普通教科「情報」は、情報化の進展に伴い、学校教育においても情報化に対応した教育が不可欠であることから生まれた教科だ。情報化社会への対応を考慮すれば、情報教育の充実を図ることは必須であると言える。しかし、認知度はその必要性ほど高まっていない。
そこで、平成25年度に開始する新学習指導要領において「情報A」「情報B」「情報C」の3種類から「情報の科学」「社会と情報」の2科目となることから、改めて教科「情報」の社会的認知度を上げ、必要性を周知することを目的に、今後の大学入試における高等学校の教科「情報」導入について討議する「情報入試フォーラム2012」が3月3日、早稲田大学西早稲田キャンパスで開催された。主催は、「情報入試研究会」の準備会。
慶鷹大・村井教授 |
慶應義塾大学環境情報学部長の村井純教授は、「世界の総人口70億人中、いまや20億人がインターネットを使っており、5年後にはこれが50億人に達する。子どもから大人まであらゆる人がデジタル環境を活用している今、膨大なデータの活用が可能になり、新しい産業の可能性が拡がっている。この可能性を活かすためには、情報教育においてリテラシーを身につける必要がある。にもかかわらず、情報教育の重要な一端を担う普通教科『情報』の重要性の認知度は一部にとどまっている。今、一番心配なのは高校における普通教科『情報』だ」と話す。
高等学校に普通教科「情報」が新設されてから今年度で9年を迎える。当初、大学センター入試への教科「情報」導入も提案されていたものの、現在「情報」を入試になんらかの形で導入している大学は全国で21校(国立2校、私立19校)であり、関係諸氏の期待ほどの成功を収めているとは言えない。
「約10年前にスタートした普通教科『情報』は、ITの専門家教育と情報教育を結び付けたことから、センター入試への導入に失敗し、未履修の問題も発覚した。同じ轍(てつ)を踏まぬよう、10年先の改訂に向け、大学として子どもたちが普通教科『情報』でどのような力を身につけることを期待しているのか、社会にメッセージを送る必要がある。そのためにも、良い問題を作り、関連書籍を出し、入試ターゲットに向けた情報を大量に発信していく」と決意を表明した。
まずは、「平成25年度から始まる新学習指導要領を履修する高校生を対象に、平成27年度から先行グループの大学による教科『情報』の入試を実施していく。また、研究会の活動として平成23年5月から年1回、教科『情報』の模擬試験を実施したい。同時進行でセンター試験への『情報の科学』『社会と情報』導入に向けた提案も行う」と述べた。
なお慶応大学環境情報学部では、平成28年度入学の学生を対象に、入試科目に教科「情報」を採用する考えだ。
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また、明治大学情報コミュニケーション学部では、平成25年に入学する学生を対象に同学部で教科「情報」による入試を実施する。来年度「情報」で受験できるのは、同学部で募集する450人のうちの20人。「英語」「数学」「情報総合」の3科目での試験となる。「情報総合」は、論説文や説明文をベースに、論理構成力や教科「情報」の知識や理解を問うものとなりそうだ。平成24年4月中に模擬問題を公表する予定。
▼「社会と情報」=情報が現代社会に及ぼす影響を理解させるとともに、情報機器等を効果的に活用したコミュニケーション能力や情報の創造力・発信力等を養うなど、情報化の進む社会に積極的に参画することができる能力・態度を育てる。
▼「情報の科学」=現代社会の基盤を構成している情報にかかわる知識や技術を科学的な見方・考え方で理解・習得させるとともに、情報機器等を活用して情報に関する科学的思考力・判断力等を養うなど、社会の情報化の進展に主体的に寄与できる能力・態度を育てる。
【2012年4月12日号】