最新IT教育―実践、成果を報告―ICT|フィンランド教育 |
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教育情報化推進協議会(EEAJ)は、教員研修支援教材として開発した「ICT活用指導力向上研修パッケージ」(略称‥研修パッケージ)の説明会を開催している。「研修パッケージ」は、文部科学省の平成19年度「先導的教育情報化推進プログラム」事業の委託を受け、3年計画で開発を進めてきたもの。説明会は、「研修パッケージ」の活用により、学校や教育委員会の研修効果を高めてもらうことを目的に、全国の情報教育担当者を対象に行われた。1月13日に実施された研修会を取材した。
文部科学省生涯学習政策局参事官付 情報教育係長の大塚和明氏は本事業について、「100を超える応募の中から採択された14件の事業のうちの一つで、非常に価値のあるもの。先導的教育情報化推進プログラムに関わる先生方にも、使いやすいシステムと好評」と話す。
また、全国の自治体に対してICT普及を促進するための活動を行っているEEAJ代表幹事の森田和夫氏は、「委託を受ける前からJAPETで独自に開発を進めてきたICT教材に関する内容をEEAJで引き継ぎ、さらに見直すことによって、優れた教材が完成した」と述べた。研究グループを率いて開発にあたったのは、目白大学教授の原克彦氏。原氏は「『教員のICT活用指導力を向上させるには、どのような力をつければ良いのか』、『研修を受けた結果、どのような効果が得られれば良いか』を明確にし、研修で身につけるべきスキルや研修での効果が見えるシステムとなるように留意して開発を進めた」と話す。
「研修パッケージ」は、研修テキスト、ワークシート、ICT活用指導力規準表などの教材群と、研修に関する情報を閲覧でき、自己チェックなどが行えるWebサイトの研修支援システムから構成される。
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本研修プログラムで最もこだわったのが「研修テキスト」や「研修指導者マニュアル」、「教員のICT活用指導力規準表折りたたみシート」などの紙による情報だ。
「ICTに苦手意識を持っている人への最初のアプローチとしては、やはり『紙』からの情報が有効」ということから、各種テキスト類を充実。さらにそれを補完するものとして、Webシステムを提供する。
「ICT活用指導力規準表」では、教員のICT活用指導力を、レベルA「大学生・新任教員」(基礎的な知識をもとに授業を実践できる)、レベルB「一般教員」(効果的な授業が実践できる)、レベルC「ICTリーダー教員」(校内で指導・推進できる)、レベルD「指導主事」(地域で指導・推進できる)の4レベルに分け、現在保有しているICT活用指導力がどのレベルにあるかを常に把握できるとともに、さらにどのような力を研修で身に付ける必要があるかなどを明確にした。
「研修テキスト」(増補改定版)の研修項目は全部で36講。各項目にはねらいと規準表のどの部分に対応するかが明記されており、平成19年3月に文部科学省が公表した「教員のICT活用指導力の基準」の内容を網羅しつつ、さらに教育の情報化に必要な要素を取り入れた。
「研修指導者マニュアル」は、指導すべきポイントや留意点、参考となる資料など。
研修支援システム(http://www.t-ict.jp/)では、「ICT活用指導力規準表」や「研修テキスト」、研修の際に使用する「ワークシート」などの教材群をダウンロードできるほか、テキストの概要を解説したビデオ教材や音声教材を視聴できる。
受講者として研修支援システムに登録すれば、受講可能な研修を閲覧でき、現在のICT活用指導力や研修前後のICT活用指導力をチェックできる。
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説明会では「研修支援システム」の使い方を理解するため、参加者は講師の立場と受講者の立場の両方を疑似体験した。
講師メニューは非公開で、講師の登録が許可された人に対して、管理者からURLとパスワードが通知される。講師用のページにログインしたら、新規研修を作成。サイトの「研修テキスト」の中から、研修で使用する項目を選択。続いて、「研修基準作成」をクリックすると、選択した項目に関連する基準が自動的にリストアップされるので、研修名や研修の日時・場所などを入力。これらの情報を「公開する」と設定すれば登録完了で、受講者用のページに研修情報が表示されるようになり、受講者を募ることができる。その後は、公開した研修に何人登録しているか、受講者の研修がどれぐらい進んだかなど、研修状況の管理を行っていく。
次は、受講者側となりシステムを体験。受講生メニューは一般公開されており、登録すれば、ログインできる。受講者は、ICT活用指導力を自己診断して自分の弱点を把握し、その弱点を補うために有効な研修を「推奨」度合いを参考にしながら選択して受講する。研修を受けた後に確認テストや事後チェックを行うことで、どれぐらい力が付いたかを診断。自分の能力を認識し、足りない能力を研修により獲得していくことになる。
教育委員会の担当者は、「身についた指導力がチャートで見られるので分かりやすい。管理の手間がかからないので、EEAJのサーバーを共同運用する形で、システムの活用を検討していきたい」と感想を述べた。講師用管理システムについては、教育委員会などを対象に2月下旬から提供を予定。
【2010年2月6日号】