社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が情報モラル教育の必要性を訴えるようになった理由を詳しく説明しておきたい。
ACCSは、「ソフトウェア法的保護監視機構」として1985年に創設された。ビジネスソフトやゲームソフトの著作権侵害を調査するのが、当初の活動であった。権利者であるソフト会社に協力して、ときには刑事事件や、差し止め、損害賠償請求などの民事事件を通じて、著作権侵害を止めさせる。現在もACCSの中心的な活動だ。
ただ、爆発的なパソコンの普及によって、海賊版ソフト業者、許諾のない違法レンタルソフト業者対策としての刑事事件でさえイタチごっこになりかねない状況にあった。そこで、著作権法に対する国民の認識を高めるため、広報・啓発活動にも力を入れた。ソフトの安易なコピーが違法であることを積極的にPRしたのである。
一方、安易にコピーできる状況が悪いのではないか、という考え方もあり、ソフトに限らず音楽や映画なども、簡単にコピーできない仕組みがあるべきだと考えている。いわゆるDRM(デジタル・ライツ・マネージメント)技術である。これは、意図せずにコピーしたりアップデートしてしまう過失行為を抑止する側面も併せ持っている。現在の著作権法では、DRMなどの保護技術を無効化する行為は違法とされている。そのため、DRMは、ユーザーに不便を強いない簡単なものでも構わないと考えている。
情報保護と言い換えてもいいが、著作権保護には、1、法律・ルール、2、啓発・教育、3、技術的保護手段の3つが必要だ。ACCSでは、法律・ルールに関する活動として、先に挙げた刑事事件や民事事案のほか法制度への提言も行い、技術的保護手段については、技術を持つ会員企業とともに、DRMの研究や普及啓発セミナーを実施している。
啓発・教育については、ACCSは著作権教育だけでは不十分と考え、学校向けに「情報安全セミナー」を行ったり、「情報モラル」に関するスキルチェックの開発や関連書籍の出版を行っている。最近では、ワンマンDJシステムを利用し、ラジオ番組制作を通して情報モラルを学ぶ実践も始めている。
ACCSでは、情報モラルを「情報社会で適切な活動を行うための基礎となる知識や行動」と定義づけている。この中には、1、安全に活動し、2、適切な情報収集と、3、適切な情報発信が含まれる。
例えば、情報収集でネット検索の結果を利用する場合、常に、情報の真贋を判断、分析することが必要だ。情報発信においては、他人の著作権を侵害しないよう注意が必要だしプライバシーや差別語などにも配慮がいる。さらに、掲示板などでのトラブルを防ぎ、詐欺などに遭わないよう、安全に利用する知識も求められるのである。
【2007年6月2日号】