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「ハリケーン・カトリーナ」からの復興に学ぶ 被災地・福島県新地町の復興
「復興」の第一歩はビジョンの策定から
東日本大震災からの早急の復旧は、いまや日本全体の課題と言える。重要なことは、現状回復だけではなく、新たなモデル地区としての生まれ変わりを図る「復興」計画だ。その際の参考としたいのが、今から6年前、アメリカ合衆国南東部を襲った「ハリケーン・カトリーナ」からの復興だ。カトリーナの台風と大洪水による甚大な被害は、東日本大震災により引き起こされた津波被害と状況が似ている。「ハリケーン・カトリーナ」からの復興を果たした地区から学ぶべき点は何か。
高波10mで壊滅的な被害
ハリケーンによる大洪水でがれきの山に |
2005年8月29日、アラバマ州・ミシシッピ州・ルイジアナ州に「ハリケーン・カトリーナ」が上陸、米国災害史上最悪の自然災害が引き起こされた。沿岸地方全般には10mもの高潮が押し寄せ、町はがれきの山となり、インフラは遮断され、港も壊滅した。総被害額は960億ドル(約7兆800億円)と言われている。ヒューストンのアストロドーム球場には約2万8500人が避難し、感染症も集団発生した。復興スピードは遅く行政対応についても非難が集中した。
学校機能回復と新しい学習環境
カトリーナ被災により学校機能の回復も遅れていた。当時、21世紀に対応する教育・学習システムの構築と、新しい学習方法を実践できる教員の育成に取り組んでいたシスコシステムズのグローバルエデュケーションチームでは、大きな被害を受けた湾岸地区の学校再生に向け、教育改革のモデル構築と検証に協力した。ルイジアナ州及びミシシッピ州ミズーリ地区の8つの学校群を対象に、70億円相当を投じた。
「復興」第一歩は 「ビジョン」策定
テレビ会議による協働学習
や |
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最初に着手したのは、ビジョンの策定だ。
学校教員、教育長、教育委員会、行政担当者と共に学区内で十分にビジョンについて討議を重ね、これまでの教育課題を洗い出し、実現したい目標を明らかにした。
討議の結果合意を得られたビジョンが、協働学習などを通し、問題解決力など21世紀を生き抜くために必要なスキルを身につけること、学力向上(特にSTEM=Science, Technology, Engineering and Mathのスコアアップ)、個人のペースに合わせた学習環境の提供などだ。
環境構築と研修で授業が変わった
グローバルエデュケーションチームでは、共通理解されたビジョンを実現するために、強力なネットワーク基盤の構築と学校のICT機器・学習システムの整備に着手した。
具体的な構築内容は、標準教室338室、高機能教室262室の整備だ。
当時、標準教室環境として示されたのは、インターネット環境、教員用PC、スクリーン、プロジェクター、スピーカー、IPフォンなど。高機能教室環境は、電子黒板、高品位音響システム、到達度アセスメントデバイス(携帯できる小型端末)、児童用PC(中高生は1人1台)、ビデオ会議システムなどだ。
これにより、地区で最も貧しいとされるルイジアナ州のジェファーソン・パーリッシパブリックスクール(以下、JPPSS)では、テクノロジーが完全に学習システムに組み込まれた。
JPPSSでは、ゴールを「デジタル学校区」として、2年以内に学区全体が教育改革を遂げることとした。そのために、86全学校の高速ネットワーク接続、ICT環境をサポートするスタッフの育成、学校単位での組織変更、子どもたちのプロジェクト学習参加への意欲向上、予算獲得に取り組んだ。
教員と管理職全員にPCが配備され、教室では電子黒板や応答システム、無線LAN環境、プロジェクター、ビデオ会議システムなどICT環境が導入され、様々な学習スタイルを利用できる環境になった。
教室にデバイスを持ち込むことは、教師と子どもの絆を結ぶことに役立った。
例えば、見て理解する児童・生徒、言葉で理解する児童・生徒など、様々なニーズに対応できる。また、教師用PCで子どもたちの学習の進捗具合を管理・確認でき、必要なときに素早く個別指導もできる。遠隔地の学校とテレビ会議で結び、子ども同士の協働作業も可能になった。
