最新IT教育―実践、成果を報告― | ICT|フィンランド教育 |
現在、学校を長期欠席(年間30日以上)している児童・生徒は全国で約20万人。欠席理由として特に多いのが「病気」(約4万6000人)だ。病気による長期欠席児童生徒への支援体制は十分とは言えず、特に教育への対応が遅れている。そこで「ICTの活用による長期欠席の児童生徒に対するプロジェクト」では、支援モデル構築を提案すべく大阪市と横浜市の両教育委員会や学校、医師、保護者、ICTをサポートする企業も参画し実証プロジェクトをスタートした。事前登録されたメンバーだけが閲覧し書き込めるSNS、病院内でも工事を行わず利用できる無線公衆網の活用、ビデオ通話ができるカメラと無料アプリケーション、PC用学習ソフトウェア、ストレージなどのハードウェアなどのインフラを構築。日常的な意見交換や情報共有ができる環境により、前籍校への復帰を控えた子どもがクラスの友だちや担任とTV会議で事前交流したところ、復帰への不安が解消し退院後すぐに学校への復帰が容易になった。
授業モデルや教材コンテンツの蓄積を進め、ICT機器や関わる人間が変わっても、継続できるモデルとしたい考えだ。
パソコンキッズでは、小型で持ち運び可能なモバイル系情報機器を、児童生徒一人ひとりに持たせる学習環境による「一斉授業下における個別指導」を提案。モバイル機器としてはニンテンドーDSとiPod touchを使用した学習効果を研究した。
DSは2画面機能なため、1画面で情報を見ながら、他画面で回答することができ、個別学習を実現する。2009年、全国の小中高協力校21校で560台のDSと40台のiPod touchを配布し2つのモバイル機器を用いて朝学習、一斉授業、総合学習、テストなどを実践したところ、学習時の集中力が極めて高く、テスト・計算・漢字・英単語において得点が向上した。朝学習での活用により、その日の学習の構えができるなどの好影響も出た。
紙とモバイル機器の学習効果の違いについても脳科学の見地から測定、後者は前者に比べ脳血流が増大しており、短時間の使用が効果的である、との結果も出た。
今後は、ヘルプデスクや導入マニュアルを設置し、モバイル学習を実践する学校などに得られた知見を公開、広く役立てる。
学校現場で見られるICT活用阻害要因の多くが「活用の仕方が分からない」「設置・準備の負担が大きい」ということから、日本視聴覚教育協会は、ICT環境の活用場面や活用意図・効果などを検討し、普通教室で日常的に活用できるICT機器を提示することを目的に、それらを体系化した「デジタル指導案」の開発・蓄積・普及に着手した。
具体的には、普通教室等に設置する大型提示装置を含むICT機器の構成に関して、モデル機器を3パターン設定。ICT機器や映像機器、実物投影機をワンタッチオペレーションで操作できるコントローラを準備し、全国の調査協力校小中校10校に設置した。その検証を通じ、ICTのモデル環境をもとにした「デジタル指導案」を作成した。
パソコンキッズでは、今後も日本学校視聴覚教育連盟加盟団体によるICT活用モデルパターンの開発・データベース追加を進め、さらなる「デジタル指導案」データベースの充実化をめざす考えだ。指導案は「視聴覚機器・教材ガイドブック2011」にまとめられ、各教育委員会へ配布するなどの広報活動も行う。
【2010年4月3日号】