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国際シンポジウム 教育テストの可能性

 18歳人口の減少により大学全入時代にすでに突入し、現在の入試制度における様々な課題が生じている。今後、大学入試はどうあるべきなのか。選抜のための試験ではなく、生徒の学習意欲を高め教育の質を高めるためのツールという、新たな役割を模索すべきではないか。そのような仮説のもと、有楽町朝日ホール(千代田区有楽町)にて11月18日、「2011国際シンポジウム 教育テストの可能性‐21世紀型能力の育成と高大接続」が開催された。(主催=独立行政法人 大学入試センター、協賛=UCLA/CRESST(National Center for Research on Evaluation, Standards, & Student Testing)、ACT(American College Testing)、KICE(Korean Institute for Curriculum and Evaluation))

新しい“大学入試”を提案

産業界の強い要望で新たな英語能力試験 「NEAT」開始・韓国

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 韓国教育課程評価院(KICE)英語能力試験担当部長のギョン=エ・ジン(Kyung‐Ae Jin)氏は、韓国における大学入試の現状と英語能力試験改革の動向について報告した。

 韓国では、大学進学を希望する生徒はCSAT(大学就学能力試験)を受験し、点数に応じた大学に進学する。

 CSATは、選択問題の筆記試験だ。そのため、英語の「読む・書く・聞く・話す」4技能のうち、書く・話す能力については評価ができないという問題が指摘されてきた。特に、大学を卒業しても実用的な英語を使える人材が育っていないという産業界からの強い不満もあり、新しい英語能力試験=NEAT(National English Ability Teat)が検討されている。

 NEATは、インターネットによる試験システムを導入し、話す・書く技能についても評価する。また、CSATが相対的な評価であるのに対し、NEATは、科目ごとの到達度を見るという試験だ。

 CSATは年に1度の実施だが、一発勝負で生徒の人生を決めてしまうことがないよう、NEATでは少なくとも年に2回受験できるよう検討しているという。

 もう一つ特筆すべきは、基礎的な問題(レベル1)のほかに、学術的な英語(レベル2)、実践的な英語(レベル3)の試験が用意され、レベル2と3は学生の進路によって選択することができる点だ。

 NEATは、2006年から構想され、2015年には実施される予定。試験改革と連動し、中等教育のカリキュラムや教科書の改革が進んでいる。また、教師の訓練プログラムも開発されている。

高校卒業時の共通テストACTをキャリアプランにも活用・アメリカ

 ACT(American College Testing)のマネジメント&レポーティングサービス部長のデボラ・ハリス(Debora Harris)氏は、アメリカで高校卒業時に行われている共通テストACTの現状について報告した。

 アメリカには日本のように大学独自の入学試験はなく、ACTという共通試験を受け、点数に応じた大学に出願をする。ACTは年に複数回受験できるので、日本の一発勝負の入試とはかなり趣が違う。

 ACTのユニークなところは、その結果が大学の入学やクラス分けに使われるだけでなく、高校や産業界などでさまざまな用途で活用されることである。

 たとえば高校では、ACTの結果をもとに学生の学習プランをアドバイスするために、州単位では、州内の教育レベルを把握するために、奨学金機関では授与の際の参考に、企業では、採用した社員のキャリアプランに活用されている。
アメリカで問題になっているのは、高校卒業時のACTの評価が、大学に進学できるレベルに到達していない学生が、半数から3分の2にも達していること。これを改善するため、初等中等教育とも連動し、早い時期から生徒の学力レベルを上げるための施策が検討されている。

選抜テストから教育支援ツールへ

 大学入試センター・入学者選抜研究機構長の荒井克弘氏は、基調講演の議論を受け、今後の教育テストのあるべき方向性を考察した。

 「大学入試は、"選抜テスト"から、次なるステージ="教育テスト"つまり、教育を支援するテストへと向かうべき。変化の激しい時代にあって、教育は、"教科主義"から"運用力重視"へとシフトしている。教育テストの役割もそのように変わっていかなければならない」と述べる。また、韓国のNEATの事例を掲げ、「英語の試験をレベル2、3と分けることによって、単に知識を問う評価から、実際に使える力を評価する試験へとシフトするという点で、非常に参考になる」と評価した。

【2011年12月5日号】


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