教員研修は職種ごとに継続して行う
IT基盤は、教師にも直接的な影響をもたらす。ハーバード大学やスミソニアン研究所ほかと連携することで、様々な教員研修が重ねられた。
操作研修に終始するのではなく、技術を活用した実績を上げるための指導法に注力した。一度で全てを学ぶことは難しいことから、継続性を重視。役割を明確にするために、研修は職種別に行われた。
専門知識の獲得と21世紀型学校環境の実現により、教員は積極的に指導法の改善にICTを活用するようになった。
既にプレートテクトニクスを学習していたJPPSSの児童は、午前の授業でUSGS(アメリカ地質調査所)のWebサイトでポッドキャストを聞き、マグニチュード7・8の地震に襲われたカリフォルニアの状況を学び、メモ帳でプレートテクトニクスと地震の関連をまとめるなどの学習が行われた。
学力向上に寄与 出席率も増加
その結果、地区の子どもたちの意欲と学力は向上した。
ルイジアナ州の統一テストによると、JPPSSの児童たちの算数の成績は、4年生で7ポイント、10年生で10ポイント向上、全体では前年比5%以上の向上が見られた。
出席率は伸び、テストの参加人数も増え、中途退学者が減少し卒業できる生徒が増加、AP(Advanced Placement=大学1年レベルのテスト。APの成績が上位であれば大学の単位を取得したとみなされる)の申し込み数も増加した。
教育システム構築の専門家であるバスティ・アルメリコ博士は、「ツールとして使用できるようになることがICTの本当の意味での導入。インターネットを見るだけ、ポッドキャストを作るだけでは不十分。生徒の表現の手段としてポッドキャストやブログを使い、成果や作品を発表し共有するためにICT環境やネットワーク、テレビ会議を利用することで、明らかに学力が向上した」と話す。
教育改革を実現
JPPSSのように望ましい教育改革を継続・発展させるには、いくつかのポイントがある。
まず教育長などのトップが実践し、徐々に各レベルに浸透させるという流れを作ること。JPPSSの参加者は管理者、技術スタッフ、教師、パートナー、インターン、企業など700人以上にも上った。
JPPSSの教育長ダイアン・ラッセル博士は、「かねてから21世紀の社会で国際的に競争力のあるスキルを身につけさせることの必要性を理解し、行動しなくてはならないと考えていた。実行にはいくつか越えなければならない壁があったが、カトリーナのダメージからの脱却とシスコシステムズのサポートで、教育改革が実現した」と話す。
成果については、独立した機関により評価も行った。
最も貧しい地区である学校の子どもたちの学力向上や意欲向上は、EDC(Electronic Data Capture=インターネットを利用したデータ分析)によって評価された。
EDCでは、大きな3つの成功として、高度・強力な技術基盤が導入され、全児童生徒がPCやネットワークを活用するようになったこと、専門スキル向上を目指す研修が管理職用と教員用に準備され、日々の学習にICT活用が組み込まれたこと、学校‐家庭ネットワークで、地域社会との連携ができるようになったことなどを挙げている。
ビジョンを明確にしたICT環境の整備がハリケーン・カトリーナで被災した地区の全ての子どもたちと学校関係者に良い影響を与えた点は明らかだ。カトリーナから6年を経、IT技術はより進んでいる。今なら、ミズーリ地区で挙げられた成果以上のものが東日本で実現できるはずだ。
シスコシステムズでは、高品位ビデオ会議システム(テレビ会議システム)を、東日本大震災における被災地の学校や公民館、仮設住宅の集会所などに提供している。
テレビ会議を利用することで、通学困難な児童・生徒の遠隔授業による参加が可能になる。また、テレビ会議を使って遠隔地の専門家にカウンセリングを受けることもできる。
現在テレビ会議システムは福島県新地町に提供されている。
新地町教育委員会と新地町の3つの小学校(新地小、福田小、駒ヶ嶺小)の保健室に設置し、児童は名古屋市の「名古屋YWCA」の心理カウンセラーと相談できるようにした。
このほかテレビ会議システムでは、養護教諭同士の連携・コミュニケーションや相談なども予定している。
新地町ではICT支援員が円滑に機能しており、テレビ会議システム構築・運用についてもICT支援員によるサポートが可能であることから、同システムの活用が早期に決定したという。
