ACCSは、教育ソフトなどパソコンソフトメーカーなど約300社が加盟しており、違法コピー対策や著作権の考え方の普及啓発を通じ、著作権保護活動を行っている。私は、この活動において重要なことは、「法の執行」「保護技術」「教育」の3つのバランスであると考えている。そのため、設立当初から学校現場での教育に力を入れてきた。
ところが、インターネットの普及とともに誰もが簡単に情報発信できるようになり、著作権教育だけではカバーできない状況が生まれてきた。例えば、他人の日記を勝手に公開すれば著作権侵害だが、同時にプライバシー侵害に当たる場合もある。このようなことから、著作権法や個人情報保護法といったルールを核に、それら「法」を守る意識とネチケット、情報リテラシーなども含めた情報モラルについて考えるようになった。
これまで私は、2004年発行の『情報倫理学入門』(越智貢・編、ナカニシヤ出版)の第2章を執筆し、昨年、『情報モラル宣言〜インターネット時代の生きる力を育てる〜』(ダイヤモンド社)を著し、著作権と情報モラルについて論じてきた。これらの中で言いたかったことは、情報モラルとは人の問題であり、コミュニケーションの問題だということだ。
プライバシーやネチケットとは、ネット上に写真や文章を公開するとき、写真に写った人や文章に書いた仲間のことや表現方法そのものに、表現者として配慮することである。表現の影響を考え、他人の気持ちを思いやるということだ。それは「言葉」を大切にすること、その前提として他人の話を聞くことでもある。これこそが、コミュニケーションの第一歩ではないだろうか。
この連載では、このような観点から、情報モラルのベースとしてコミュニケーションや言葉といったことにこだわって書いていこうと思う。
さて、このコラムのタイトルを説明しておこう。一昨年来、私は、「情報モラル宣言」都市構想をさまざまな自治体に向けて説明している。これは、「情報モラル都市」と宣言することによって、住民をはじめ職員の意識を高めることを目的にしている。プライバシー保護やセキュリティ対策は、法律に則って具体的な対策が必要だが、それ以上に情報発信力を高めるための「創作」の復興やネットワーク作りが重要だ。そこで、「宣言」によって運用に魂を込めようという試みである。
今回のタイトルには、これを個人でやってみようという提案を込めた。まずは「情報モラル宣言」をする。宣言した以上は、豊かなコミュニケーションをしているか、心が痩せてしまう貧相な言葉遣いをしていないか、といったチェックの意識付けにするのである。
この連載で私は、確立した考え方を披瀝するのではなく、先生方と一緒に考えようとタイトルを「ノート」とした。先生方とともに私も「情報モラル宣言」を行い、一緒に日々のチェックをしていきたいと考えている。
【2007年5月5日号】