教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディア>記事
バックナンバー
最新IT教育―実践、成果を報告―

教育マルチメディア

【予算】文科省・総務省 平成24年度概算要求

文科省 平成24年度 概算要求

世界に雄飛する人材を

 文部科学省の平成24年度概算要求が公表された。国家的な危機と言える東日本大震災から復興するために、国民全員に質の高い教育を受ける機会を保障し、様々な分野において、将来の日本、世界を支える人材を育成することを主眼として、小学校2年生での35人以下学級や、保護者の教育費負担の軽減、世界最高水準の高等教育を支える基盤的経費の拡充、世界に雄飛する人材の育成、安全で質の高い学校施設の整備などを実現するとしている。また、「教育の情報化に関する事業」(生涯学習政策局)として、「学びのイノベーション事業」も計上されている。

  少人数学級の更なる推進ときめ細やかな指導実現のため、教職員定数を改善し、小学校2年生の35人以下学級や学習支援が必要な児童への学習支援人材、小学校における専科教員の充実、地域連携人材の充実など約7000人の改善を計上した。

  公立高校生の授業料無償制は継続。私立高生については就学支援金(上限年額11万8800円)を支給する。

  全国学力学習状況調査には、平成24年度から理科を追加。25年度調査からきめ細かい調査を実施できるよう準備を進める。

  次期教育課程基準の改訂に向けた検証のため、新学習指導要領に掲げる各教科の指導内容等の習得状況を小学校5、6年の児童を対象に国語、社会、算数、理科について調査を実施する。

  「情報活用能力向上プロジェクト」(1億3700万円)(新規)では、将来的な小中段階における児童生徒の情報活用能力の育成方策検討のため、情報通信機器等を利用した情報活用能力習熟状況や学習状況についての分析手法の確立に取り組む。分析については操作履歴等も活用する。

外国語教育を強化

  道徳教育、外国語教育、コミュニケーション教育や、東日本大震災の教訓を踏まえた復興教育の支援を推進する。外国語活動・外国語教育の教材整備等を図る(1億1300万円)と共に、生徒の英語力の水準や教員の指導力等の向上を図るため、「CAN―DOリスト」ガイドブックや授業実践事例集等の作成を行う(1億4200万円)。「CAN―DOリスト」ガイドブックでは、各学校が学習到達目標を具体的に設定できるようにする。また、授業実践事例集では、授業モデルとなる実践事例や生徒の英語力学習に対するモチベーション向上のための映像資料を作成する。

  復興教育新規事業では、復興に向けた教育支援活動を支援する団体25件(1件あたり700万円)を支援、活動内容の普及を図る。

  道徳教育では、東日本大震災における助け合いや冷静沈着な行動など世界から高く評価された日本人の道徳性を一層生かし伸ばすことができる読み物資料を作成する。

ICTを活用して 学習を支援する

  教育の情報化ビジョンを踏まえた「情報通信技術を活用した学びの推進」のため、「学びのイノベーション事業」(2億8200万円)では、総務省と連携してデジタル教科書・教材の提供、1人1台の情報端末、無線LAN環境、教員へのサポート体制の在り方等において総合的な実証実験を行う(小学校10校、中学校8校、特別支援学校2校)。

  また、学校における教育用情報機器等の整備状況や教員の情報通信技術の活用指導力等に関する全国調査も実施。先進国におけるデジタル教科書・教材の活用状況等についても調査する。

  被災地における児童生徒の学力低下の問題や教員負担の増大に対して早急な解決策が必要なことから、被災地における情報通信技術を活用した学習支援事業(新規・2億8800万円)では、総務省の「情報端末や無線LAN等によるICT環境を構築する事業」と連携し、ICTを活用した学習支援等により、児童生徒の学力向上と教員の負担軽減を図る。

  具体的には、学校・教育委員会等に、地域の学びの場をプロデュースするICTコーディネータを配置し、デジタル教材等を活用した児童生徒の学習支援を行う。また、地域住民や外部有識者の連携・活用を促進して、教員やICTコーディネータをサポートするための体制作りを行う。

