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【ICT支援員】必要性は浸透 予算化が課題 ―JAPET調査より

配置実績ある自治体ほど「是非度」高い

 電子黒板やプロジェクター、デジタル教材や校務システムなど、学校ICTに係る環境の円滑な運営に欠かせないのが、運用や保守などの「サポート」だ。学校ICTに係る様々なサポートのニーズがありながらも、サービスや前例のないものには予算はつきにくい。そこで文部科学省では、実績の事例を積み上げる目的を折りこみ、平成21年度の緊急雇用創出事業臨時特例交付金においてICT支援員の雇用を推奨した。これにより各地で「ICT支援員」の雇用が進んだ。これは国の緊急雇用対策の一環としての雇用のため、様々な課題は多かったものの、学校ICT支援員を雇用するという「実績」が各地で積まれたことで、ICT支援員や学校のサポート体制における必要性、有用性の検証や今後の課題が明確になったと言える。本号では、日本教育工学振興会(JAPET)が実施した調査から、サポート体制についてまとめる。なおサポートには保守サポート、運営サポート、コールセンターなど様々な種類があるが、各自治体のサポートにおける理解の浸透状況に温度差があることから、本調査においては保守サポートと運営サポートは分けて聞いていない。なお「校務の情報化」については2月号で掲載済み。



政令市100%がサポートは「必要」と回答
ICT支援員
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  調査によると、ICTの活用を進めるにあたり、100%の政令市教委、98・9%の市教委、91・7%の町村教委が運用支援や保守等「学校へのサポートが必要である」と考えている。

  しかし、「ぜひとも必要」「どちらかというと必要」の割合は自治体規模によって差が目立っている。

  特に「是非度」が高いのは政令指定都市であり、78・9%が「ぜひとも必要である」と回答している。逆に町村では50%と「是非度」はそれほど高いとは言えない。これにより、自治体規模が大きく学校数や児童生徒数が多いほど、ICTに関する何らかのサポートの必要感が高い傾向があることが分かる。

ヘルプデスクの設置は6割以上

  サポートには、ICTの授業活用や校務活用などを支援する「活用サポート」、機器管理を主に行う「保守サポート」、ヘルプデスクなどの設置による「電話・Webサポート」などいくつか種類があるが、仕事内容の棲み分けが未分化のまま「サポート」を行っている自治体もあり、課題の1つとなっている。

  同様に、ICT支援員の雇用スタイルも、各校に常駐、定期訪問、要請があった場合のみの訪問など、自治体事情により様々だ。

  では現在各教育委員会では、どのようなサポートを多く行っているのか。教育委員会に対してICT支援員やヘルプデスクの配置状況を聞いたところ、ヘルプデスクによって電話やメール等でサポートを行っている率が最も高く、63・2%の政令市が行っている。

  現在ICT支援員を配置している市教委は43・4%。そのうち学校に常駐している率は13%と、多いとは言えない。

  注目すべきは、31・6%の政令指定都市が、かつてはICT支援員を配置していたが、現在は配置していない点だ。

  これは、国の緊急雇用対策による交付金でICT支援員等を配置したことにより必要性は認識されたものの、継続実施のための自治体予算の確保が難しかったことが原因であると考えられる。

  さらに、政令指定都市などICT支援員の配置経験がある自治体ほど、その必要性を強く感じており、これまでICT支援員を配置したことがない割合が75%にも上る町村教委においては、ICT支援員配置の是非度が低い傾向も明らかになった。

自治体規模で支援内容に違い

  校務の情報化ほどではないものの、ICT支援員も「配置してみて初めて有用性が実感できる」ものであると考えることができる。

  ではICT支援員は実際に各学校や教育委員会で、どのような業務を担当しているのか。

  ICT環境に係るサポート、授業における技術サポート、授業における活用サポート、教材・資料作成、教員研修などについて質問した。

  政令指定都市で最も多いのが、「学校のICT環境に関る全般的な技術的サポート」47・4%だ。次に「授業でのICT活用方法に対するサポート、アドバイス」31・6%、「ICTを活用した授業の技術的サポート」26・3%と続く。

  市教委においては、この順位がまったく異なっている。

  1位「授業でのICT活用方法に対するサポート・アドバイス」41・3%、2位「ICTを活用した授業の技術的サポート」及び「学校のICT環境に関わる全般的な技術的サポート」それぞれ39・1%となっており、市教委レベルでは授業支援業務に関する期待度が高い傾向がある。

  これについては、自治体規模が大きくなるにつれ、全校巡回や常駐が難しく、きめ細かい授業支援まで期待できないことが原因である考えられる。

  なお調査では「校務処理」に関しても聞いているが、校務処理のサポート業務に携わっているICT支援員は少ない。これは、支援員募集の際、当初業務の中に入っていなかったことが予想される。しかし校務支援システム導入が進むにつれ、こちらについても支援員サポートが求められる可能性が高い。

  国の緊急雇用対策における補助金はICT支援員の雇用実績を底上げした。補助金の利用によるICT支援員の配置によって、その活用効果から必要性も明らかになった。

  しかし補助金という性質上、毎年同様の予算が計上される可能性は極めて少ない。

  必要性が認められたことからこの実績をエビデンスとして、県または市町村予算を確保する、というのが理想的な流れであるが、実際に独自予算を計上して継続できた市町村は極めて少ない。しかし必要であるとは考えており、次年度以降の予算計上を検討する、という回答は全体で68%であった。自治体規模による違いはそれほどなく、必要性は認めているものの予算確保が簡単ではないことは、全国的な傾向であると言えそうだ。

  今回の調査においては教育委員会単位で集計したが、同じ自治体でも学校規模によって意識が変わることが予想される。そこで今後JAPETでは、学校規模の違いによる集計を行う考えだ。

 

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(3)コンテンツ活用と授業の可能性(2011年12月5日号)
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【2012年4月2日号】


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