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【教材整備指針】 教委・学校一体で教育環境を整える

 学校において、教育効果を高めるためにも不可欠なものが、教材だ。文部科学省では、平成20年に公示された小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領、並びに平成21年に公示された特別支援学校学習指導要領の実施に伴う教材整備の推進のため、新たに「教材整備指針」を取りまとめ、整備数量の目安も示した。具体的な数量の提示により、各市町村により円滑な教材整備を進めることが目的だ。しかし、各自治体における教材整備に要した経費にばらつきがあることから、地域ごとの教育格差が生じる可能性が懸念されている。

  「教材整備指針」の目的とその特徴、活用法、予算措置を含めた今後の計画について、文部科学省・教育財政室長の丸山氏に聞いた。

プロジェクター、実物投影機、電子黒板など 小・中とも“全教室整備”が目安に【教材整備指針】

教材整備指針 目標数例示は初

  平成21年度から新たに実施されている小学校外国語活動のための教材や武道用具、和楽器等の教材整備を促進するため、本年度までの3年計画で、「新学習指導要領の円滑な実施のための教材整備緊急3か年計画」が策定されており、単年度で約820億、総額で約2459億円の地方交付税措置が講じられている。この措置を有効に活用するために、文部科学省では、「教材整備指針」として、学校に設置すべき新たな教材を具体的に例示した。これは、平成13年度以降10年ぶりの改訂だ。

新・教材整備指針 4つのポイント

(1)小学校の外国語活動、中学校の武道の必修化など学習指導要領を踏まえた教材を新たに例示
(2)小・中学校の教材整備指針に新たに特別支援教育に必要な教材を例示
(3)別途の国庫補助がある理科教材は例示していなかったが、理科に関する教材も含めて新たに例示
(4)教材整備の目安として数量基準を明示(右下表に一部抜粋して掲載)

表

  この「教材整備指針」で、小中学校及び特別支援校において、学校全体で共有可能な教材として新規に挙げられているものは、実物投影機、地上デジタル放送対応テレビ、プロジェクター、電子黒板、ワイヤレススピーカー、デジタルオーディオプレイヤー、マイクロスコープ、ICレコーダー、DVDレコーダー・ブルーレイレコーダー、カラープリンターなどだ。(表1)

  さらに教育委員会や学校の「予算確保折衝の際に数量目安が必要」との要望を反映し、各教材の整備目標数を、目安として具体的に例示した(表1「目安番号」参照)。

  「全教室整備」が目安となっているのは、前記教材・機器のうち、実物投影機や地上デジタル放送対応テレビ、プロジェクター、電子黒板などだ。

  各校種ごとに留意点を設けた点も、今回が初。

  留意点には、「情報通信技術の進展に伴い、PC、電子黒板、プロジェクター等の有効活用を検討することが望まれる。例えば社会科の授業において、デジタル教科書・教材等ソフト等を導入し、世界地図等を電子黒板等の画面上に映すことにより、従来の掛図に変わる教材として活用することが考えられる。(中略)児童の発達の段階に即して適切に活用することが望まれる」と、デジタル教材の活用を促している。

  また、各教育委員会に向け、「所轄の学校からの意見を聴取しつつ、複数年時にわたる教材の整備計画を策定することが望まれる」、「教材が高価であり使用頻度が少ない場合や運動会等の行事で一度に多数の教材が必要な場合は、(中略)地域の実情に応じて、例えば地域の数校で共通利用することなども有効な方法と考えられる」と、計画的整備の推奨や高額教材についての学校間共有の可能性も示した。

(※各教科の例示についてはhttp://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyozai/「教材整備指針」を参照)

ICT機器例示  大幅増の理由

  今回、教材整備指針の例示項目にICT関連機器が大幅に加えられている。
これは、平成22年5月11日にIT戦略本部が決定した「新たな情報通信技術戦略」等に基づく「教育の情報化」のための措置だ。

  平成18年度から21年度まで、単年度で約1500億円が地方交付税措置が講じられており、22年度は1673億円とさらに増額された。これは、平成21年度の補正予算等で購入したPC等の維持費を考慮したものだ。

