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新学習指導要領対応・教科書準拠
― デジタル教科書 特集 ―

 平成23年度の学習指導要領に対応した、指導者用「デジタル教科書」が各社各教科で展開されている。全国的に導入が進んだ大型デジタルテレビや電子黒板、プロジェクター等の活用促進という流れもあり、教科書に準拠したデジタル教科書は小学校だけで32種類と、発行形態や価格、内容は様々とはいえ、提供が一気に進んだ年といえる。

  現在新学期を迎えた各校で導入・活用が進んでおり、その実際の使い勝手等も明らかになった。提供されているのは、国語、算数、理科、社会、生活、家庭、図工、保健、書写、地図帳など、各教科全学年にわたる。小学校英語や古典、漢字学習に特化したものなどはデジタル教材として提供されている。

  さらに平成24年度は中学校において新学習指導要領が本格実施され、教科書も一新される。それに対応したデジタル教科書・教材を各社ではどう提供していく方針なのか。現在提供されている各社小学校向け指導者用デジタル教科書の実際と、来年度中学校版に向けた制作方針について特集した。

【小学校・指導者用デジタル教科書】学習効果 明らかに

  指導者用デジタル教科書最大の特長は、電子黒板やプロジェクターなどで教科書画面を拡大投影し、一斉指導で周知を図りやすい点だ。指導を徹底しやすいことから低学年で活用が始まり、学力向上に寄与するという実績から、高学年でも導入が進んでいる。

  もうひとつの特長は、新学習指導要領に準じ、新しい学習課題に対応することを視野に入れている点。

  英語やコミュニケーション力、数学的なものの見方や考え方、実験観察の強化など、様々な学習課題への対応が教科書の編集方針であり、その方針がデジタル教科書に反映されている。

  小学校は学級担任が多くの教科を教える必要がある。全ての教科学習の準備を毎日十二分に行うには、時間的な限界がある。そこをデジタル教科書はサポートできるよう展開されている。

  他学年の振り返りを各教科書で展開できたり、学力強化の問題を追加したり、興味関心を図る動画や理解しやすいシミュレーション機能を入れるなど、各社各教科での特徴もある。校内ライセンス価格での提供が主流だが、価格帯にも幅があり、指導書添付として単独提供しないものもある。

  デジタル教科書に対する学校現場からのニーズは確実に高まっている。現在の課題は導入だ。ある自治体の担当者は、「欲しいという声も多い。しかし予算に限りがあるため、ニーズが高くなるほど、どの教科、あるいはどの学年からの導入を先行するかについての判断が難しくなる」と言う。同じ課題に頭を悩ませている自治体は多い。

  これまで活用していた教材からの変更なども含め、予算の確保が望まれている。

新しい学習課題に対応する ニーズは増加  課題は予算

【中学校・指導者用デジタル教科書】教科担任のニーズ満たす

小学校・指導者用デジタル教科書 発行状況
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▲クリックすると拡大します

  来年度の新学習指導要領開始に向け、既にデジタル教科書で実績のある会社を中心とし、中学校でも指導者用デジタル教科書の準備が進んでいる。

  拡大や書き込みなど小学校版の基本機能と共に、教科担任のニーズを満たし、資料の充実や編集機能の多様化など、各教科の専門性に対応できる内容が検討されている。さらに小中連携や協働学習など新しい学習課題への対応も視野に入っている。

  東京書籍では、国語、数学、地理、歴史、公民、科学、技術家庭を予定。既に体験版を提供している。光村図書と教育出版では、国語と英語など。帝国書院は、地図帳と地理、歴史、公民。啓林館と大日本図書は理科と数学。三省堂は「指導用テキスト」として国語と英語。体験版を早々にアップした。数研出版も、指導者用デジタル教科書「STUDYAID D.B.中学数学」を提供すると発表した。開隆堂では、英語と技術家庭科。既に体験版をWebにアップ済。学校図書は、英語の「提示型電子教科書」を提供。日本文教出版では、「すべての新版中学校教科書」(地理・歴史・公民・中学数学・美術)で「指導者用デジタル教科書・教材を提供する」と発表している。

