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生涯学習コンテンツ共有の枠組みを探る
放送大学 GLOBE国際セミナー報告
  さる10月15日、放送大学(OUJ)ICT活用・遠隔教育センターは、幕張メッセ・国際会議場において、OUJ―GLOBE国際セミナー2009「高品質な生涯学習コンテンツの共有流通を促進する新たな枠組み」を開催した。


各国の先進事例、経験に学ぶ

 GLOBE(グローブ)は、優れた学習コンテンツを地球規模で共有再利用するために結成された国際コンソーシアムで、学習コンテンツの開発流通に関わる各国の中核的機関が12機関参加している。昨今、多くの大学等がその優れたコンテンツを人類の共通資産として公開する動きが顕著になっている。こうしたOER(開かれた学習資源)の効率的な検索や利活用の推進にむけて、結成5周年を迎えたGLOBEの存在意義はますます高まっている。

 今年のセミナーでは、高等教育と生涯学習におけるコンテンツ共有再利用、ICTの教育利用に焦点をあて、日本においてさらなる普及をもたらすには何が必要か、各国の先進事例や経験をもとに意見交換をおこなった。

 基調講演者として、米国EDUCAUSE(エデュコース)の会長兼CEOのダイアナ・オブリンガー博士が、北米の大学におけるICT活用の位置づけについて、その現状と将来ビジョンを説明した。EDUCAUSEは、2300の大学・高等教育機関・企業会員を擁する、北米の高等教育分野では最大級の非営利団体。ICTを活用した教育・組織改革を目的とし、大学の情報担当副学長、CIO、ICT関連センターの長やスタッフ、ファカルティ・ディベロップメント(FD)に関心をもつ教職員が参加する。


ダイアナ博士

北米では、こうした機関をこえたコミュニティがICT利用による大学改革をすすめる原動力の1つになっている。日本の現状と比較したとき決定的な差となっているのが、学内教育支援センターの整備とそのスタッフの層の厚さである。後塵を拝する日本としては、モノの整備とちがって、ヒトづくりのシステムは一朝一夕にはならない点がツライところである。

 もうひとりの基調講演者は、英国公開大学(オープンユニバーシティ)のジョエル・グリーンバーグ博士であった。同大学は、英国における生涯学習推進の中核機関として位置づけられ、通学制では履修困難な人々(有職者、障害者、乳幼児をかかえた主婦、へき地や国外の学習者など)にも、高等教育の門戸をひらく使命が与えられている。英国公開大学では、その優れた学習コンテンツを、OERとして無償で公開し、「Open Learn」と名付けているほか、バーチャル(仮想的)な学習環境の整備にも積極的で、オンライン上でさまざまな交流や共同学習が実現できる工夫をこらしている。

 日本からは、先進的な学習コンテンツ共有への試みとして、国際ボランティア学会の取り組みが紹介された。提唱者の学習院大学・川嶋辰彦教授、同学会会長の内海成治・お茶の水女子大学教授ほかがその事例を紹介した(ポータルサイトは近日公開予定)。こうした学会コミュニティ主導の動きも、質の高いコンテンツの蓄積に有効と考えられる。

 GLOBEコンソーシアムでは、同セミナーに先立つ2日間、各機関からの代表を集め、評議会を開催した。そこでは、新たな機関の加入が承認され、時代の潮流に沿った事業計画が議論された。多元化する世界の中で、国境をこえた知識や教育コンテンツの共有をどう実現するか、忍耐強い国際協調が必要である。(取材協力=同センター・国際連携部門長、山田恒夫教授)

【2009年11月7日号】


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