最新IT教育―実践、成果を報告― | ICT|フィンランド教育 |
中野区立江古田小学校
中野区教育委員会(東京都)は平成21年度より、すべての区立小学校に電子黒板、プロジェクター、実物投影機を各1台、PC6台、教室内を無線lan環境にする無線LANアクセスポイントを整備した。電子黒板システムは持ち運びできる「mimio」を導入。ICT教育支援員は各校に1人ずつ派遣、授業中のICT活用の補助に即対応できるようサポートしている。中野区のICT環境は各校で実際にどう活かされているのか。中野区立江古田小学校(野呂文広校長)を取材した。
漢字学習の振り返りはゲーム形式で |
4年1組(上野徹教諭担任)には、電子黒板「mimio」が設置されており、漢字練習に取り組んでいる。今日は班対抗「漢字クイズ」による漢字の復習だ。
クイズに出す漢字を班ごとに決め、プロジェクターで投影、電子黒板のスポットライト機能で一部だけを見えるようにする。何の漢字か分かった児童は、二字熟語または訓読みで「祝日の”祝”です」と解答、上野教諭の「正解。2班に1ポイント」との声に児童は喝采してハイタッチ。クイズを出題する児童、答える児童、双方とも楽しそうだ。漢字は10問出題され、優勝グループが決定した。
電子黒板の「ブラインド機能」で集中力を高める |
上野教諭は、大きく漢字一文字を映し出し、ペンツールの太い赤ペンを使い、漢字の1画を○で囲う。「ここは何画目?」
児童はノートに書きながら数える。正解発表後は、皆で鉛筆を持ち、正確な筆順で宙に文字を書いていった。
次に上野教諭はブラインド機能で少しずつ、今日学んだ漢字の一部を見せる。
「今日はどんな漢字を問題に出したのか、わかる人?」
児童らは、「祝」「笑」「希」などの漢字を見て、「気持ちが明るくなる漢字」と答えた。次にブラインドから現れたのは「成」「必」「飛」の3字。「これは筆順要注意の漢字だよ」と示し、「ここから苦手な2文字を選び、漢字ノートに練習しよう」と、定着に結び付けた。
今日の授業について上野教諭は、「4年生で学ぶ漢字は200字にものぼる。ただ練習し続けるだけではなく、楽しみながら定着を図りたかった。そこで、テレビのクイズ番組をヒントに、電子黒板機能を使ったクイズ形式にすることでゲーム性を加味した」と語る。電子黒板については、「ブラインド機能やスポットライト機能などを適宜使うことで、子どもたちの集中力を増すことができる。これまで前に出たがらなかった児童が積極的になり、挙手率が高くなった」と話す。
mimio Padで電子黒板を操作 |
5年2組(菅家美由希教諭担任)では、電子黒板をワイヤレスで遠隔操作できるタブレット「mimioPad」とデジタルコンテンツ「デジタル掛図」(東京書籍)を活用し、「日本と周辺国」をテーマに3〜4人でのグループ学習を展開した。
菅家教諭が「mimioPad」でデジタル掛図をクリックすると、スピーカーから国歌が流れた。聞きなれない曲にとまどう児童は、教諭が電子黒板にスポットライト機能で示す国旗を見て、「ロシア」と元気な声を響かせる。菅家教諭は、ロシア連邦共和国がどこにあるのかを地球儀で確認させた。電子黒板には日本を中心にした地図と国旗一覧が投影され、国旗にカーソルを乗せると、その国の色が変わる。「mimioPad」を使うことで、教室を歩きながら画面を操作、授業を展開していくことができる。
次は「日本にある世界遺産」だ。児童らは地図帳から日本にある世界遺産を8分間で探す。電子黒板のタイマー機能で時間を設定、タイムアウトをアラーム音が知らせた。菅谷教諭は電子黒板に地図を表示。世界遺産のあるポイントでは「知床国立公園」などの名称が表示され、次々と14件ある日本の世界遺産を確認していった。
「社会科では、見せたい資料が大量にある。電子黒板とデジタルコンテンツを併用することで、次々と示すことができ、地図で位置を確認することもできる。mimioPadを使えば、児童が自分の席から発表することができる。今後は双方向な使用法も取り入れていきたい」
地図と地球儀で学習内容を定着 |
同校のICT環境の推進役を務める木田明男副校長は電子黒板について、「ICT教育支援員との共同作業のなかで活発な意見交換があり、様々な可能性が広がっている」と述べる。今後は、全校集会などで歌う際大画面に歌詞を投影したり、卒業証書授与の際、証書を受け取る子どもたちの表情を保護者にも見えるよう大画面に投影して見せたりすることなどを計画している。
体育でのICT活用も進めており、模範演技を大画面で見て練習する、児童が跳び箱を飛ぶ瞬間を撮影し、タイムラグ投影で自分の跳ぶ姿を見ながら指導するなど、新たな可能性を模索する考えだ。体育のICT活用授業は、10月に公開予定。
アジア太平洋地域担当 セールスディレクター ジェームス・シャンレイ氏 |
現在世界50か国以上で使用されており、26言語に対応している電子黒板システムmimio。アジア太平洋、中南米と南米地域を担当するジェームス・シャンレイ氏に、電子黒板の世界的動向と、日本への取り組みを聞いた。
mimioは米国を始め、カナダ、ロシア、トルコ、ハンガリー、ニュージーランド、インド、韓国などで、幼稚園から小・中・高等学校に導入されています。大学でも使用頻度は高くなりつつあり、大教室での授業では大画面を操作できるmimioPadが最適だという声も多くいただいています。米国では3年前から各クラスに1台というハイペースで導入されており、教育分野におけるICT化は、世界的に見ても今後ますます発展していく傾向にあります。
世界的動向と比較すると日本は、世界でも有数なテクノロジー国家であり、日常生活にもitが浸透しているにもかかわらず、教育分野におけるICT化が他国に比べ、遅れているようです。だからこそ、軽量でローコスト、持ち運びによる使用も固定使用も両方可能なmimioには、大きなニーズがあると考えています。最大120インチまで対応できるので、普段は授業で、必要なときには大教室で活用するなど、さまざまなニーズに対応できます。
さらに日本仕様として日本のソフト開発企業プラスソフトが弊社の製品に合わせた手書きソフト「PenPlus」を開発しており、一度使うと手放せないとの声も日本人教員から上がっています。
黒板サイズから最大120インチまで投影できる |
今現実に学校現場で困っている教員の手助けをし、授業をより円滑に進めるためのサポートをしていくことが弊社の使命。今後は日本のmimioユーザー教員たちの情報を収集、意見交換の場を設置し、実践的な研修も充実させ、日本語によるオンライン指導などの支援体制も強化していきたいと考えています。日本ではデジタルテレビが大量に導入されましたが、mimioによる電子黒板化も可能ですし、mimioPadからデジタルテレビを操作することもできます。
7月に東京ビッグサイトで開催される「教育ITソリューションEXPO EDIX」にも出展を予定しており、新製品も初披露する予定です。詳細はまだ発表できませんが、世界的にも斬新である新製品と自負しています。
【2010年4月3日号】