自分の考えの根拠を示しやすくなった |
亀岡市立南つつじヶ丘小学校(京都府)は、パナソニック教育財団の第37回実践研究助成校として「情報活用能力の育成を目指した指導と評価の工夫改善〜電子黒板等のICTの効果的な活用を通して」に取り組んできた。
全教室に電子黒板や書画カメラ等ICT機器が常設されて以来、同校の職員室内ではICTを授業にどのように活かしていくのかについての議論が多く聞かれるようになったという。当初は多くの教員が書画カメラと電子黒板の組み合わせを活用していたが、徐々にデジタルコンテンツの充実を求める声が増えた。
そこで同校では昨年度、指導者用デジタル教科書「国語科」「社会科」「算数科」「理科」を購入、さらに「英語ノート」デジタル版や「生活科」指導書添付のデジタル教科書も含め、その活用を若手からベテランまで15学級15人の担任が研究。教科ごとに効果のある活用スタイルを明らかにし、1年間活用しての顕著なメリットを報告書にまとめた。
報告書によると、教科書画面や図版の拡大提示は全科目共通したメリットであるが、その活用方法や目的については、各教科で特徴があり、「深く考える」「詳しく読み取る」「理解を確かにする」活動にデジタル教科書が活かされている。
■国語科
・児童が発表する際、デジタル教科書で本文を提示し、自分の根拠となる文にラインを入れながら考えを示すと、全体で共有することができ考えを広げることができる。
・資料や挿絵を本文と対比させることにより、考えを深めることができる。
■社会科
・教科書の写真を提示して拡大することで、より細部まで資料を読み取ることができる。
・教科書のページをめくらずに2枚の写真を一画面に映して比較することができ、着目すべきポイントを伝えやすい。
・動画はまとめとして提示すると効果的。本文のみでつかめなかったことをより具体的にイメージすることができる。
■算数科
・図形を移動させる、重ねる、回す、変形するなどの操作ができ、視覚的に理解しやすい
・教科書の図を拡大表示したり書き込みしたりすることで問題の理解が深まる。
■理 科
・必要な映像を何度も見ることができ、追究活動が確かにできる。土砂が堆積していく様子、雲が動く様子などを映像を使ってリアルに見ることができ、理解が確かになる。
■外国語(英語ノート)
・ネイティブの音声がクリアに出る。担任だけで外国語活動の学習を進めることができる。
・画面を見ながらすぐに音声を出すことができ、授業の流れを止めることなく活動させることができる。
活用効果高い
特別支援学級
「見せたい」部分に注目させることができる |
特別支援学級におけるデジタル教科書の効果は顕著であった。
例えば、「総ルビ機能」を使うことで、手元の教科書よりも理解しやすくなる。また、デジタル教科書の写真や映像を使って説明することで、話し手は「伝えることができた」実感を強く感じることができ、聞き手も伝えたいことを理解しやすくなった。
スポット表示機能(写真)などで見せたい箇所をダイレクトに伝えることもできる。プリント記入が難しい児童でも、画面上の操作を使うことで学習を容易に進めやすくなるなど、学習の進捗や効果に大きな役割を果たしたという。
事例集を作成
同校では、これらの活用方法を体現した指導について全校から30事例(各学級2事例)を集め、事例集にまとめた。広瀬教諭は「デジタル教科書と電子黒板でどんな授業ができるのか広く知ってもらうという目的で作成した。その結果、教員が授業を見直し授業のスキルを磨く大きなきっかけになった」と話す。
電子黒板の機能とデジタル教科書の機能の使い分けについてそのインターフェイスの違いが問題になったのは、最初だけ。教科に従い、授業のねらいを達成するために、より効果的な方法を選択して活用するようになっていったという。
完成した事例集は校内で活用すると共に、府内各小学校へも配布した。
なお今年度はiPadをグループ学習に導入、映像制作等を通して言語活動の充実を図る試みを計画している。
【2012年6月4日号】
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