1)授業スタイルに合わせた活用で「言語力」の育成を【光村図書】

2)「見やすさ」「使いやすさ」にこだわりカラーユニバーサルデザインにも配慮【教育出版】

3)デジタル地図帳」で新しい学習課題に対応【帝国書院】

4)≪中学校向けデジタル教科書≫ 国語・数学・地理・歴史・公民・科学・技術家庭で提供する【東京書籍】

5)≪中学校向けデジタル教科書≫教師用語指導書として提供「数学」「理科」理解しやすく【大日本図書


1)授業スタイルに合わせた活用で「言語力」の育成を【光村図書】

 光村図書では、平成17年度に光村「国語デジタル教科書」小学校版を発売して以来、光村「国語デジタル教科書」中学校版、「わくわく漢字伝」、「わくわく古典教室」「わくわく英語タイム」などのデジタル教科書・教材を提供している。平成23年度からは、新学習指導要領に対応した「国語デジタル教科書」「書写デジタル教科書」を提供、導入が進んでいる。デジタル教科書・教材における学校現場の反応と今後の展開について聞いた。

「学力向上」目的で高学年が導入増に

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▲話し合いの様子を動画で学ぶ(国語)
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▲吹き出しの種類も増え、
ワークシート作りも多様に(国語)
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▲平家物語の動画で古典を学ぶ(国語)
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▲用具の並べ方を視覚的に学ぶ(書写)

  平成17年度に発売開始した小学校の「国語デジタル教科書」は、既に全国約3000校に導入実績がある。平成21年度に発売を開始した「わくわく古典教室」も好評で、新年度の開始時期に購入されているという。「国語は、先生によって教え方が様々。自分の授業スタイルに合わせた使い方ができる点が評価されている」と同社では分析する。
発売当初は「集中力を維持する」などの目的で小学校低学年からの先行導入が目立ったが、近年は「学力向上」を目的に、高学年からの導入が増えてきたという。

  新学習指導要領では、古典などの学習内容が増えているにも関わらず、高学年で国語の授業時数が増えていない。その負担感を解決する手立てとしてデジタル教科書のメリットが評価されているようだ。

■小学校国語  言語活動の充実に 動画資料を追加

  平成23年度版「国語デジタル教科書」は、教科書の内容3割増に対応し、追加資料も増え、新学習指導要領の目的を達成しやすい配慮が盛り込まれた。

  中学校版で評判が良かった「話し合い」や「発表・スピーチ」など言語活動の資料動画も追加。教科書上で表現しにくい表情やうなずき方なども、動画を見ながら指導できる。

  文学教材の「朗読機能」では、解釈によって読み方が違うことから、2種類の朗読が聴ける教材を増やした。前回、高評価を得た俳優の市原悦子さんや渡辺謙さんなどによる朗読は、それぞれの作品をより深く味わえる。

  古典や民話に親しむ目的の読み聞かせ教材も豊富に収録。教科書にはない挿絵をオリジナルで追加した。紙芝居機能で、朗読を聞くことも、教師が読み聞かせをすることもできる。

  学校からの強い要望で実現したのが、既習漢字をすぐに一覧表示できる機能だ。例えば5年生での学習時に、これまでの既習漢字をすべて呼び出すことができる。また、教科書本文上では「新出漢字」、「新しい読み方」が色分けされて表示される。

