学校現場でよく混乱を目にするのだが、モラルとルールは違う。ACCSが説明する情報モラルには、著作権、プライバシー、ネチケット、セキュリティなどを含めて説明しているからわかりにくいかも知れないが、このうち、著作権は法律、ルールである。
ただ、著作権を守ろうとする気持ち自体はモラルである。モラル=道徳規範であるから、著作権を無視したり勝手な解釈をすることは思想・信条の自由の範囲では許される。しかし、心の中で思うだけではなく、実際に侵害行為を働いてしまったら、ペナルティ(罰)が課せられる。これがルール=法である。
著作権は「ルール」
著作権法のペナルティは、かつては「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」の刑事罰だったが、3年前に一度引き上げられて、さらに今年7月からは「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科」となった。
法は、どこかで勝手に作られているものではない。著作権法に限らず法律は、私たち国民の代表が民主主義の原則の則って国会で決議して決められている。自分には関係ないと侵害行為をすることは許されない。間接的に自分たちが決めたルールなのだ。
教諭逮捕を受け要請文
今回、ルールのことを書いているのには理由がある。今年5月、カーナビ用ソフトの海賊版をインターネットオークションで販売していたとして新潟県上越市の小学校教諭が逮捕されたのである。今回の事件を受け、ACCSは、北陸4県の小中学校(計1758校)と全国の教育委員会(計2110カ所)に対して、教員の著作権法遵守を呼び掛ける要請文を送った。学校では、小説や音楽、ソフトウェアなど他人の著作物を利用する機会が多くある。授業目的であればコピーできる場合もあるが、授業以外や校外では違法になることがある。
要請文では、作品創作の素晴らしさや著作物の利用方法を生徒に指導する立場にある先生方に、著作権について一層の深い知識や、学校でコンプライアンス(法令遵守)の意識を持つよう呼び掛けている。
心に訴えるモラル
著作権法は厳罰化された一方、視覚障がい者のために録音された著作物の公衆送信が認められるなど、時代に合わせて常にルールの変更やシステムの改革が行われている。ACCSはこれらの最新情報を学校現場に積極的に提供するので、注目して欲しい。また、教育現場での著作物の利用について法律の改正が必要と考えるなら、声をあげることも必要である。著作権は法律だから遵守するのは当然だが、子どもたちへの教育では、罰則の厳しさを理由にするのではなく、なぜ守らなければならないか、気持ち=モラルの部分を教えてほしいと思う。
多様な価値観がある時代である。子どもたちには、ルール化される前段階であるモラルを教えることが必要だと思う。ACCSが、ルールである著作権を情報モラルの観点から教えている理由でもある。
(社)コンピュータソフトウェア著作権協会
(Association of Copyright for
Computer Software)通称ACCS。東京都文京区 昭和60年設立。デジタル著作物の著作権保護や著作権の普及活動を目的にセミナー開催や講師派遣、書籍発刊等を行う。近年では情報モラル指導に関する取り組みも展開中。
http://www2accsjp.or.jp/
【2007年9月8日号】