◇ ◇
同社のテレビ会議システムは、圧倒的な高画質とシンプルな使い勝手が特徴で、最適な高さに設置されたカメラと大型の液晶ディスプレイにより、対面さながらのテレビ会議を実現できる。大人数教室、少人数教室、対面など、様々なシーンの提供が可能だ。
音声や映像だけでなくデータやアプリケーションを共有した会議を提供できるのが、Web会議システム「WebEX」だ。インターネットに接続したPCがあれば、特別な機器がなくてもすぐに活用できるSaaS型サービスで、メンテナンスは一切不要。メールやブラウザレベルのスキルで利用できる。
会議で見えるのは、PC上のファイル・資料と、書き込みなどができる会議室だ。音声はPC内蔵スピーカーまたは電話を使う。参加者はURLをクリックするだけでどのPCからでも会議に参加できる。スマートフォンからも参加が可能。
研究会、遠隔授業 研究授業、研修に
手軽な使い勝手で、様々なシーンで活用が考えられる。例えば教員研修などや、全国に散らばるICT支援員の情報交換も可能だ。研究授業などで児童生徒の表情を見たい場合は、PCの内蔵カメラや外付けカメラで可能になる。
電子黒板上の画面をリアルタイムに転送することもできるので、遠隔授業や遠隔による保護者の授業参観も実現する。
授業を録画しておけば、電子黒板上の投影画面や書き込みと音声で復習もできる。
リモートメンテナンスにも活用できる。例えばICT支援員が学校に行かなくても、インストール作業やアンインストール作業、トラブルへの対応などPC等をリモート機能でメンテナンスすることができる。
Web会議で見える画面 |
セキュリティも安心
手軽でありながらセキュリティも堅固。暗号化だけでなく、機密保持の基準にも準拠している。Web会議上でやり取りしたファイルは録画しない限り残らず、会議終了とともに消える。録画する場合は、データセンターに保存され、録画を見る場合は、URLからアクセスできる。
学校・教委対象「WebEX」無料トライアル
シスコシステムズでは、実際に教育現場や教員研修等での活用にWebEXを提供したいと考える教育委員会や学校教職員を募集している。
学校機能の早期回復で町の"元気"を取り戻す
福島県新地町は、東日本大震災で津波による壊滅的な被害を受けた地区のひとつだ。さらに原子力発電所からは50km圏に位置している。そんな中、新地町での人的被害は沿岸地区としては最小限に抑えられ、学校への被害も少なく、4月12日には新学期がスタートした。さらに、総務省による「絆プロジェクト」や、「スクール・ニューディール構想」により整備された機器や、ICT支援員が避難所や学校で大いに貢献しており、町全体が一丸となって復興に向けて取り組んでいる。復興に向けた現在の様子について、新地町教育委員会と学校を取材した。
学校の耐震化で被害は最小限に
鴇田氏 |
新地町では東日本大震災により、533戸が全・半壊し、ピーク時には新地町民全8500人のうち2300人が、地区内の小学校や中学校など5か所の避難所に避難した。死者94名、不明者は20名。津波の直接被害があった地域としては多くの人命を救うことができたと言える。その理由について、新地町教育委員会の鴇田氏は第一に、予備電源や防災無線放送設備がダウンしなかったことを挙げた。
「地震後、津波が沿岸部に到達したのは約1時間後。自家発電機が影響を受けなかったため、地震の後すぐに防災無線を使って町全体に避難の呼びかけを繰り返し行うことができ、ほとんどの人が避難することができた。加えて昨年より地域防災計画を策定、自主防災組織での訓練や総合防災訓練を繰り返しており、住民の避難経路がはっきりしていた」と述べる。学校の耐震化が完了していたため、地震による建物損傷もほとんどなく、学校でけがをした子どももいなかった。
避難所でのインフルエンザ等病気の発生も最小限ですんだ。避難所である新地町庁舎が新しく、部屋の床が絨毯敷きで断熱に優れていたこと、学校では、体調の悪い人のために保健室や教室も積極的に開放したことが功を奏したという。「町の約7割は津波に被災していなかった。
そこで地震の翌日には防災無線を使い、町内に援助を依頼したところ、避難所に物資が持ち込まれ、米以外の野菜類も食べることができた」点も大きい。防災無線は現在も毎日のように活用されている。
