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理科教育は日本の「土台」
40年ぶりの‘追い風’いかして
現在日本教科教育学会名誉会長でもある武村氏は「チャンスは魚の群れと同じ。来たときに捕まえる必要がある。理科教育へのこれだけの追い風は40年ぶり。これをぜひ生かしてほしい」と述べる。理科教育設備整備には各校につき約100万円の予算がついているが、これは、申請しなければ、通らない。各校でどんな実験が必要で、どんな器具が必要かリストアップ、それを教育委員会に申請していく流れが必要だ。なお大量発注の場合で執行が遅れた場合、今回の補正予算については2年間の執行期間措置がとられている。
学力調査に実験・観察を
「日本は、天然資源に恵まれない。原材料を輸入し、工業製品を輸出することで海外諸国と相互依存関係を深めてきた。この原則は変更できない。これまでは、人的な想像力と知識で叡智を働かせ、その結晶である科学技術を発展させてきていた。それを支えてきたのは、理科好きな子どもを育ててきたからこそ。今、その土台がなくなってきている」
平成19年から再開された全国学力調査は、現在日本では国語と算数だけ。それについても「理科や実験観察を入れるべき。他国にはそういう例が多い」と話す。
「児童生徒の理科離れは、高校での理科離れ、ひいては大学の理工系離れへとつながっていく。伝統ある大学でも理工系で定員割れする学科ができている状態だ。その解決には、小中学校での理科教育が非常に重要」
アンケート調査によると、小学生の子どもたちは、「実験が好き」だ。しかし、「大学で理科を専攻した小学校教師は14%に過ぎず、理科の不得意な小学校教師は約86%にも上る」という点の影響について、小学校の理科教育を懸念する。動物観察、植物観察、電気や月、星、地学―小学校理科の範囲は広範に渡る。「小学校では全科目を1人の教員が教える。これでは負担が大きい」
この非常事態に対応すべく、文部科学省では、新学習指導要領で理科授業時間を150時間の大幅増とし、教育内容も増やした。新学習指導要領での新しい内容は、小学校では10項目以上、中学校では15項目以上ある。同時に小学校理科支援員配置事業を充実、理科教員を増員する。
「理科振興対応教材費」の新設で、設備費を100%国負担へ
今後の理科教育に関する施策として、「大学の理学部や工学部、生物生産学部の学生に、小学校理科教育教師の免許証を与える制度の新設」や、理科振興法補助制度の1/2の地方負担はまだまだ厳しい現状から、新たに「理科振興対応教材費」を設け、設備費100%の実質国負担とすることを訴えた。
また、諸外国の動向を踏まえ、理科を「主要教科」と位置づけ、かつ理科の学力調査に実験観察を入れること、小学校理科支援員等配置事業を中学年にも拡大、小学校理科の支援事業の恒常化を進めること、中学校と高等学校に「実験助手」を置くこと、空き教室を利用し、10校に1校程度の割合で「理科教育教員支援研修センター」を設置することなどを提案する。
「論理力だけではなく、表現力、発想力、話し合い能力、創造的態度を高める物づくり活動が必要。人間の脳は、ある行動を取り、それに少し抵抗がある状態から頑張って成功することで、その達成感が実感され、また挑戦したくなる。負荷のある行動を繰り返したくなる。そういう場面をたくさん設定していくこと、それが教育だ」
【2009年08月08日号】