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ICTを活用した協働教育に
必要なシステム・体制を示す

教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン

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 総務省は、平成22年度に実施したフューチャースクール推進事業の成果を踏まえ、「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2011」(以下、ガイドライン)を策定、4月8日、公表した。

平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」では、「子ども同士が教え合い、学び合う協働教育の実現など、教育現場(中略)における情報通信技術の利活用によるサービスの質の改善や利便性の向上を全国民が享受できるようにするため、光などのブロードバンドサービスの利用を更に進める」ことが盛り込まれている。それを踏まえ総務省では、教育分野でのICT利活用推進を目指し、主に情報通信技術面を中心とした課題の抽出・分析を目的として、平成22年度より「フューチャースクール推進事業」に着手、これを全国10小学校で推進した。同時に、総務副大臣主催で「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」を開催、協働教育を円滑に進めるためのICT環境の構築と情報通信技術条件について検討を重ねていた。ガイドラインはその取り組みの成果。

  ガイドラインでは、「ICTを活用した協働教育などの教育活動を円滑かつ効果的に進める際のICT環境」についてまとめられた。具体的には、ネットワーク環境構築における検討事項や工事を進める際の留意点、インタラクティブ・ホワイト・ボード(以下、IWB)や学習者用コンピュータとして活用するタブレットPCの役割、ICT支援員の役割など。

  本ガイドラインは、平成23年度以降の実証研究結果を踏まえ、さらに改訂を行っていく予定。

■協働教育推進のプラットフォーム

  ICTを利活用した協働教育を円滑に進めるためのプラットフォームとして、全学級担任及び全児童に1人1台のタブレットPCと全普通教室に1台のIWB、これらICT機器を接続するための無線LAN環境が整備されている。このほか、実物投影機やタブレットPC充電保管庫、校内サーバなど。

 実証実験では、学校内から通信ネットワークを経由して「クラウド・コンピューティング技術を活用した協働教育プラットフォーム」に接続し、授業で必要となるアプリケーションや教育コンテンツを活用した。さらに学校と家庭との連携に向けた取り組みとして、協働教育プラットフォーム上のポータルサイトも整備し、家庭との情報共有や、タブレットPC持ち帰りによる家庭学習も可能にした。

  また、協働教育を円滑に進めるために、児童をグループ分けしたり、各児童用タブレットPCの起動状況を把握、画面操作できないようロックしたり、教員用タブレットPCと児童用タブレットPCとの画面共有や教材配信、複数のPCからひとつの画面を共有することができるアプリケーションを用意した。

■ネットワーク構築の留意点

  ガイドラインでは、「円滑な教育活動のためにはネットワーク構築には特に留意する必要がある」として「教育クラウド」を挙げる。そのメリットは「ソフトウェアの設定や準備に時間をかけずに、最新の教育アプリケーションや教育コンテンツを利用することができる」点、「複数の学校で同一の教育アプリケーションや教育コンテンツを利用することもできる」点、「利用端末に左右されず、統一的なセキュリティ対策がなされることにより、児童の学習履歴等の情報を保存・管理することができる」点など。なお総務省では、ASP・SaaS事業者が校務分野のサービスを提供する際に、遵守又は留意すべき事項等をまとめた「校務分野におけるASP・SaaS事業者向けガイドライン」を策定している。(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_01000004.html

■協働教育事例 全学年で実施

  実証実験での主な取り組み事例についても報告された。

  それによると、協働教育プラットフォームは、「児童が自分の考えを発表し、学級全体で話し合う」、「グループで教え合い、学び合う」、「体験や取材したことを整理し振り返る」、「学年を超えて相互に教え合う」、「遠隔地の学校と結んで学ぶ」教育活動に活用されている。「相互に教え合う」活動を実施した場合が最も多く、5割以上の授業で実施された。このほか一部の地区では、児童がタブレットPCを家に持ち帰って家庭学習にも活用。家庭学習の内容としては、算数のドリル学習やタブレットPCのカメラを用いた写真撮影(低学年)、社会のドリル学習(中学年)、キーボードの操作練習等(高学年)などであった。

■教員の負担感 時間経過で減少

  昨年度実施のフューチャースクール推進事業後のアンケート結果によると、学習者用コンピュータを使った授業について児童らは「楽しい」、「もっと受けてみたい」、「わかりやすい」と感じている。また、教員らは、実証実験を始める前と比較すると「授業終了後の片付ける負担感」、「システム立ち上げの負担感」が小さくなっており、短期間で教員がICT環境に慣れてきていることがわかっている。今後、協働学習の具体的な進め方については、平成23年度以降の実証実験で引き続き検証されていく。

■ICT支援員を 支援する体制を

  ガイドラインでは、ICT支援員に求められるスキルとして「ICT利活用に関わるスキル」「コミュニケーションスキル」「学校現場についての理解」と整理した。

 同時に、ICT支援員と教員との事前打ち合わせや支援員を対象とした研修、情報交換できる場の必要性なども指摘されている。実証実験では、協働教育プラットフォーム上にコミュニティサイトを作成し、全国のICT支援員同士で、支援内容についての意見交換を行っている。

 

【2011年5月9日号】


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