町の災害対策本部からは毎朝町長が、ボランティア参加者が何名で何をするのか、自衛隊員はどこから何人来て何をするのかなど、防災無線で報告している。この報告を聞いた地元民は自衛隊員やボランティアに対する感謝を言葉で伝えることができ、復興活動の励みになっているようだ。
被災直後、職員対象に教育長が放射線教育
沿岸地区の被害は大きいが 学校や庁舎はほぼ無事だった |
新地町を襲った被害は津波だけではない。原子力発電所の問題もあった。原発地区50キロメートル圏に位置するため、地震後の混乱時期は、行政職員からも避難を望む声も強かったという。
そこで、教育長であり物理教員でもある村山正之氏自ら、3月17日と18日に4回、行政や教職員等を対象に、座学を行った。放射線の基礎知識、被害を受けないための方法、20キロメートル圏内が避難しなければならない理由などが主な内容で、これにより、職員らは落ち着きを取り戻し住民の災害対策に集中することができるようになったという。
現在も教育委員会には、放射線についての問合せが届く。放射線は毎日計測し、その結果を防災無線で報告。現在、学校の放射線量は1日8時間戸外にいたとしても年間2〜3ミリシーベルトという量のため、数時間程度の野外活動ならば問題ないとして活動している。教育長を筆頭に鴇田氏を始めとした教育委員会のリーダーシップにより、被害の拡大を防げたといえる。
学校再開も早く、卒業式も行った。「不完全な状態だとしても、学校を再開することで、町を元気にしたい」という思いがあったからだ。町外から届いた学用品などの支援品は卒業式・入学式に展示し、「次は君たちが立ち上がる番」と伝えたという。
77インチの電子黒板 地震の被害なし
77インチの電子黒板(スターボード)は 地震でも倒壊しなかった |
新地町教育委員会は、総務省による「絆プロジェクト」(※)参加校だ。新地町内の小学校3校は、絆プロジェクトによって、光回線が敷設、3、4年生全員分の端末「iPad」、5、6年生全員分の端末「CM1」を整備し、専用カートで保管している。教育ソフト関連では、dbookやネットワーク図鑑、計算や漢字などの学習ドリルなどが配備されている。電子黒板は24台。21年度の補正予算で小学校に3台、中学校が2台既に整備されていたため、現在全校全普通教室に電子黒板と電子黒板用の教育用PCが合計27台整備されている環境だ。このほか、校務用PCも全教員分整備済で、ICT支援員も各校に複数常駐している。
これらICT機器は、地震による被害がなかったという。学校が二階建てであったこともあり、77インチの電子黒板は、地震で倒壊はしなかった。PC教室のPCは倒れたものの、壊れたものはほとんどなかった。保管庫に保管した子ども用PC、教室に天吊り設置した50インチのデジタルテレビも無事であった。
保管庫内の「CM1」(左)と 「iPad」(右)も無事だった |
「被害を免れたICT機器は、避難所でも大活躍でした。デジタルテレビや電子黒板は、体育館や視聴覚室、避難者が食事をとる共有スペースなどで活用し、『iPad』は、学校避難所で子どもたちのレクレーション活動に利用できました。被災後の情報共有や心のケアにも役立ちました」
これらの機器がスムーズに活用できたのは、震災直後も各校に常駐していたICT支援員の力が大きいという。
絆プロジェクト参加校のうち1校は、当初ICT機器の導入や活用に不安を抱いていたものの、現在では積極的に活用が進んでいるという。それもICT支援員のおかげ、と鴇田氏は述べる。
※絆プロジェクト=総務省による緊急雇用対策を目的としたプロジェクト。地域雇用につながる予算が手厚かった点が特徴。単年度予算であったことから、ICT支援員の研修と採用は22年度のプロジェクト予算だが、23年度以降の運用は地方自治体で負担することが採択の条件であった。
ICT支援員は 常勤で複数配置
新地町のICT支援員整備は、手厚い。絆プロジェクトによって22年度にICT支援員を採用、小学校3校について各3〜4人、計10人を雇用。1月に研習を実施し人材の養成を行った。
支援員は本格的に授業で学校に入ったとたんに被災したが、避難所の学校で、電子黒板やデジタルテレビ、「iPad」などがスムーズに稼働するようサポートした。
