文部科学省 初等中等教育局長 布村幸彦 |
日本教材備品協会(=JEMA、大久保昇会長)は5月9日、定時総会を実施し、昨年度の活動報告と今年度の予定について報告した。当日は、布村幸彦・文部科学省初等中等教育局長が「初等中等教育の課題と展望」について講演した。
学力中間層の力を伸ばし、新産業の創出など、あらゆる分野で未来を担う人と地を創造するためには、教育の充実により、強い社会基盤を形成することが求められている。
自ら課題を発見し、解決する力、コミュニケーション能力、物事を多角的な観点から捉え、考察する力、様々な情報を取捨選択していく力が求められており、そのためにも、双方向・協働型の新しい学びへと授業を変革していく必要がある。
それを実現すべく、新学習指導要領が改訂された。
新学習指導要領に伴い、発展的な内容が増えたことから、小学校用教科書のページ数は平均で約25%、中学校用は約25%(数学では約33%、理科では約45%)、高等学校低学年用では約12%(数学では約27%、理科では約17%)増加している。
授業時数も増えた。小中学校において、国語、社会、算数・数学、理科、体育・保健体育の授業時数が10%増加した。
また、高等学校においては、国語、数学、外国語に共通必履修科目を設定するとともに、理科の科目履修に柔軟性を持たせている。
学ぶ内容が増え、時間も増えたことから、学校には新しい教育環境や教材が必要になる。
そこで平成24年度からは、33年度までの10年間で総額約8000億円の地方交付税を措置している。
地方交付税として措置しても各地方公共団体で予算を活用しなければ意味はない。
教育予算の確保は未来への先行投資。措置が足りないと思われるほどに使いきり、全国の学校環境の整備につなげていきたい。
H24年度から10年間で
さらに整備を後押し
今年度から、新しい「教材整備計画」が始まった。単年度で約800億円かけ、小中学校及び特別支援学校の学校環境を充実する。
文部科学省では、外国語活動(小学校)、武道必修化(中学校)等の対応を図るため「新学習指導要領の円滑な実施のための教材整備緊急3カ年計画」(平成21年度から23年度)に基づき、総額約2459億円の地方交付税措置を講じてきた。移行期間中の教材費決算額は増加しつつも、地方団体ごとの決算額にばらつきが見られていた。そこで、平成24年度は「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」〈平成24年度から33年度までの10年間〉を公表。単年度措置額は約800億円(小学校約500億円、中学校約260億円、特別支援学校約40億円)で、10年間で約8000億円が措置され、さらなる教材整備の充実を図ることとした。
「教材整備指針」に基づく教材等は、小学校1校あたり316万2千円、中学校1校あたり334万8千円。
例えば、仮に域内に小学校10校150学級、中学校6校80学級ある教育委員会の場合、単年度で4420万6千円が積算額となる。
積算内容は、平成23年4月に通知された「教材整備指針」に基づいた。これにより、新学習指導要領に対応するための教材、技術革新に伴う電子黒板等ICT機器、特別支援教育の指導に必要な経費、少額理科教材(理科教育等設備整備費補助金の対象とならないもの)ほかが積算されている。デジタル教科書・教材やプロジェクター、書画カメラなどももちろん対象だ。
各学校や教育委員会は、この「教材整備指針」を参考にしつつ、各教材の整備目標を定め、計画的な整備を図ることが望まれている。また、各教育委員会においては、複数年次に渡る教材整備計画の策定が一層求められている。
必要な教材を 把握するには
新学習指導要領実現のためには様々な教材が各教科において必要になる。
必要な教材や必要数、その充足状況を把握するには効率的な方法が望まれている。
そこでJEMAと日本加除出版は、「教材整備指針」に対応した「教材整備台帳」(CD‐ROM、税込3150円)を作成した。監修は全事研。台帳の活用で、必要な教材や必要数、現在の充足率のほか、現在の保有数、補完場所等、効率的な管理・運用が期待できる。
JEMAでは、平成23年度、教材整備についての調査「学校における教材整備の実感についてのアンケート」を行っている。それによると、必要性が認められているにも関わらず充足率が大幅に不足しているものに、書画カメラ、プロジェクターなどが挙げられている。
今後においても、子どもたちの確かな学力の育成を図るため、学校教材の安定的かつ計画的な整備が実施、促進されることが求められている。
「義務教育諸学校における新たな教材整備計画」平成24年度から33年度までの10年間=http://www.jema.or.jp/wp-content/uploads/10nenkeikaku.pdf
【2012年6月4日号】
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