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【英語・外国語】コミュニケーション能力を育む言語活動とは

 小学校外国語活動が本年度より開始した。各自治体では、担任主導やALTなどの外部委託、直接雇用など、それぞれのスタンスで外国語教育に取り組んでいる。また、新学習指導要領では、小中学校共に「英語を使って様々なコミュニケーションをとる」言語活動が重視されている。小中学校での各取り組みを取材した。

長野市立城山小学校

外国語活動をもっと楽しく

 長野市立城山小学校の宮坂久美子教諭は学級担任主導で外国語活動を行っている。

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長野市教育センター では
「小学校外国語 活動ハンド
ブック」 を作成した

  長野市教育センターでは平成18年度より英語活動について研究・実践する委員会を立ち上げ、公開授業を年間6回ほど実施。この夏には『小学校外国語活動ハンドブック』も作成、市内小中学校に配布した。宮坂教諭は同委員会の副部会長を務める。

  長野市によるALTの巡回は1学級年間数回程度。城山小学校では昨年度よりPTAと長野市の補助、保護者からの集金で学校独自にALTを加配した。これにより各クラスで3回につき1回程度ALTと担任による授業が可能になった。ALTは主に地元のネイティブだ。

  ALT不在の際には、学級担任主導で外国語活動を行う。学級担任主導の外国語活動には音声教材の活用が欠かせない。英語ノートデジタル版やCDなどに加え、宮坂教諭は昨年度から音声教材「らくらくペン」(成美堂)を活用している。これは、専用シールを音声ペンでタッチするだけで、単語や例文、歌、チャンツなどネイティブの音声を再生できるというもの。シールは貼ってはがせるため、英語ノートや絵カードはもちろん、例えば教室の椅子にchairというシールを貼り、ペンでタッチして発音を聞かせることもできる。

  当初はLやRなどの発音に不安もあり、手軽かつ多量に身近なものや表現をネイティブの発音で再現でき、かつ価格も手頃な教材と感じて、授業で使い始めたという。

  「実際に使ってみると、シールに収録されている単語や表現がたくさんあり、準備や扱いも簡単でした。英語ノートの表現以外にも多くの言葉が収録されていて、発展的にも使えます」

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ペンでシールをタッチするだけで ネイティブの発音
が聞ける 「らくらくペン」。 頭についている
アザラシの「ごまお先生」が愛称

  長野市にはデジタルテレビが全教室に配備されているため、英語ノートデジタル教材やCD教材、「らくらくペン」の音声もテレビを使って出力している。「CDラジカセやスピーカーなど他の機材を使うこともできますが、全てPCを使ってテレビで出力するほうが簡単です」と話す。教室ではらくらくペンの学習を、その愛称の「ごまお先生」と呼んでいる。

  「コンビニエンス・ストアやレストランといった、普段使っている外来語について、実際の英語の発音やイントネーションに気づかせる場面などでとても便利。ごまお先生の発音を聞いてみようと声をかけると、熱心に聞いています。英語ノートのリスニング活動にも使います。ごまお先生は子どもたちにとってもう1人のALTですね」

  英語以外に収録されているBGMや動物の鳴き声などの効果音も授業で活躍している。「30秒や1分間のBGMは、買い物ゲームなどの活動時間を区切る目安に使っています。templeやshineの単語の次には鐘の音やお賽銭の音が聞こえて子どもも喜びます。効果音は言葉のイメージをふくらませ、記憶にとどめるのにも役立つようです」

  子どもの興味関心を熟知した学級担任が教材を上手に活用することで、担任1人でも充実した楽しい外国語活動ができることを、宮坂教諭の実践は教えてくれる。

九段中等教育学校

“共通指導案”を作成

 本年で開校して6年を迎える東京都・千代田区立九段中等教育学校では、中高一貫した英語教育を行っている。新学習指導要領では英語による言語活動が重要視されているが、同校では開校当初より「英語を使って様々なコミュニケーションをとる」活動を多く取り入れている。早期から同校で英語科を担当する本多敏幸教諭に、同校での英語教育の特徴と目的を聞いた。

“音”“つづり”のルールはフォニックスで身につける

九段中等 教育学校

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本多敏幸教諭

  九段中等教育学校では、各クラスを2つに分けた少人数指導を行っており、英語科教諭16名が各学年4クラス・全24クラスを担当する。都で唯一専任の英語のネイティブ教諭は区による直接雇用だ。

  同校の英語教育では、「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランスよく身につけ、英語を使って様々なコミュニケーションをとることができること、大学入試でどの生徒も進路実現が可能な学力を身につけること、英語を通じて積極的なコミュニケーションを図ろうという態度を身につけること、興味を持った分野について英語を媒介として独学できることの4つを英語指導の目標としている。

  同校では4つの目標達成のため、「共通指導案」を作成している。多くの学校では学習指導要領に従い、各教員の力量で授業を進めることが多いが、同校では各学年で話し合いを通じて「共通指導案」を作成することで、授業の質を保証することが狙いだ。

  授業では音読・発表活動を重視しており、1年次からスキット、スピーチ、CMなどのプレゼンや英語新聞作成など英語を使った表現活動を多く取り入れている。新学習指導要領では英語の時間数が増えるが、「時間数が増えるとドリル活動を多く取り入れがちだが、話したり書いたりなどの実際に英語を使う活動をより増やしていくことが重要」と指摘する。