  デジタル教科書画面に予め書き込んだ内容を保存する機能も追加。保存したものは、目次上にペンマークで示され、書き込みを残した教材が一目でわかる。

  特別支援教育の対応としては、「総ルビ」機能のほか、白黒反転機能、色が変わることでどこを読んでいるのかがわかる「文の強調表示」機能も追加した。

  目次画面には、他学年の起動用ボタンも搭載されており、全学年導入することで、例えば「6年生の学習で3年生時の学習内容を振り返る」こともデジタル教科書上で実現する。

■小学校書写  姿勢・筆の位置 指導を徹底しやすく

  動画を使って用具の置き方や姿勢、筆の持ち方などを説明できるため、指導の徹底に役に立つと好評だ。文字を書いている様子を真上から見た動画、筆先のみを接写した動画など、実物投影機では実現しにくい角度からも見ることができる。

H24年度中学校は国語と英語を提供

■中学校国語  「国語便覧」的な 資料・要素を充実

  中学校では「国語便覧」のニーズが一定してあるが、予算の関係から購入しない自治体も増えている。そこでデジタル教科書では、読み物教材にはその時代背景が分かるもの、説明文教材には、その読み取りを深めることができる統計資料など、豊富な資料を搭載し、国語便覧的な要素を充実した。

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▲文字を隠したり、まとまりを
選択することもできる(国語)
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▲バランスを変え、文字の「ゆずり合い」を学ぶ(書写)

  これまであった「話す・聞く」「古典」の教材に加え、現場の要望に沿って文学や説明文、文法などの教材を抽出、教科担任が使ってみたいと思うものを目指した。

  基本機能は小学校版に準じているが、協働学習に資するツールとして、発言や考えを視覚化できる「黒板ノート」も搭載予定だ。

■中学校英語  リスニングで 内容を理解する

  ストーリー性のある教材の中で文法事項を学び、コミュニケーション力を育むのが同社の英語教科書「COLUMBUS21」の特長だ。そこでデジタル教科書では、教科書の学習意図を実現しやすいものとし、リスニングを通して全体の意味を掴む力を育むことができる仕掛けを盛り込む。

  国語同様、視覚化、焦点化、共有化ができる機能を搭載。さらにCDやピクチャーカード、フラッシュカードで展開していた授業をデジタル教材上で全てできるようにする。フラッシュカードは、日本語のみ、英語のみ、日本語と英語、教科書順、ランダムと、様々な手法で繰り返すことができる。スピードも変更できるので、習熟度に合わせて使い分けることができる。ピクチャーカードは、教科書の挿絵以外にも追加で収録。これも、音声を聞きながら内容理解を深める活動を増やす工夫のひとつだ。カードに単語などを書き込んで、自由に動かせる板書カードも搭載予定。

 

 

 

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2)「見やすさ」「使いやすさ」にこだわり カラーユニバーサルデザインにも配慮【教育出版】

 かねてより各教科でデジタル教材を提供しており、平成17年度から教科書に準拠したデジタル算数掛図などを提供してきた教育出版では、平成23年4月から、小学校国語(全学年)、社会(5、6年)、算数(全学年)、理科(3〜6年)の各教科書に対応したデジタル教科書を発売開始している。既に導入済の自治体もあり、活用が進んでいる。

 
 
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▲図形の回転や移動も簡単にできる(算数)
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▲資料映像や画像を多数収録(理科)
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▲資料の拡大表示で理解を図る(社会)
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▲様々な工場見学がデジタル教科書上で実現。
写真は自動車工場の動画(社会)

  デジタル教科書では基本機能の「使いやすさ」「見やすさ」にこだわった。電子黒板がない際にも書き込み等各種機能を使えるように設計し、ツールも直感的に操作できるものとしている。小学校版では、PCとプロジェクター等を使って表示する場合において、画面をなるべく広く使えるよう、ツールは通常は隠れており、使いたいときに画面下部に現れるよう設計している。

  デジタル版の写真は教科書よりも明るめに設定し、プロジェクターでも見えやすいようにしている。また、カラーユニバーサルデザインも意識し、赤も黄色みを加え、色数も抑え、色弱者にも判別しやすくした。さらに、教科書の編集方針「すべての教科において言語力育成を重視する」工夫を各教科の特性に合わせて実現している。

