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最新IT教育―実践、成果を報告―ICTフィンランド教育
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「拡大投影」で授業の密度を上げる
 学力向上に寄与するICT活用の検証が進んでいる。PC、電子黒板、プロジェクターに並び、授業を支える名脇役として注目を集めるのが実物投影機だ。教育家庭新聞マルチメディア3月号では、日本アバーメディア社の実物投影機AVerVision「CP―Light」の教員モニターを募集した。現在30名の教員がモニターしており、本号では小・中・高校における3つの活用事例を報告する。


皆が同じ卵を見ながら観察できるため、学習のポイントなど全員に等しく伝えたい内容が徹底できる

和歌山市立四箇郷小学校

 和歌山市立四箇郷小学校の岩崎朝蔵教諭は、理科「メダカの卵の成長の観察」(動物の誕生)の授業で毎日「CP-Light」を使い、クラス全体で観察日誌づくりに取り組んだ。

 メダカの卵が孵化していく様子を観察するため、顕微鏡に「CP-Light」のカメラヘッドを限界まで近づけると、黒板には水中で日々成長する卵の映像が鮮明に映し出された。

 「顕微鏡を使ってメダカの卵を観察することはグループ学習の中でも行えますが、一人ひとりが毎日卵の成長を観察するには、顕微鏡の数も時間も足りません。『CP-Light』を活用することで、毎日の細かな変化を全員で一斉に確認したり、キャプチャしておいた成長の記録を呼び出して変化の過程を順番に振り返ったりするなど、顕微鏡だけでは実現できない授業ができました。顕微鏡を使ったグループ観察の前後に、実物の卵を投影して学習のポイントを解説できたのも効果的でした」

算数や英語も
わかりやすく


胚体が変化し、頭部には目が、胸部には体節などが形成される様子が鮮明に確認できる

 教科書や資料を使った説明では集中できなかったり、グループ学習には消極的になったりする児童も、大きく映し出された1つの卵を見ながら話し合うようになると、視線が定まり、積極的に活動に参加できるようになったという。

 算数の授業「直線の交わり方を調べよう」では、垂直や平行な直線、合同な図形の書き方など作図の学習場面で活用。指導用の大きなコンパスは、教師が作図を演示する際には問題ないが、皆の前で児童が自分の作図方法を発表するには使い勝手に難がある。

 「児童同士で学習を進めるには、普段から使っている紙・鉛筆・定規などで簡単に提示できる環境を提供したい。慣れていることもあり、自分なりの作図方法を積極的に発表する児童が増えました。児童が黒板で大きな道具を使って示すことも行っていましたが、実物投影機を使う方がよりわかりやすかったようです」

 外国語活動では、自作のフラッシュカードを「CP-Light」を通して拡大投影。机の上においてあるフラッシュカードを部分的に隠すことで、授業が即興の単語当てクイズになる。大きく映し出すことができるので、小さなカードでも教室後方の児童からもよく見える。児童の集中力も上がり授業も盛り上がったという。

他クラスの先生も
使い始めるように

 日々の授業で「CP-Light」を使っていく中で児童や周囲の教員にも変化が生まれてきた。


和歌山市立四箇郷小学校
岩崎朝蔵教諭

 「教科書や資料を使って説明しても、なかなか授業に集中できなかった児童が黒板に示された画像や資料には興味を示し、積極的に参加するようになりました。授業中に提示したいときにはいつでも簡単な準備で素早く提示することができて大変便利です。児童の視線を集中させ、学習意欲を高めるのにも効果がありました。そうした様子を見て別の学級の先生も効果を感じたようで、今では学年で活用しています」

◇    ◇

 ICT活用授業の手始めに利用しやすいモデルとして開発された「CP-Light」。教員が授業で直感的に利用できるよう「拡大・縮小機能」は円盤を指で回して調整できるジョグダイヤルを採用し、オートフォーカス、キャプチャ(内蔵メモリー最大80枚)、LEDライトなど基本機能も搭載。低価格ながら、持ち運びしやすいコンパクトなつくりで320万画素・最大16倍ズームと高画質を実現した。

東京都立東大和高校


グースネックの特性を活かせば、キーボードの真上から撮影できる

 「これまで使っていたものはピントの合う範囲が狭かったが、『CP-Light』は遠いところから近くまで、ピントが合う。カメラアングルの自由度が高いので、従来品にない映像が撮れました。キーボードを真上から映せたのには、驚きました」