  また、近隣に大学が多いことから、隔週で朝20分間、各大学の留学生が各教室で英語を使って授業を行う。話題は主に自分の国や研究テーマなど。

  「全て理解することは難しくても、一部が分かればコミュニケーションができ、5年間続けるとほぼ意味が理解できる、という体験を積み重ねていくことが大事」と述べる。

単語テストは 音とつづりの関係 身につけてから

  新学習指導要領では、音とつづりの関係を意識した学習についても触れられている。同校では、フォニックス学習も取り入れている。フォニックス学習とは、音とつづりの規則性を身につける学習法だ。

  「発音や単語の学習にフォニックスは欠かせない」と言う。年間を通じて行うが、特に1年生の1学期間に集中して取り組む。「単語テストはフォニックスで音と文字の結びつきをある程度身につけてから行います。『change』を、『C・H・A・N・G・E』と暗記するのは良い方法とはいえません。たくさん英語に触れ、文字に触れることで音と文字の結びつきを理解し、Butと聞くだけ、Netと聞くだけでつづりが出てくる、簡単なものであればつづりを見るだけで意味はわからなくても読むことはできる、というところまで単語のルールを徹底的に訓練すれば、単語の読みをカタカナで書く必要はなくなります」

  現在同校で活用しているフォニックス教材「アクティブ・フォニックス」(mpi)については、「飽きない程度の適切な量で、活動内容が工夫されており、使いやすい」と評価する。

CAN‐DO リストも作成

  文部科学省では平成24年度の概算要求で、小学校外国語活動において「CAN‐DOリスト」の作成を計画に入れている。同校でも開校当初より「CAN‐DOリスト」の作成に着手しており、バージョンアップを重ね、1月には生徒に配布する予定だ。6年間の活動目的を記したもので、「とくに一般の高校では訳読や説明など講義形式が多くなる。CAN‐DOリストで共通の活動目的を明確にすることで、活動を多く取り入れ、リストにあわせた指導がしやすくなる」と述べる。

小学校英語に 望むことは

  今年度より始まった小学校外国語活動については、「一番重要なのは、英語を楽しいと思わせること。さまざまな表現を覚え、コミュニケーションが楽しい、通じてうれしい、など、英語に対するモチベーションを出来る範囲で上げてくれれば良い。フォニックスをやることができればベターだが、取り組むならば教師が訓練を受けてから取り組むべき」と言う。

丹波市立和田小学校

外国語活動 JAET大会では

 「授業にさりげなく活躍するICT」をテーマに開催された第37回全日本教育工学研究協議会全国大会(丹波大会)では、どのような外国語活動を展開しているのか。公開授業と分科会で発表された外国語活動の取り組みでは、「担任主導の外国語活動」のための様々な工夫が見られた。

電子黒板とデジタル教材で“買い物ゲーム”スムーズに

 

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イラストを選ぶだけで音声付 フラッシュカードを
作ることができるデジタル教材

 公開授業校のひとつ、和田小学校5年A組の外国語活動では、電子黒板とデジタル教材を使い、学級担任による外国語活動の授業が公開された。授業者は村田恵理子教諭。

  本時の授業「和田Department storeへGoGo!!」では、身の回りの外来語と本来の発音の違いを気付かせることがねらい。授業では、電子黒板と、外国語活動に対応した教員向け授業デザインソフト「ジャストマイスター」(ジャストシステム)が活用されていた。

  まず、フラッシュカードを使い正しい発音に気を配りながら、「スープ」、「プリン」など、外来語として普段使われているモノの名称を取り上げ、本来の発音練習を行った。

  その後、「和田Department store」に買い物に行く場面が設定された。

  買い物の際に必要な表現である「Do you have〜?」「Yes, I do./No, I don't」「Here you are.」のやり取りを示してから、買い物ゲームのやり方を全体で確認した。この時に「カメラ」「ケーキ」「ボール」などを日本語として発音した場合はやり取りが進まないというルールを設定。発音がうまくいかない場合は、電子黒板上に表示されたヒントコーナーでネイティブの音声を確認できるように準備されていた。

  授業の最後には、買い物した商品(カード)を実物投影機を使い電子黒板に投影し、自分が何を買ったかについて英語で発表した。

  授業は英語・日本語両方で進められていたが、ねらいとする表現は英語で行われていた。児童は教師からの問いかけには英語で返答し、手本となるネイティブの音声が電子黒板から流れると真似て発音していく。教師はICTを活用することで、無理なく普段の授業力を発揮していた。

熊本市立春日小学校

身近な教員出演動画ビデオ作成

  分科会「外国語活動における動画の利用について〜動画の読解でアクティビティへつなぐ〜」(発表者=熊本市立春日小学校・山本英史教諭)では、外国語活動の時間において子どもたちの学習がアクティビティにスムーズに移れるよう、英語ノートに準拠したアクティビティ説明ビデオ作成の試みについて発表した。

  説明ビデオにはALTと教員が出演。構成はオープニング、アクティビティ、エンディング。ビデオの作成時にこだわったポイントは「音声がなくても内容が理解できる、短い時間で伝える、パターンを統一する、身近な先生が出演している」点だ。

  ビデオを使うことで、ALTがいなくても授業をスムーズに進めることができる。また、説明時間の短縮によりアクティビティの時間を確保、映像から非言語のコミュニケーション力を身に付けることができる。同様の取り組みとして、熊本市教育委員会、小学校英語活動推進委員会が企画制作した「小学校外国語活動のゲーム活動&授業(担任単独とALTとのTT)」のアクティビティ説明ビデオについても紹介した。

【2011年11月7日号】


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