■小学校国語 授業作りに役立つ 「スタンプ機能」

  教科書全体の表示、本文のみの表示、絵のみの表示が選択できる。本文の新出漢字をクリックすると、漢字アニメーションが起動。児童はアニメーションの動きを見ながら「そら書き」することができる。
「スタンプ機能」は授業作りに役立つ。「ゆっくり」「よわく」などは、音読指導の際に便利だ。「!」「?」などは、疑問点や驚いたところに貼ることができ、読解指導に役立つ。このほか、一部教材には、理解を深める動画資料が収録されている。

  本文や絵の一部を隠しながら課題を提示する際に便利なのが、部分表示機能だ。窓枠のバーを操作することで表示部分の大きさを変更でき、画面を隠したり、隠してあったものを見せたりすることができる。

■小学校算数 動く図形で 理解しやすく

  小学校算数では、指導内容に合わせて、図版画面、インタラクティブ画面、スライド画面を表示できる。図形をクリックすると図形のみが拡大表示、シミュレーション画面となり、図形を切ったり、回転させたり、裏返したり、線で囲まれた選択部分に色を塗ったり、移動などをすることができる。シミュレーション画面には、△ツールや□ツールを使って三角形や四角形を作成できるので、新たな問題の作成も可能だ。

■小学校社会科

  小学校社会科では、例えば、5年生の工業単元において、教科書画面から写真をクリックすることで動画が起動し、デジタル教科書上で工場見学を体験することができる。写真からではわかりにくい、自動車工場での塗装の様子なども分かる。

■小学校理科

  資料画像やアニメーションを各種収録した。教科書掲載の実験で実際に取り組むことが難しいものなども、映像で見ることができる。

中学校は「国語」と「英語」などを提供

■中学校向け デジタル教科書

  平成24年度は、中学校向けに国語、英語などのデジタル教科書を提供する予定だ。
小学校版同様カラーユニバーサルの文字、図、地図には配慮を取り入れる。小中連携と基礎基本を徹底し、「考える」シーンを取り入れた構成などを数多く提供していく。教科書の特色がより生かされるコンテンツやツールの工夫を凝らす予定だ。

 

 

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3)デジタル地図帳」で新しい学習課題に対応【帝国書院】

 帝国書院では、今年度からデジタル教科書「楽しく学ぶ小学生の地図帳」を発売している。これまでも地方別のデジタル教材は出していたが、地図帳全てをデジタル対応したのは今回が初。「帝国書院としては、地図帳をもっと使ってほしい」という思いから、デジタルのメリットを生かして地図学習をより円滑に進めると同時に、紙上での地図利用をより円滑に進めることができるよう配慮。「指導者用として、使う教員が苦労せず目的を果たせるよう工夫を凝らした」という。特徴と今後の展開を聞いた。

約64倍まで 拡大できる

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▲デジタル教科書用目次から
必要なページをすぐに開ける
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▲地域の特産品や遺跡なども学習できる

  教材のデジタル化によって実現するのが「共有化」「焦点化」だ。

  地図を使った学習では、例えば「全員が同じページを開く」、「全員が教師の指示した箇所を見つける」などの学習シーンにおいて、他教科以上に周知徹底が難しい面がある。デジタル教科書ならば、子どもたちの手元の地図と同じものを提示できるので、学習のスタート地点をそろえやすい。約64倍まで拡大でき、電子黒板がなくても書き込みできるツールを搭載しており、地図帳のどこを見れば良いのかを周知徹底しやすくなった。

