最新IT教育―実践、成果を報告― | ICT|フィンランド教育 |
日立製作所と東京大学先端科学技術研究センターは、手書きの文字を電子化する授業支援システム「デジタルペン」を用い、論理的思考を展開できる教育法を検証した。
デジタルペンは、生徒が専用の用紙に書いた内容が教師のPC上に自動的に集約されることから、個々の児童・生徒の学習進捗度をPC上で一見して確認することができる。クラス全員の思考状況を瞬時に把握できるため、授業展開が効率化できる。教師はスクリーンに瞬時にその内容を提示することもできるため、お互いの思考の共有もはかりやすい。
小・中学あわせ14校、10教科、4886名で検証したところ、視覚的に情報共有した群はしなかった群と比べると、説得性、客観性、記述の丁寧さ、などの評価項目で向上しており、相互観察する活動が論理的思考の育成に効果があることが確認された。実践事例は、東大先端研のWebにて公開。Webを通じたコミュニティを形成し、ノウハウや機材の相互活用も視野に入れていく。今後はさらに既存インフラとの親和性を高め、さらなる普及を目指す。
日本放送教育協会は、小学校の理科、社会、総合的な学習の時間の3教科で、10校の実践をもとに学習の流れを把握しやすいテレビ番組、個別の興味関心に応じた教育が可能なデジタル教材、効果的な情報の提示と発表の充実につながるICT利用などを網羅、32の単元での連動型授業を開発した。
学力テストと合わせて検証すると、学力・言語力・情報活用能力の育成に効果があることが分かった。開発した連動型授業の一例はリーフレットにして全国に配布、web上で公開する。
同協会が行う教員向け研修事業「先生のための教え方教室」「学生のための教え方教室」などでも紹介するなど、各学校のICT環境設備や地上デジタル放送の完全実施などを受け、変化に応じたテレビ番組とデジタル教材の充実につとめる考えだ。
千歳科学技術大学は、小・中・高・大連携に基づく縦方向の理数系一貫教育と、理科・数学(算数)・総合学習等の科目横断型の連携による横方向の新たな理数教育実現を目指し、eラーニングの調査研究を行った。
注力したのは教材製作だ。大学と協力校が作成した理科向けの教材「初等中等教育機関向け数学・算数eラーニング教材」を作成し、教科学習向けの基盤教材と実験・総合学習等の発展教材とを関連づける仕組みを整備、理数系全般を網羅する質の高いWeb教材群の活用が可能になった。
新たな取り組み事例となる縦方向の理数系教育の推進では、教育委員会で地域に展開している子ども向け家庭学習サービス(eカレッジ)を拡大、地域コミュニティでの学区や教育機関の枠を越えた遠隔での学習指導を実践。在宅での自律学習が促進されるようになった。今後は、個人向けのダウンロードサービスや、特定非営利団体を通じた民間への許諾、高大連携型サービスの展開などの充実を目指す。
同協議会は児童・生徒が課題に対して必要な情報を収集、取捨選択、分析・再構成し、成果を発信する能力について、評価・検証のための基準と評価の方式(e‐testing)を開発。全国の小学校10校で検証し、情報モラル、プレゼンテーション能力の育成、情報活用能力などをテーマに取り上げ、評価の方法と具体的な目標を達成レベルで示した。
今後も特定非営利法人として「e‐testingシステム」を継続的に運用・維持し、児童・生徒のみならず広く一般にも使えるよう、新しい試験システムの普及も視野に入れていく。
【2010年4月3日号】