  この「教育の情報化に関する交付税措置」により予算化が期待されているものは、教育用・校務用PC(購入・リースとも)、インターネット接続経費、ICT支援員等情報処理技術者委嘱経費、校務支援システム、デジタル教科書・教材の整備、ICT活用指導力研修に要する経費など。

  教材整備措置単年度800億円の約2倍の措置であるが、こちらにおいても各地方自治体において、整備達成率は高いとはいえない。今後は、教材整備指針におけるICT機器関連の例示項目なども参照し、計画的かつ迅速な整備が望まれる。

  なお文部科学省では、平成24年度以降も前年度同様1673億円程度の交付税措置が講じられるよう関係省庁と調整を進める予定だ。

平成21年度  教材費活用率は 8割未満

表

  平成21年度において公立小・中学校が教材費として整備した総額(決算額)は前年度比3%増の586億円。文科省の基準額が754億円であることから、措置率は約77・8%になる。過去最も措置率の低かったのは、平成19年度の65%であり、対前年度比で2年連続措置率は増加したものの、120〜130%の措置率であった昭和60年代レベルにはまだまだであるといえる。

  自治体によるばらつきが大きい点も課題だ。

  平成21年度、最も教材措置率が高かった東京都では、1校あたり478万円(児童生徒1人あたり1万1745円)。措置率の最も低かった自治体61万円の約8倍と大きな差がある。また、平成21年度の措置率は1校あたり平均186万円であったが、この平均値を超えた自治体は、8都道府県のみ。(表2)

  このような差が生まれる背景として、教材費が地方交付税による財政措置であるということがいえる。

  昭和60年度の教材費の一般財源化直後から8年間は120%以上の措置率であったが、バブル崩壊後の平成4年以降年々減少、平成9年度に100%を切ってから10年間で措置率は急激に降下した。そこで今後、文科省では、平成22年度における教材整備状況や教材充足度等を把握し、その結果を踏まえつつ平成24年度以降の教材費の地方交付税措置の検討に着手する。具体的には、地方財政計画の中に教材整備計画を盛り込むことを検討する。調査結果は10月に公表予定。

積極的な予算措置を

  次期「教材整備計画」については、今後10年計画で単年度800億円程度を確保できるよう、現在準備中だ。

  丸山氏は「大事なのは、新学習指導要領の円滑な実施に向け、積極的に予算措置していくこと。地方交付税は、補助金等の特定財源と異なり、あくまでも地方の一般財源であり、予算措置により、初めて政策実現のシールとなる。
各教育委員会のあるべき姿として、基準財政需要額の積算に盛り込まれていることを理解していただき、積極的に予算外の充実に努めるよう、周知徹底していく。まずは年明けに実施される『都道府県教委予算担当者会議』で具体的な説明を行っていく」と話す。

各教委へのお願い

  新学習指導要領の全面実施に向け、複数年次の教材整備計画を策定し、域内の小・中学校において新規に必要な教材の数量を把握し、整備を進めること。数量によってはスケールメリットを生かした教材整備も有効だ。

  また、都道府県の教育事務所・教育センター、事務の共同実施組織等と連携しつつ、共有可能な教材の整備など、学校への支援策を講じるとともに、その内容を小・中学校に周知していくことが望まれる。

各学校へのお願い

  新学習指導要領に基づく指導計画の検討と並行して、新規に必要な教材や更新が必要な教材をリストアップし、教育委員会と相談しながら、教材の整備目標を定めること。

  また、校長のリーダーシップの下、教頭、教務主任、事務職員等による予算委員会を組織するなど、校内組織を生かして全体的な対応を図ること。

  近隣の学校間とも情報を共有し、教材の共有化や貸与が可能かどうかの検討も視野に入れつつ、教育委員会・教育センター、事務の共同実施組織等における教材の支援策を把握していくこと。

■新・教材の手引き 来春発刊 JEMA

  社団法人 日本教材備品協会(JEMA)では、新学習指導要領への円滑な移行を目指すとともに、児童・生徒の理解促進を補完する教材・教具の整備について資するよう現在、「教材整備の手引き(仮称)」発刊の準備を進めている。今年度中に発刊される予定。

【2011年10月3日号】


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