  デジタル教科書専用の全体目次を追加しており、ワンクリックで素早く必要な場所に辿りつくことができる。

情報活用能力を統計資料で育む

  新学習指導要領では、各学年において、「地図や統計資料などを効果的に活用し、次第に我が国の都道府県の構成について分かるようにする」ことが盛り込まれている。

  「デジタル教科書」では、写真や統計資料に力を入れ、約160の統計資料、約1000枚の、解説付き写真資料など、写真や統計資料を充実させた。

  地図上の県名部分をクリックすると、巻末の統計資料にリンク、県ごとの統計を見ることができる。統計資料は、面積や人口、農林水産業関連、工業生産関連、産業別人口割合など、主に小学校3、4年生の学習で扱う各県の情報が中心だ。

  統計資料は、検索・並べ替えもでき、円グラフ表示もできる。例えば「面積別」、「人口別」などを選択、それぞれ数値の大きい順に並べ替えることができる。男性の「平均寿命」が最も長い県がどこか、なども統計資料を使ってすぐに探し出すことができるので、「統計」の理解や情報の整理・再構成など情報活用能力の育成にも役に立つ。

  また、47都道府県及び六大陸三海洋の名称や位置の定着に資するため、学習ツールやワークも追加するなど、新学習指導要領の学習課題を実現しやすいよう配慮した。

  地図上には、その県出身の文学者や歴史上の有名人、主な建造物なども記載されているので、各教科の学習内容を、地図を通して理解を深めることができる。

全教科対応の資料にも

地図学習を円滑に展開

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(上)地図上に書き込んでから
(下)白地図を表示すると説明しやすい

  地図学習での最初の課題は、地図の概念の理解、索引を使った「地図帳の使い方」の理解、方位・距離と縮尺の関係の理解、等高線の理解など、いくつかある。デジタル教科書では、教師がこれを説明しやすい動画を搭載した。例えば地図の成り立ちでは、写真から絵、地図と画像が変わるため、地図について視覚的に説明しやすくなっている。

  索引の使い方も、例えば「カ列」、「3行」の説明を、動画を使って順を追いながら説明できる。

  デジタル化によって、白地図の活用方法も広くなった。

  「何もない白地図上に河川や山などを書き込む」のが通常の使い方だが、例えば「地図上の平野と河川の位置を書き込んでから白地図表示」することができるので、河川と平野の関係についても説明しやすい。

中学校版「デジタル教科書」は、地理・歴史・公民・地図帳を提供

  来年度については、「中学校社会科地図」、「中学生の地理」、「中学生の歴史」、「中学生の公民」に準拠したデジタル教科書を発売予定だ。各分野とも、教科書から関連地図をすぐに呼び出せるようにする。書き込んだ画像や資料を教材として保存する機能や、付箋を使って隠す機能なども追加する予定だ。

  地理では、緯度経度の理解、時差、略地図の書き方など、紙上では理解しにくい事柄について動画資料を追加する。
歴史については、同社の教科書の特長を生かし、本時の学習テーマに関連した図や絵を導入時に表示しながら、見開きごとに本時の学習内容における課題を提示、学習を進めやすくする。
円高やインフレ、税金や年金、需要と供給など、今日的な課題を多く扱う公民については、紙上の説明では理解しにくい事柄を中心に、経済や政治の仕組みについて理解を深めやすい動画資料を提供する予定だ。

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4)≪中学校向けデジタル教科書≫
国語・数学・地理・歴史・公民・科学・技術家庭で提供する【東京書籍】

 東京書籍は、平成14年度より小中学校の各教科に対応した「デジタル掛図」などのデジタル教材を展開している。デジタル教科書については、平成18年度に中学校英語、平成23年度には、小学校国語・社会・算数・理科・家庭科・書写で提供しており、全国で導入が進んでいる。来年度は中学校向けに、国語、社会(地理・歴史・公民)、数学、科学、英語、技術・家庭で発売する。