 東京都立東大和高校の佐藤義弘教諭は、情報科の授業で「CP-Light」を活用している。

 「情報のデジタル化」の単元では、PC室で「光の三原色」の説明に利用した。「CP-Light」の画像を生徒用の共有モニターに配信し、教師用の液晶ディスプレイに「CP-Light」のカメラヘッドを5p程度の距離に近づける。ジョグダイヤルを操作してダイヤル操作でズーム倍率を上げていくと、白い画面が映し出されていた共有モニターが少しずつ様子を変えていく。

 「白色に見える状態からそのままズームしていくと、次第にRGB(赤・緑・青)の点が並んでいることがわかってきます。想像よりも拡大できるため意外性があり、生徒は驚いて声を上げていました。言葉で説明するよりも、よりリアルに実感できる授業になりました」


光の三原色が目視でハッキリ確認できる

 「情報活用の基礎」のタッチタイピングのホームポジションでは、柔軟な撮影角度を支えるグースネックを調整して教師のキーボードの真上にカメラヘッドを設定。生徒が自らの指先を見る角度と同じ角度で、教師の手元を提示しながら実際のキーボード操作を見せた。

 

「これまでは、言葉で説明したり、キーボードを印刷した用紙を黒板に貼って指を置いて説明していましたが、『CP-Light』を使うことでホームポジションへの指の戻りや、手首の位置が動かないことを視覚的に伝えられました。本来なら近くにいる生徒にしか見えない指の動きも全員に等しく見せることができるのは便利。指や手の甲まで映すことで、生徒も手の位置をより理解しやすくなったようです」


東京都立東大和高校
佐藤義弘教諭

◇   ◇

 佐藤教諭は、理解を深める活用だけでなく、普段の授業に変化をつけるツールとしても「CP-Light」を活用している。教科書に書き込む内容をキャプチャして振り返りに使ったり、事前に解答を付箋に書いて教科書や問題集に貼り付けキャプチャしておけば、答え合わせや即席のクイズにもなる。

 「教科書をそのまま映せば教材準備の手間を減らせるうえ、説明箇所を明示できるのは何よりも便利。コンパクトな設計なので設置場所が少なくて済むのも嬉しいですね。価格も比較的安く、場所も取らずに収納できるので持ち運びも簡単。特別なことをしなくても、指示や説明が伝わりやすくなりました」

岩見沢市立東光中学校


技術科でコンパスの利用場面を大型モニターで拡大提示

 北海道岩見沢市立東光中学校では、紺谷正樹教諭が技術科の授業で毎時間のように利用している。製図指導の単元では、「CP-Light」を利用して37型TVに模範演示を映し出して授業を実践した。

 これまでの製図指導では、黒板・方眼黒板・斜眼黒板に教材用の大型三角定規を使うことが一般的だ。しかし、黒板に三角定規を押さえながらの作業には、定規が黒板の上を思い通りに滑らないことも多い。そこで、紺谷教諭はプレゼンテーションソフトのアニメーション機能を応用し、製図の一連の線を引くソフトを自作して指導に使うなどして乗り切っていた。

 「実物投影機を使えば、手元の作業を直接写すことができるうえ、黒板では表現できないズームができて便利。生徒も、ズームした場面は大事な場面だと考え、より集中していたようです。自作ソフトの活用は、黒板に大型三角定規を使うより効果がありましたが、『CP-Light』を使った方がはるかに伝わりやすく簡単でした。やはり生徒と同じ製図用紙、道具を使うことが子どもの理解を促進させることができるようです」


黒板に拡大提示することで同じ素材を全員で共有できる

 ズーム機能を使い分けたり、フリーズ機能を用いたりすることで授業にもメリハリが生まれ、生徒たちの反応も良い。また、視覚的に作業要領を理解できるため、作業に関する細かな質問が減るなど、以前に比べ手順を理解できずに困っている生徒が減ったという。

 「PCはもちろんのこと、TVにも接続できるのが素晴らしい。しかも軽量で持ち運びの際にハンドバッグのような形状になるので移動も楽。ICT機器の代名詞のようなPCやプロジェクターは、以前に比べ軽量かつ安価になったとはいえ、未だに学校で何台も一度に買える金額ではありません。その点『CP-Light』はプロジェクター1台分で3〜4台は買える点が嬉しいですね」

【2009年10月10日号】


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