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4月15日、文部科学省で「教育の情報化ビジョン(案)」の検討を進めている第12回「学校教育の情報化に関する懇談会」が開催された。同会は当初3月16日実施予定だったが震災で延期、仕切り直しで開催された。震災から1か月余りを経た当日は「安心・安全」をキーワードに、災害時の学校の在り方と教育の情報化についての議論も展開された。これらの議論を受け、近日中に「教育の情報化ビジョン」確定版が発表される。
学校の情報基盤強化 重要性増す
文部科学省では震災を受け、「教育の情報化ビジョン(案)」について「災害時等において学校は避難所等にもなりえる」、よって「災害時等においた学校のICT環境整備等について長所や課題を踏まえて整備していくことが必要」など文言の追加修正を行った。懇談会では災害時を想定した際の学校環境について、非常時においての電力供給と通信ライン確保の重要性が指摘された。
五十嵐委員(日野市立平山小学校校長)は、「日野市では、学校の電話は通じずメール配信も携帯電話も使えなくなる中、学校Webサイトだけが機能していた。これはサーバが校外にあったため被害を受けなかったから。また、本校には太陽光発電施設があるが、蓄電できず、停電時には活用できなかった。学校は非常時にあっても地域の情報基盤として機能できる整備が必要であると改めて痛感した」と述べた。
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新井委員(国立情報学研究所社会共有知研究センター長)は、「学校サーバが被災すると簡単には復旧できない。被災地で稼働していたのは、クラウド上のWebサイトとグループウエアであった。岩手県ではグループウエアを使い、被災地区の学校の様子を逐次書き込んですぐに共有していた。その際活用するのは停電時でも機能することから携帯電話が多い。よって、CMS(コンテンツ管理システム)が国内の主要携帯電話に対応していることも重要。災害時に迅速かつ的確に情報を伝えるためには、Webメール、グループウエア、連絡メール配信等学校の情報基盤が複数経路で確保すべき」と、災害時にも情報基盤機能を保持できることの重要性について言及した。
また、「学校Webサイトや教育グループウエアが災害時にも機能するためには、どのようなものが安心安全に学校運営できるのかについて具体的に記述すべき」という意見も出た。
鈴木寛文部科学副大臣は、「被災した福島県の避難所である新地小学校を視察した際、地デジ対応の大型テレビが体育館にあり、情報提供手段として役立っていた。避難所にICT支援員がいる場合、情報獲得がうまくいくという声もあった。ICTリテラシーの有無が情報獲得や理解度に関わるということを目の当たりにし、生きる力のコアの1つとして、ICT活用能力やコミュニケーション能力を徹底して身につける教育を実現すべきであると改めて再認識した」と述べた。
懇談会では、災害対応できる学校環境の重要性については概ね賛同は得られたものの、「教育の情報化ビジョン」にどこまで盛り込むべきかについては、意見が分かれた。