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教育の情報化再キックオフ  “熟議”“懇談会”で意見広く
  熟議

 文部科学省副大臣鈴木寛氏が中心となり、新政権による「教育の情報化」における取り組みがスタートした。4月22日には「教育の情報化に関する第一回懇談会」(座長 安西祐一郎氏・慶応義塾大学教授)(以下、「懇談会」)が開催され、初等中等教育の授業におけるICT活用やICTを活用した校務支援、教員へのサポート等、総合的な推進方策について有識者が集い、意見を交換した。また、4月17日には「熟議」に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会のキックオフシンポジウムを開催、保護者や教員、研究者などが全国から集まり、小中学校の教育における問題点やより良くするためのアイディアについて話し合いが行われた。「熟議」はWebサイトに引き継がれ、登録すれば誰でも意見を述べられる仕組み。現在も討議が続いている。文部科学省では、ヒアリングを随時行い、6月をめどに文部科学省としての教育情報化に関するビジョンを策定、概算要求に反映させていく考えだ。


Webで討議を継続

教育の情報化に 関する懇談会

 鈴木副大臣は「懇談会」で、「21世紀は情報の活用やコミュニケーションが中心となる歴史的転換期。そこではICTを最大限活用した新しい学びが必要。近い将来を見据えた学びの本質について再構築、デジタル教科書やICT環境を次のパラダイムでどのようにしていけば良いのか再構築していきたい」と述べた。
懇談会には、研究者やPTA、管理職や教育委員会、教育関連企業など学校・教育関係者ら22名が参加。各市の取り組みを踏まえた意見や問題点が出された。「教育の情報化」については、参加したほとんどの委員が賛成であり、課題は人と予算の確保、情報化の格差であるというのが共通の見解だ。それに付随し、解決法について示唆する事例についても紹介された。
「学校の情報化」における目的の設定と取り組みの優先順位については、「現在ある日本の教育手法を活かし、現場の立場から見た使いやすさを優先させるべき」という意見、「個人の学びの場として機能するよう強化すべき」という意見が出た。両意見がどの段階でどのように政策に反映され、予算をどう確保していくのかに注目したい。以下は参加者の意見(一部)。

  新潟県三条市・国定勇人市長=「電子黒板導入における教育現場の反応は、PC教室の設置よりもはるかに好意的。普及が始まった電子黒板を活用できるソフトが必要。最良のコンテンツは教科書。教科書のデジタル化に全力投球すべき。教育の情報化に関する支援を交付金の形でお願いした。また、校務支援システムは絶対に必要なもの。個別システムの導入によりコストが高くなっている。全国的に統一したシステムが欲しい」

 横浜国立大学准教授・野中洋一氏=「学校環境整備による活用度合いが週1回程度では、使っているうちに入らない。英国では8割以上の教員が日に1度以上使っている。使いやすい環境であるか常に検証していくべき」

 玉川大学大学院教授・堀田龍也氏=「いまやPCを使えない教員はほとんどいない。授業でICTを活用しないのは、すぐに役立つ状況にないから。130年間続いてきた一斉授業の文化は日本の強み。学校ICT環境は、それを活かしたものであるべき」

 東京大学大学院教授・三宅なほみ氏=「世界的潮流としては、学習者自身が自ら学び続ける力を身につけることがゴール。今の日本の教材をどう作り変えていけば新しい学びの場が提供できるのかを考えるべき。学校のインターネット環境は、教育の質を上げる基盤。まずはそれを大幅に作り変える必要がある」


「熟議カケアイ」で 意見を広く募る

 4月17日に開催された教育政策シンポジウム「熟議」には、インターネット等の呼びかけに応じた保護者や教員、研究者などが全国から集まった。当日話し合われた「熟議」はWebサイト「熟議カケアイ」(http://jukugi.mext.go.jp/)に引き継がれ、現在も討議は続行中だ。「熟議」は、教育に関する議論を広く一般の人も「当事者」として考えるための仕組み。これにより、「事業仕分」にも耐えられる政策とする考えだ。
座長を務めた金子郁容氏(慶應義塾大学大学院教授)は、「日本の教育が変わるきっかけとなる重要な日となる可能性がある。これから起こることは予測ができない。これは文部科学省としては初めての試み。この結果が政策にどのように反映されるのか、見守っていきたい」と述べた。
熟議は各グループ15人、9グループに分かれて行われた。各グループには、文部科学省職員など「熟議」Tシャツを着用したファシリテータが討論をコーディネートする。意見を紙にまとめ、中央に置き、議論しやすいようにするなどの工夫も見られた。Webサイト「熟議カケアイ」では現在「未来の学校」、「教員の資質向上方策」についての討論が続いている。回答期間は5月21日まで。登録すれば誰でも意見を述べることができる。
「懇談会」や「熟議」は、様々な意見を文科省が把握するためのものであり、それがどう政策に反映されるのかは、方針が出るまではわからない。これら意見がどのように反映されていくのか注目したい。



 

【2010年5月8日号】


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