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【iPad活用】iPad1人1台で海外とTV会議 
―甲府市・山梨英和中学校

「つながる」「伝える」「自ら学ぶ」力育む

 山梨英和中学校(鈴木美穂子校長・山梨県)は、英語教育や国際理解教育に力を入れている中高一貫の女子高だ。この取り組みを一層強化する目的で、2012年度より生徒1人1台のiPadを活用した学習の展開を開始した。3月7日、本プロジェクトの趣旨の発表と中学校1年生の授業の様子が同校で公開された。

海外交流の機会が増える
iPad教材
山梨英和中学校の英語クラスでは、海外姉妹校
との連携をスムーズにする目的で、生徒全員に
iPadを導入した。教師もiPadを使ってプレゼン
を行う。今後、海外交流ほかiPadの様々な活用
を検討していく考えだ。

  この日の公開授業は、iPad同士でWeb会議ができるアプリ「フェイスタイム」を使ったオーストラリアとの交流学習だ。交流校は、姉妹校連携が決定したばかりのMentone Girls Grammar School(以下、メントンスクール)。

  授業では、誕生日や好きな教科、好きな食べ物、寝る時間など、中学1年時で学ぶ基本的な文型を使った10の質問を練習してから交流を行った。

  メントンスクールでは姉妹校連携が決定してから、日本語学習が必修になったという。そこで、最初は山梨英和の生徒が英語で質問、後半はメントンスクールの生徒が日本語で質問する形で交流が行われた。

  予定していた質問から対話が発展する様子はそれほど見られなかったが、画面にメントンスクールの生徒の顔が映ると、にっこり微笑んで手を振りながら挨拶するなど、相手とのやりとりが成立することによる喜びを味わったり、相手に聞き取りやすい発話を心がけたりするなど「つながる」喜びを体感することで今後の学習に向かうモチベーションを高める効果が見られた。

iPadで海外交流を

  山梨英和におけるiPad導入のきっかけは、姉妹校連携予定であるメントンスクールの生徒全員がiPadを持つ環境が近く実現することを知ってからだ。両校はテレビ会議等での交流も予定しており、iPad同士であればよりスムーズにリアルタイムで交流を図ることができる。昨年度、理事長の英断により前倒しで予算を確保、教師用iPadを各教科1台ずつ整備した。

iPad教材
iPadで海外と「つながる」喜びを体験
iPad教材
相手の顔がはっきり見えるのでモチベーション
もアップする

  なお生徒用は、英語力強化クラス「IECクラス」の中学1年生20人において、保護者負担により1人1台環境を実現。いずれも「iPad2」(Wi‐Fiモデル)だ。

  同時に補助金(平成23年度私立高等学校等IT教育設備整備推進事業費)も申請、2012年4月からは教員用として学校にiPadが40台導入される。

  iPad専用のアプリケーション「アプリ」については、iPad導入時に保護者負担でiTunesカード5000円分を購入、必要なアプリを用意した。現在は、キーノート(Keynote・プレゼン用)、ページズ(Pages・ドキュメント用)、ナンバーズ(Numbers・表計算用)、フェイスタイム(FaceTime・テレビ会議)、ドロップボックス(Dropbox・ファイル共有)、ボイスレコーダー(Voice Recorder HD・録音用)などを授業において活用している。

  なおiPadは個人所有のため、自宅での使い方については自由だが、学校での使用時間や使用アプリなどについては制限を設けており、iPadリテラシーを図る授業も行っている。

  導入や活用に関しては校内で推進チームを作ると共に、山梨英和大学と連携して行った。ネットワークも大学の回線を使っている。

  個人端末は数多くある中、iPad導入に至った経緯について、鈴木校長らは「まず、姉妹校と同じ環境とすることで交流が容易になる点、iPadはアプリでなければインストールできないため管理が容易である点、世界とつながりやすい点」を挙げるとともに、千葉県立袖ヶ浦高校の情報コミュニケーション科における全生徒のiPad活用事例に感銘を受けたと語った。

  「IECクラス」では今後、中3時の海外語学研修を視野に入れ、日本文化についての学習やオーストラリアについての学習を進めていく。生徒の学習内容は全てiポートフォリオとしてiCloud上などに蓄積。「つながる」「伝える」力を育みつつ、「自ら学ぶ」力の育成を目指す。

  今後、「IECクラス」では英語以外の教科や課外活動でもiPadを活用すると共に、「IECクラス」以外でも活用できるよう貸し出し用iPadの購入も視野に入れている。3月号で取材した千葉県立長生高校においては、「科学論文を英語でプレゼンし、海外の学生と討論や協働プロジェクトができる」ことを目標に英語力を鍛えており、成果を上げている。山梨英和の「iPad1期生」が高校卒業時、どのような力をつけているのか、注目したい。

【2012年4月2日号】


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