最新IT教育―実践、成果を報告―ICT|フィンランド教育 |
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実践学園(東京都・眞橋敏夫校長)では、2007年4月より中学・高校の全教室に電子情報ボード「アクティブボード」を導入、その後3年目を経過した。電子情報ボードを全教室に配備することで、この3年間にどんな授業変革がもたらされたのか。その変革は継続発展的なものなのか。同学園の鵜飼公則教諭に3年間を経過した電子情報ボードの活用状況や効果、導入時に配慮すべき点などを聞いた。
同校の教室の真ん中にあるのは大型サイズの電子情報ボード「アクティブボード」だ。黒板はすべて取り払い、開閉式ホワイトボードを全教室に設置。ホワイトボードは自由に左右に動かすことができる。様々な種類の電子情報ボードがあるが、「アクティブボード」導入の決め手について鵜飼教諭は「生徒が多少ぶつかっても壊れず、大変頑丈。安心して固定設置できる。チョーク感覚で文字が書き込める点も教員にとって大きなメリット」と述べる。
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「電子情報ボードの導入効果は顕著だった。授業研究が進み、子どもの集中力も上がった。学力向上や進学率上昇、教員の質も向上するなど顕著な変化が表れており、全国から学校見学の申し込みが届く」と鵜飼教諭は話す。
「本校の授業に慣れた生徒が他校の授業を見て、『とてもゆっくり授業が進んでいる』と驚いていたほど。これは、教員も生徒も、電子情報ボードの導入により、ごく自然に情報量の多い授業に慣れ、授業の密度が上がったと考えられる」
理科の授業では学校のサーバー上にダウンロードした「理科ネットワーク教材」などのインターネットコンテンツを投影、家庭科では教材提示機器で手元の裁縫の様子を拡大表示するなど、タイムリーで見やすい授業を各教室で展開している。
最初は不慣れだった教員も、今ではごく自然に他の機器やコンテンツと連動させ、電子情報ボードの新しい使い方を自発的に模索しているという。
鵜飼教諭が最も喜ばしい変化として指摘したのが、教材の共有化だ。
電子情報ボードの導入当初は個々の教員が別々に作成・使用していた教材・資料だが、次第に共有化が進み、教材が年々ブラッシュアップ。資産の活用が進んでおり、それが授業展開に反映されている。
「素晴らしい授業をしていると思ったら、昨年度作成の教材に手を加えたものだった。教材共有をしやすい環境であることのメリットは大変大きい」という。
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教員のほぼ全員がスムーズに使用するまで2年を要したという電子情報ボードだが、導入当初は電源の入れ忘れなど初歩的なミスもあり、専任教諭2名が常時待機、トラブルに対応した。
また、生徒の健康面への配慮も検討。1日の使用時間の制限、カーテンの遮光度の調節、席替え、教室の窓ガラスを曇りガラスと透明の物を合わせるなど、よりよい環境づくりのために工夫を重ねた。
鵜飼教諭は、導入のポイントを「生徒・教員誰でもがすぐに簡単に使える環境であること、教員から不安を取り除くバックアップ体制が絶対に必要」と話す。
今後同校では、家庭のネット上でも学校の教材データを共有し、予習復習に使用できる環境づくりを構想している。著作権の問題がクリアできればすぐに対応したい考えだ。
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【2010年3月6日号】