全ての教科で使える MY教科書エディタ

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▲朗読音声に従って、文字が強調される(国語)
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▲グラフは全てアニメーション化(社会)
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教科書上の図版をクリックする(上)と、
段階的に簡易化されて表示(下)。(科学)
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  拡大や縮小、書き込みができる基本ツールを搭載。小学校デジタル教科書で好評だった、教科書の写真やグラフ、イラストを使って自主教材を作成できる「MY教科書エディタ」機能や、発問や答えなど本文の一部を隠すことができる「めくりツール」も各教科に搭載した。リンク機能では、知識の定着を効率的に展開できるよう、振り返り学習にも利用できるコンテンツや確認問題などを収録する。

資料・教材を豊富に収録 【新しい国語】

  教科書のねらいに即した各種教材を用意。「すの子」など教科書の解説にない難しい語句の資料画像や著者インタビュー、鑑賞用画像など、教材の内容理解をサポートする動画や資料をすぐに提示できる。

  簡単な操作で朗読音声が再生される。「文学」「説明文」の「読む」領域は、一文ずつ強調。「古典」は、読みに合わせて強調される。漢字アニメーションは、全学年分のほか、小学校の学習漢字も収録。

  古典学習資料も充実。古文、現代文訳は、上下表示、左右表示、一文ずつ表示など、生徒の理解状況によって選択できる。特別支援教育への対応は、総ルビ分かち書き機能、白黒反転機能など。

統計を比較しやすく 【新しい社会】

 
 
 

 貴重な映像資料を豊富に収録。統計データなど全てのグラフは自在に動かすことができ、教科書に掲載していないデータなども呼び出すことができる。複数ページに分散している資料を並べて比較したり、分かりにくい図解資料には解説アニメーションで指導しやすいようにする。

全ページを教科化 【新しい数学】

  各章の導入部で動画やアニメーションを活用し、身近なできごとと数学を結び付けられるようにする。各ページの挿絵もアニメーション化、シミュレーション化。全ページのコンテンツ化を図る。

  電子黒板なども有効に活用できるホワイトボード機能も追加。6分割の広い編集スペースに、図形パッドを使って図形を短時間で描くことができる。グラフ描画には「関数パッド」を搭載。表に対応したグラフやヒストグラムも描ける。

情報を段階的に表示 【新しい科学】

クリックすると拡大提示する機能では、最小限の情報が段階的に表示され、説明しやすい。テキストは読みやすい大きさにして再レイアウトしている。

  イラストや実験写真はアニメーション化し、理解しやすく、説明しやすいようにした。クラスや班の実験結果の数値を入れると、実験結果がグラフに反映され、考察に用いることができる。

 

教材準備の負担を軽減 【NEW HORIZON】

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▲「めくりツール」で教科書の一部を隠せる(家庭)
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▲動画コンテンツも豊富で説明しやすい(家庭)

 既に平成18年度版で提供しているデジタル教科書をさらにバージョンアップ。多様な音声再生機能や文字表示機能、ピクチャーカード、フラッシュカード、海外資料映像などを収録し、教材準備の負担を軽減する。

  補充問題やワークシートも収録。リンク機能を使って振り返り学習にも対応する。文字表示機能では、新たに日本語訳を収録。「指導書掲載の訳」「語句のかたまりごとの訳」の2種類から選択・提示できる。

  フラッシュカードも機能を追加した。品詞のON/OF機能や提示回数の設定ができる。「My Card」機能では、巻末ワードリストから単語や熟語を選択してフラッシュカードに追加できる。

 海外資料映像は、映像のスクリプトデータのPDFファイルを英語・日本語で収録。印刷できる。
デジタル教科書オリジナルの補充問題やワークシートも収録した。文法事項の定着をサポートする。

「実習」を確実に理解 【新しい技術・家庭

豊富な映像資料を各単元に収録。「好きなところから」「何度でも」「簡単に」再生でき、実技・実習の指導をサポートする。

  デジタルならではのコンテンツも豊富。例えば技術科「動きを伝達する仕組」の平歯車アニメーションや家庭科「色や柄の働き」の着替シミュレーションなど、教科書紙面では解説が難しいものも、アニメーションやシミュレーションを活用して、わかりやすく提示できる。