  新規で防災教育推進事業を実施。学校防災アドバイザーによる指導・助言や、児童生徒等の安全確保を推進するための防災教育の推進の支援、防災教室実施の支援などを行う。

学校施設整備等

  公立学校の耐震化整備については、平成23年度第3次補正予算措置事業完了後見込みで、約88%の学校が終了予定。概算要求では、これを90%まで引き上げる。また、平成23年5月に改正された「施設整備基本方針」については平成27年度までに耐震化完了の目標を設定する。

  公立学校施設における省エネ機能等の強化と、教育環境の改善を図るため、再生可能エネルギーを導入するための設置事業や高断熱化、節水型トイレ整備等、次世代型学校作りを推進する(413億円)。

私学教育の支援

  私立学校の特色ある取り組み支援として、経常費助成費等補助は27億円増の1029億円。復旧・復興対策に14億円。私立学校施設・設備整備費は50億円減の107億円。他に復旧・復興対策に150億円。

世界に雄飛する 人材を育成する

  世界に通用するグローバル人材育成のため、小中高大において様々な取り組みを支援する。

  グローバル人材育成推進のため、高校生の留学及び日本語専攻外国人高校生受け入れの促進を強化(10億円)。高校生の海外留学については今後5年間で1万人を目指す。留学経費支援は、1人50〜30万円(留学期間3か月以上1年以内)。

  英語力の検証と指導改善に5億1800万円(新規)。具体的には、外部検定試験の活用による英語力の検証と指導改善を図ることで、新学習指導要領の着実な実施を促進する強化地域を形成する。英語力の達成状況について把握・分析を行うため検定試験の受験を促すとともに、受験料の支援等を実施する。対象生徒数は(118万人)。

  強化地域では、外国語教育改善プランの策定や外国人教員の積極的な採用と活用、英語力の客観的な把握、「CAN―DOリスト」の活用、ALTやICTの効果的な活用、イングリッシュキャンプやスピーチ大会等の実施と参加を図る。
国際バカロレアの趣旨を踏まえた教育の推進(新規)のため、指定校10件(1件あたり230万円)でカリキュラムや指導方法について調査研究を実施する。

日本の存在感 子どもの力で 世界にアピール

  世界に向けて日本の復旧・復興をアピールできるよう、世界の子どもたちと体験活動等を通じて絆を強化できる国際交流事業「ジョイン・イン・ジャンボリー」を展開する(新規・2億5千万円)。また、岩手・宮城・福島に所在する青少年教育施設等を中核として全国の青少年教育施設をインターネット等でつなぎ、全国で体験を共有する。青少年自ら企画・運営等を日本語・英語を使用して実施する。文部科学省では、プログラム例として、アニメや書道、茶道等日本文化を紹介することによる「クールジャパン」の推進や、健康や環境、人権、平和、国際理解等分野別に多くの問題について世界中の子どもたちとインターネットを通じて実施する「ワールド熟議」などを通した人材育成などを掲げている。

総務省 平成24年度 概算要求

文科省と連携も

 総務省では、ICTを活用した成長戦略を実現(551億円)し、ICTを活用した新たなまちづくり等を推進(169億円・新規)する。

  「教育分野等における情報化の推進(20億4千万円)及びICTを活用した教育環境復興支援(5億3千万円)(新規)については、文部科学省と連携した事業を展開。

  「教育分野等における情報化の推進」では、教育分野におけるICTの効果的な利活用を促進するため、実証校における実践を行い、教育分野の情報化のためのガイドラインを取りまとめ、ICTによる教育改革(協働教育システムの実現)を推進する。

  「ICTを活用した教育環境復興支援」では、被災して他校の校舎を間借りするなど不十分な状態にある公立小中学校の教育環境を、ICTの利活用により補完するための実証実験などを行う。

  このほか、超高速ブロードバンド基盤整備を実施する地方公共団体等に対して事業費の一部を支援、超高速プロードバンド基盤の普及や整備を促進する(20億8千万円)。

  自治体クラウドの導入促進や、災害に強い電子自治体モデルの評価・検証を行う(3億円)と共に、災害に強い通信・放送インフラを構築する(37億円)。

  ICT分野における国際競争力の強化(76億円)、ICT人材の育成やクラウドサービスの普及を促進する(5億8千万円)

【2011年11月7日号】


記事のご感想をお寄せください

新聞購読お申し込みはこちら