最新IT教育―実践、成果を報告―ICT|フィンランド教育 |
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日本教育工学協会(JAET)では、学校管理職がリーダーシップを持って学校全体でICTを活用し、よりよい学校運営を実現するための研修教材を開発。本年はその教材を活用した研修を実施している。今回実施したのは、研修を希望した柏崎市、松山市、東京都荒川区、北海道空知支庁、久留米市、熊本県、京都府、川越市。参加者は計約400名。1月12日に実施された久留米市の研修を取材した。講師は、山西潤一氏(JAET会長・富山大学教授)。
当日久留米市教育センターに集まったのは、久留米市の全小中高等学校、養護学校計66名の管理職ら。久留米市では補正予算を活用し、総額6億円をかけ、学校のICT教育環境を整備した。整備内容は、教員1人1台PC、電子黒板各校1台、教材提示機器各校2台、移動用PC各校10台など。
久留米市教育センターの井上正明所長は、研修の実施とその目的について「ここまで予算をかけて整備したのは、後にも先にも初めて。本来は現場の要望に合わせて整備することが理想だが、今回の整備はトップダウン。そのギャップを埋めるため、研修が必要と考えた。これから整備される教育環境を有効に活用し、授業と校務運営がよりよく変わることを期待している。来年度は周辺機器を中心に整備予定だが、本年度の活用頻度によって今後の整備の進捗が左右されるので、本研修をきっかけに久留米の教育を高めていくスタートとしたい」と話す。久留米市では来年度、外部支援人材のモデル授業も実施予定だ。
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研修の参加者からは、「ICT活用に及び腰であったが、事例の紹介を見て、これもICT活用なのか、という発見があった。難しく考えなくて良いのだとICT活用のハードルが低くなった」、「ICTは、誰もが簡単に使えるようにしなければならないということが分かった」、「実物投影機の有効性を再認識。簡単に使える機器利用が子どもの学力向上につながるということを確信した」、「情報主任に任せきりであったが、ICT活用は今後の学校運営のカギとなる。研修の参加で、戦略的という意味が分かった」、「課題の焦点化ができ、現状を向上させる見通しがついた。得意な人に任せきりではなく、全校職員のレベルアップを考え、研修を充実させたい」、「同じような課題を他校も抱えていることが分かった。近隣校での情報交換や共同研究に取り組みたい」、「多忙な中でも、研修時間を確保することが管理職の重要な仕事のひとつと認識した」といった声が聞かれた。
研修は、山西氏による教育の情報化に係る講議を聞いてから各自、自校が抱えるICT化の課題をピックアップ。その後KJ法に基づき、課題を付箋にひとつずつ記述する。4、5人のグループに分かれ、各校の課題を分類、その解決法を討議した。最後に、グループでの話し合いの結果を発表、全体で共有するという流れ。
あるグループは、「活用事例の共有、教員のICT活用能力、条件整備、校務分掌の整理、推進体制の5つ」を課題とし、課題解決の方法として「良さを認識すれば活用意欲も湧く。各学年に留まっていた活用事例の共有を図るため、授業公開し合う時間を年間計画に入れることで、教師の実践を共有しやすい体制作りを整える」ことで「教師自身が真剣にICTの活用を勉強していく」と発表。全グループの発表後、最終課題として、参加者は各校の課題の提示と解決方法を後日事務局にメールで送付する。
今後JAETでは、管理職のための戦略的ICT研修のための講師を育成し、本カリキュラムを活用した研修会の実施を全国的に拡げる考えだ。
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ICT活用とは、コンピュータに向かって難しいことに取り組むことではありません。その目的は、子どもたちの理解促進や学力向上、教員の多忙感の改善など、それぞれの学校が持つ課題の解決にあります。例えば、教材提示機器で子どものノートやプリントを映す。これも、授業改善を目的としたICT活用のひとつ。この活用法をひとつイメージできるだけで、ベテラン教員はぐっと授業イメージが湧きやすくなるはずです。
BECTA(英国教育工学通信協会)の調査(2003年)によると、ICT環境が整備された学校は管理職が積極的であるほど、子どもたちの学力向上につながるという結果が出ています。これは、環境を整備するだけでは効果が得られるわけではない、ということ。管理職は、学校課題にICTを如何に活用できるのかを管理職の立場から考えていくことが必要。これは、個々の教員のICTスキルの向上はもとより、教職員が一丸となって学校課題の解決に組織的に取り組んでいくかという、組織マネージメントの問題ということです。
ICTスキルが向上すれば、教育経験豊富な教員ほど、ICTの可能性に気付きます。教科学習のために授業改善を図ること、情報活用の実践力を育んだり情報社会に参画する態度を育成すること、ネットワーク技術で校務を軽減したり、互いの情報を共有することで質の向上を図ること等、情報化には様々な目的がありますが、実現したいビジョンを管理職が持つことが、最初の一歩。ビジョンを持ったら努力目標を持つ。目標を持ったら、必ず実行していく。その繰り返しが必要です。
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@管理職としてのビジョンを持ち、ゴールイメージを明確にする。校内の教職員で目的や意義を共有する。それを達成するために問題点を解決するまでの期間を設定する。
A実現のための組織作り。ビジョン共有のための支援体制と役割を明確にする。
B経費の担保。設備や運営のための予算を如何に確保するか、可能な戦略を考える。
校内研修を効率的に進めることができるコンテンツ。昨年度の委託事業で制作後、全国の校長会や都道府県・中核都市教育委員会計320か所に1500本を配布済。残部の希望はJAET(MAIL:jaet-office@japet.jp)まで。
内容/「総論―情報化時代の学校経営」「各論A―わかる授業のためのICT活用」「各論B―児童・生徒のICT活用と情報モラル教育」「各論C―校務の情報化と情報セキュリティ」「各論D―保護者・地域への広報・説明責任」
【2010年2月6日号】