子ども達の頭にあるテーマは、『きつねの窓』は主人公の『ぼく』に幸せな気持ちを運んでくれたか否か。これまで幸せだと思っている児童と、不幸せだと思っている児童で分けてグループを作り、ICTを活用しながら同じ意見を練り上げる作業を重ねてきた。この日の授業は、グループの意見を発表して反対グループの意見を聞きながら自分の考えを練り上げていく授業で、同テーマの最後のまとめにあたる。
授業者の関口佳美教諭は、「6年生はもうすぐ中学校へ進学する。その前に読書の読み方考えてもらいたい」と授業に込めた想いを説明。登場人物の心情について優れた表現に着目してその効果を考えたり、場面の様子を想像しながら読み進めるなど、文章表現から多くのことを感じて自分なりに解釈を加えながら深く読みをする授業を提案し、そのためのツールとして「バタフライ・マップ法」による学習を発表した。
バタフライ・マップ法事例 右上から「事実」「説明」「問題」「解決」 と分けて記している |
子ども達はこれまでに、@本文を読んだ後でテーマに対する自分の立場を定め、紙のバタフライ・マップに根拠と理由を書き込み、Aグループを作り、グループ内でお互いのバタフライ・マップを見比べて互いの意見を比べて、納得するものへ厳選してきた。
ICTが取り入れられるのは、この必要な意見を厳選する場面だ。利用したのは学校教育用グループウェア「スタディノート」(シャープシステム・プロダクト株式会社)。関口教諭は、「スタディノート」のポスター機能を活用して、各グループに1つのバタフライ・マップを作成させた。同製品はネットワーク仕掛けのノートブックのようなもので、自分の意見や考えをマルチメディアを利用しながらノートに書き込む感覚で1つのデータにまとめ、共有できるグループウェア。今回は児童の考えを落とし込むノートデータをバタフライ・マップ形式にして授業に取り入れている。
修正箇所を問題の羽のところに 納得した意見をメモと言う形で書き添えていく |
信州大学教育学部 藤森裕治教授 |
また、授業を見た教員からは「紙を使った実践とICTを使ったものとで大きく違った。紙を使った場合は、自分の考えをまとめるのには良いが、グループでマップを作成しようとすると自分のマップの付箋を付け替えて話し合わなければならない。そうなると手元の自分のマップには何も残らなくなり、あとで自分の考えを整理する時にグループの話し合いで使った付箋を外して戻して考えないといけなくなる。スタディノートを使ったマップを使うことで、自分の考えをいつでも見ることができるし、友達やグループの考えをいつでもチェックできるので思考を深めるのに役立つ」と、ICT活用の効果について感想が寄せられた。
【2009年04月04日号】