23年度は新地町の予算で継続して配備、運用している。新学期開始後は、教員らの授業活用が進むよう、機能やソフトウェアについての説明、教材作成、授業準備にと大活躍している。
新地町では、平成19年から学習支援員が配備されており、外部の人材活用が既に始まっていたことから、ICT支援員との協力関係や信頼関係が比較的スムーズに生まれたという。
テレビ会議で カウンセリング
新地町では、テレビ会議の活用による心理カウンセリングも予定している。保健室で養護教諭が相談業務に携わるだけでは、カウンセリングが必要なすべての児童・生徒に対応することができないことから、外部の心理カウンセラーが定期的にテレビ会議システムで子どもたちの心のケアにあたる。
「子どもたちは、自分の経験を話すことで心の安定につながっていく。対面ケアが最善であるものの、派遣のカウンセラーでは時間的な制約も多い。顔見知りだと心を開きにくい面もある。テレビ会議システムを活用することで、いつでも相談できる環境を提供できる。相談できる機会や手法、相手は多いほどいい」と述べる。
災害対応で多忙な中、次々と新しい試みに着手できるのも、ICT支援員の存在が大きい。
「新地に行くと学校環境は素晴らしいよ、というイメージを作ることで、より優秀な人材を集め、新地町が核となって地域に広めたい」と鴇田氏は述べる。
ICT支援員管理は 教育専用クラウドで
教育専用クラウド「and.T」(アンドティ) ICT支援員カレンダー活用イメージ |
新地町教育委員会のICT支援員の採用・研修・運用を請け負っているのがJMCだ。
ICT支援員に対する研修は今年1月からスタート、1か月間行った。
内容はソフトウェアや機器の操作、ICT活用指導力向上研修などだ。
新地町教育委員会では、ICT支援員管理のために、教育専用クラウド「and.T」(アンドティ)のICT支援員カレンダーを活用予定だ。これはICT支援員の活用履歴を管理できるもの。
各校のICT支援員が行った支援内容を「and.T」上に書き込むことで、クラウド上のデータベース上に蓄積され、全校で共有できる。それを見た各校が「なるほど」ボタンを押すと、反響のあった支援内容が上位に掲載される。上位に掲載された内容から、今学校に必要とされている支援内容や、より良い支援を共有できる仕組みだ。
◆ 地域ぐるみの取り組みで成果 ―駒ヶ嶺小学校
山邉校長(右)と森教頭(左) |
駒ヶ嶺小学校では、国語や算数、社会、書写、音楽とあらゆる教科で電子黒板を活用している。体育では、リレーのバトンタッチの方法をデジカメで録画、再生して電子黒板で全員が共有し、バトンタッチの方法をチェックするなどで活用した。
同校の山邉校長と森教頭は、「他の実証実験は地区で1校のみの実践が多いが、絆プロジェクトは教育委員会単位の応募。地区全体で取り組むため学校間・地域間連携が生まれた。各校は報告書や応募書類の作成など事務的な負担がなく、学校はどんどん活用していけば良いという点も良かった」と述べる。
同校でも、ICT支援員はスムーズな授業活用に大いに貢献している。「授業にはリズム感が重要。先生が授業中、機器のトラブルで1分間を無駄にすると、子どもたちの集中力が途切れる。ICT支援員は教員が実現したい授業を機器上で表現し、ICT機器の長所だけを活用できるようにサポートしている」と述べる。
支援員の複数配置と常勤採用についても高く評価する。「1人1校の担当だと負担感が大きい。複数配置とすることで、ICT支援員間の連携や協力も生まれ、よりスムーズな運営につながる。常勤であることも大切。より力のある人材が集まりやすくなった」と述べた。
◆ ICT支援員と明日の授業準備 ―新地小学校
ICT支援員のサポートで電子黒板を 使った教材活用も進んでいる |
避難所である新地小学校(大谷一裕校長)では、デジタルテレビが共有スペースに設置され、食事を終えた避難者がテレビを視聴していた。
家庭科室は被災者のための食材保管スペースで、調理も被災者自らここで行う。
一方教室では、学級担任とICT支援員が明日の授業準備の対応をしていた。
電子黒板での英語ノートデジタル版や書画カメラの操作方法、書画カメラに投影した画像の拡大方法や取り込み方法、書き込み方や画面の切り替え方などを中心に学んでいた。
明日は英語の時間に電子黒板や書画カメラ、英語ノートデジタル版を使う予定だという。
【2011年6月6日号】