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リアルタイムで児童の書き込みが反映される |
児童が自分の考えを記入すると、教師はリアルタイムにその考えを一覧、電子黒板で提示して共有する‐そんな授業展開を茨城県・取手市教育委員会では平成21年度から導入された協働学習支援ツール「OpenNOTE(オープンノート)」で展開している。「OpenNOTE」とはどのようなツールで、どのような授業展開が可能になるのか。
茨城県・取手市立稲小学校
取手市立稲小学校(小池義寿校長)では、取手市教育委員会からの委嘱を受け、「筋道を立てて考え表現する能力を育てる算数の授業作り」をテーマに研究を進めている。6月15日、5年算数で「OpenNOTE」を活用した授業を取材した。授業者は古橋雅文教諭。
紙に書き込み 考え方を共有
この日の授業では、変形した立方体の体積を求める方法を考えた。
児童は前時までに、直方体や立方体の体積の求め方を学んでいる。
古橋教諭は、コの字型にへこんだ立方体が印刷されたプリントを配布した。
デジタルペンでプリントに記入する |
筆順再生機能を使って思考過程を確認 |
「この立体の体積は、縦×横×高さで求められますか?」と問いかけると一斉に「出来ない!」と児童。「それでは今日は、縦×横×高さでは体積が求められない形の求め方を工夫して考えてみましょう。いろんな方法がありますよ。まずは1人で1つ以上の求め方を考えてみよう」
個人で考える時間を十分に与えた後は、隣同士での意見交換だ。
古橋教諭は、「それぞれの考え方の中から一番良いと思われる求め方をひとつ選び、その考え方をデジタルペンでプリントに記入しよう」と指示した。
児童が紙にペンで書き込んだ考え方は、リアルタイムで教員用PCに転送されるため、教員は児童一人ひとりの考え方を一覧、進捗具合を確認できる。
古橋教諭は何人かの考え方を選択して電子黒板に投影、児童はそれぞれの考え方を発表した。
デジタルペンの活用についてはICT支援員が児童をサポートしているため、教師は授業の流れ作りに集中して取り組むことができる。
古橋教諭はこれまでも、主に算数や理科など自分たちの考え方や考察を比較検討する授業の際に「OpenNOTE」を活用していたという。「OpenNOTEの活用により、児童の関心や意欲が持続しやすくなりました。ICT支援員のサポートがあるので、新しい機器でも使いたいときに安心して活用でき、授業に集中できます」と話す。
思考過程の 共有も可能に
取手市教育委員会指導主事の石塚康英氏は「OpenNOTE」について、「グループ学習は学校で以前から取り入れられた形態です。これまでは、話し合いや意見交換の際、教師が教室を回って児童のノートを確認したり、児童は黒板に出てチョークで書きながら説明したりする必要がありましたが、『OpenNOTE』を活用することで、双方向のやり取りがスムーズかつダイレクトに展開できます。学習者用デジタル端末の実証実験でも、児童の考えを把握し、児童が意見を共有することを中心に検証が進んでおりますので、『OpenNOTE』で同様の取り組みを進めていくことができれば」と話す。「OpenNOTE」で使用するデジタルペンはペン先がボールペンなので、筆圧や紙に書く感覚そのままである点、筆順の再生機能などを使って思考過程も共有することができる点がメリットだ。
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「OpenNOTE」とは
大日本印刷が提供している授業支援システム。児童がデジタルペンで専用紙に記入するだけで、書いた内容がリアルタイムで教員用のPCに表示される。専用紙には毎回の授業の問題やワークシートの追い刷りが可能。教員用のPCをプロジェクターやデジタルテレビに接続しておけば、特定の児童の解答を表示できる。児童の記入内容を一筆ずつ再生できる「再生表示モード」で思考の過程も再現できる。記入内容はデータ保存、集計もできる。
詳細=http://www.dnp.co.jp/