堀ロ友紀教諭 |
新学習指導要領では言語活動の充実が図られており、各校種で「新聞」が指導すべき内容として位置付けられた。墨田区立小梅小学校の堀口友紀教諭は、全国新聞教育研究協議会及び東京都小学校新聞教育研究会に所属し、新聞活用の教育に取り組んでいる。5月17日、5年生の授業の様子を取材した。授業は、児童が各自「スクール版 子ども新聞編集長」を使って個人新聞を制作するという内容で、PC教室で行われた。
テキスト作成の基本は5W1H
この日は、昨日の体育の時間で行ったソフトバレーボールの練習の様子を5W1Hについて確認しながら文章を作成、新聞レイアウトにまとめていく。体育の内容は、パスを10回以上続けることをめあてに、最も長くパスを続けることができたグループが給食の「おかわり自由券」を獲得できるというもの。
児童は「子ども新聞編集長」で、5W1Hの枠に従ってテキストを入力、記事をまとめていく。記事を書き終えたら、新聞レイアウトに流し込む。今日使うレイアウトは「はがき新聞用」だ。大きさ、段数、文字数が異なる様々なレイアウトがあり、制作目的や学年に対応して変更できる。絵日記レイアウトのはがき版は、小学校低学年の学習活動に活躍しそうだ。
あらかじめ規定した文字数を超えた場合は、新聞作成の画面上でテキストを修正、文章内容を吟味・推敲して規定数に入るよう調整していく。内容に従って、文字のフォントや色を変えたり、見出しに地紋をつけたりする児童もいる。
気持ちが伝わる 見出しがたくさん
ハガキ大のレイアウトに記事を 流し込み、見出しをつけていく |
大見出しと中見出しは、最初に考える児童が多いようだ。「次は勝つぞ!」「おかわり自由だ!」「チームワーク最高!」など、様々な大見出しがある。パスをうまく続けることができなかったグループと、無事「おかわり自由券」を獲得できたグループとは、見出しのトーンが明らかに異なっている。
小見出しは、「10回の壁は高かった…」「おかわり自由券をかけて」など、より具体的な内容だ。
作品を見ながら 意見を交換する
完成後は友だちの作品を見て回り、誰の作品が良いと感じたか、その理由について意見を交換した。
「見出しの語尾に『…』がついていて、想像がふくらんだ」「『チームワーク最高』という見出しは、良い言葉が2つ並んでいて、うれしい気持ちが伝わった」「『絶対勝つぞ』という言葉と太い文字から、強いやる気を感じた」「『勝ち取れ!』という見出しから、最後まで頑張った様子がよくわかった」など、限られた情報から深く読み取ろうとしている様子がわかる。
意見発表の際、堀口教諭は、児童がそれぞれ指摘した「良いと感じた新聞画面」を各PCに転送する。児童は目の前のPC画面を見て発表者の意見をうなずきながら聞いており、他の児童の意見によって新たな発見をしている様子が見られた。
「新聞づくり」で 表現力を磨く
表現したい内容を伝えるために様々な工夫が |
「新聞づくり」は、子どもたちの学習や体験活動のまとめ学習として従来から取り入れられてきた手法だ。新聞は、文字数や紙面スペースが制限されているのが特徴だ。その制限の中で最大限「伝えたいことを表現」できる「言葉の吟味」が必要になるため、言葉や表現を精選し要約することで、表現力やコミュニケーション力を磨いていくことができる。また、自分の作品の良い点を指摘されることで改めてその良さを確認、意識化が図られ、ノウハウとして定着していく。
その一方、「新聞らしい体裁を持った新聞作り」の指導に時間がかかりすぎる傾向もある。
そこで堀口教諭は、子どもたちのまとめる力、伝える力を育む「新聞づくり」を小中学校の授業に積極的に取り組むことができるよう、新聞作成支援ソフト「スクール版 子ども新聞編集長」を使い、内容の吟味に時間をかけることができるようにした。同校では現在、1人1枚の制作体験を重ねているが、今後はグループによる制作物のまとめなどにも活用することを考えている。
■スクール版子ども新聞編集長
「スクール版 子ども新聞編集長」は、既存の新聞制作ソフト「パーソナル編集長」を小中学校の授業向けに活用できるようにしたもので、新聞レイアウトの基本を押さえたレイアウト(ひな型)が80種類も収録されており、新聞らしい紙面を作成できる。
操作も直感的に分かるようになっており、ソフト活用における指導も短時間ですむ。操作上の画面は、低学年用にはひらがなモード、高学年用には漢字モードを選択できる。表やグラフの作成もでき、様々な教科での活用が可能だ。
学級新聞などにも活用できるよう、授業や学校行事を想定したイラストを収録。
レイアウト用紙を印刷することもできるので、グループで分担して1つの紙面を作成するなどの授業にも応用できるなど様々な活用が考えられそうだ。問合せ=株式会社筆まめ法人営業部 Tel03・6414・6273
【2012年6月4日号】
関連記事