  「MY教科書エディタ」で教科書の写真・グラフ・イラストを利用・編集し、オリジナル提示資料・ワークシート・小テストなどを簡単に作成できる。

 

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5)≪中学校向けデジタル教科書≫
教師用語指導書として提供 「数学」「理科」理解しやすく【大日本図書】

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教科書の図版やグラフは必要に応じて
アニメーション化(数学)
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▲「階級の幅」の理解に(右)図形も動く
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▲教科書画面の一部を選択・拡大して
編集できる(理科)
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▲一瞬の実験も動画で再確認できる(理科)

 大日本図書では平成17年度から、小学校算数・理科及び中学校数学・理科の「教師用指導書IT活用編」を提供しており、平成23年度には、小学校版教科書「たのしい理科」「たのしい算数」の「指導用デジタル教科書編」を発売、現在各校で導入が進んでいる。さらに平成24年度には、中学校版教科書「数学の世界」「理科の世界」の「指導用デジタル教科書編」を発行予定だ。同社のこれまでの実績と現場の声を生かし、新学習指導要領の学習課題に対応すべく、準備を進めている。

体験版は 6月完成予定

  同社のデジタル教科書編は、教師用指導書として発行しているのが特徴だ。指導書としての提供は販売ルートが限定されるものの、教科書採用校に広く普及することができるというメリットがある。同社では「デジタル教科書編についての評価は高いが、予算の関係から全学年一斉導入が難しい現状がある。価格を低く抑えることで、できるだけたくさんの先生に使ってもらいたい」と話す。

  なお体験版は6月初旬完成予定。

【数学の世界】「図形」「確率・統計」「関数」説明しやすく

  小学校版同様、授業の流れが損なわれないように、指定した領域を拡大したり、元の全体表示に戻す作業がスムーズにできるようにした。

  数・式の領域では、矢線による数の変化などの図を動かしたり、等式の性質で使用される上皿天Qが教科書上の図でシミュレーションできる。

  図形領域では、対称移動や、重なる図形を教科書上で動かして再現。空間の図形を回転したり、切断面を表示することができる。

  関数領域では、点のプロットからグラフへの変換、数式を入力してグラフ表示する機能などがある。

  確率・統計に関する領域では、新指導要領で新設された「資料の活用」(1年生)で特に工夫が凝らされている。
日本では統計教育が長年行われていなかったため、そこに配慮した教材作成に力を入れた。

  ヒストグラムでは、教科書に掲載している図の階級の幅を変えて生徒が理解しやすくする仕組みを提供する。
専用のヒストグラムソフトを収録しているため、エクセルなどの表計算ソフトがなくてもデータを入力して分析できる。

【理科の世界】中学教員向けに編集機能を強化

  小学校版「デジタル教科書編」は、拡大してもきれいに教科書画面を再生提示できる点が大きな特徴だ。教科書の一部を選択・拡大して画面上に書き込むことができる。さらに、教科書画像や表など、教科書の一部を白ページに貼りつけたり、文字入力するなどの編集機能も追加している。

  中学校版では小学校版の基本機能はそのまま、さらに専科教員が使いやすいよう、この編集機能をバージョンアップ。自分で撮影した写真やWebデータなどを組み込み、デジタル教科書をカスタマイズする機能が加わる。デジタル教科書をベースに、各々の先生がオリジナル教材を作成することができる。

 同社の中学校版の教科書では、写真や図と対応した要素が見開きに何種類か掲載されていることから、現在の学習課題のみに注目しやすいよう、写真をクリックすることでその他の要素がグレーにマスキングされる。

  実験シミュレーションのほか、NHKが制作した動画資料を収録。各種資料は教科書画面からダイレクトに提示できるようリンクしている。

 

 

 

 

【2011年6月6日号】

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