

手書きとゴム印を 一年で一気に変更 ―西宮市立香櫨園小学校

月末、学期末、学年末処理が驚くほど効率化しました

 通知表と指導要録の電子化は、2年間で完全実施を目標に進められた。実施を初年度からにするのか、2年目にするのかについては各校が選択。結果、初年度は28校が実施、今年度は32校が実施する。初年度から導入した西宮市立香櫨園小学校(山本幸夫校長)の小山貴美子教頭に、実施の様子を聞いた。

「本当にするの?」 から始まった

教育の情報化
小山貴美子教頭

  小山教頭は昨年度、同校で教員として「通知表の電子化」を始めとする校務の情報化を実践する立場であったという。

  「手書きとゴム印だった仕事をすべて電子化すると言われ、本当にしなければならないの?と驚いた。電子化に伴い何がどう変わるのか、想像もつかなかった」と話す。

  それにも関わらず初年度から実施した理由は何か。

  「新学習指導要領のスタートに伴い、指導要録の項目が変わるため、通知表の内容を更新する作業が派生することは決まっており、変更するものは一気に着手するほうが良いという意見が多かった。さらに、通知表の電子化を他市で経験している教員にメリットを十分に聞くことができた点も大きい。その結果、初年度から取り組むことになった」

  通知表の表紙からレイアウト、形式の選択、各教科の評価項目まで、年度内に決めなければならない項目については、全校一丸で推進。実施決定から数か月間で全てを決めた。通知表をただ電子化するだけにとどまらず、電子化する際のメリットや効率化についても視野に入れた話し合いになったという。

  通常であれば、新年度が始まってから決めることができる内容も多い。

  「それを年度内に終えるというスケジュールはとてもタイト。その結果、学期末、学年末処理と進むにつれ、驚くほど効率化を実感できるようになった」

  例えば指導要録を最初から手書きすると、1クラス分を仕上げるのに3日はかかる。それが、通知表の電子化までできるようにしておけば、過去に入力したデータをコピー・編集をした後、「指導要録を作成する」ボタンを押すだけで完了することに、驚きと達成感を感じた。

教育の質向上
にも貢献する

  電子化は、教育の質向上にも貢献した。電子化に伴い細部にわたる評価基準について、各学年できめ細かく打ち合わせるようになり、より妥当性、信頼性の高い評価が可能になった。平常点、ノート点ひとつとっても、評価の基準が曖昧だと、学年として評価することができない。日頃の小テストに対する考え方や内容を吟味する良いきっかけにもなったという。

  兵庫県では小学校を対象に「兵庫型教科担任制」を導入しており、同校でも本年から高学年で実施している。5年生4クラスの場合、そのうち担任2人が4クラス分の理科を担当、もう一方の担任2人が4クラス分の社会を担当するという方式だ。これにより、例えばこれまで理科の実験準備に同時に4人が関わっていたものが、2人が理科、2人が社会の教材研究に集中できるようになり、教材研究の時間が増えた。さらに、算数は少人数指導を実施しており、音楽専科や図工専科教員もいる。担任のみが指導や評価を行う対象科目は大幅に減っている。

  これら専科教員による成績評価も通知表にそのまま反映されるため、転記ミスはほぼゼロ、訂正印を押して訂正するという作業もほぼゼロ、万が一のミスの際も印刷し直すだけと修正しやすくなった。成績も出欠情報も全て指導要録に連携するため、これまでのように、指導要録への記入のために一年間分の欠席数等を拾い上げる必要がなくなるなど様々なメリットが生まれたという。

  通知表の電子化や標準化は、教育内容を再検討する機会になると共に、教育の質を向上させる良いきっかけとなる可能性があると言えそうだ。

【2012年6月4日号】

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