新規に交付金制度創設 外国語教育の充実なども
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政府は6月11日、「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策」を策定。8月13日まで延長された今国会で7月上旬、同対策の内容を盛り込んだ99年度第1次補正予算案を、国会に提出する。補正予算案の規模は民間企業による雇用の創出、少子化対策などを含め5200億円で、このうち、国や地方自治体の雇用創出として「緊急地域雇用特別交付金」を創設して2000億円程度を都道府県に交付。2000億円の1部で、パソコンを扱う能力の高い者を小中高の非常勤講師として採用し、コンピュータを活用した授業を充実したり、外国語の能力の高い者を採用し外国語教育の充実を図りたい構えだ。
「緊急地域雇用特別交付金」ははじめての制度で、どういう手続きで都道府県に交付されることになるか、など具体的な手順は決まっていない。今後、所管の労働省を中心に煮詰められることになるが、6月に決められた「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策」は特別交付金の性格を次のように規定している。
1教育・文化、福祉、環境など緊急性のある事業を対象とし、しかも新規雇用・就業を生ずる効果が高いこと2失業状況、人口などを基準として配分する3都道府県の申請に基づいて交付し、各都道府県は基金を設置し、約2年間にわたり支出する。
そして、下欄に示すような9つの事業を主な具体例としてあげ、外国語教育の充実とともに、具体例のトップとして、コンピュータを扱う能力の高い者を小中高などの臨時講師として採用しコンピュータ教育の充実を図る、ことを示している。
雇用の基準や方法、学校現場に配属する前の研修の方法、県と市町村との関係、などまだ具体的には決まっていないが、文部省はこれを受け6月、情報教育の指導者担当者会議で、学校現場がこの問題についてどんな要求をもっているのか、各県にニーズ調査を依頼した。
調査に際して、教壇に立って教える方法、教員を補助する方法、クラブ活動などを指導する方法、教員研修の講師、技術的な支援、などを例示し、合せて国の施策に対し、前向きの検討を要請した。
これに対し、ある県の担当者は、「コンピュータ教育の指導員の採用が一斉に広がるようなイメージがもたれているが、県としては語学指導やいじめ問題などに対する生活指導員の採用も検討している。また、どのくらいニーズがあるのか、例示だけでなく他にもないか、どんな学校を対象とし何校程度張り付けるか、事業に適格な人が何人程度県内にいるのか、交付金の割合、など検討していることがたくさんある。あらゆる場合を想定し検討を進めている」という。
また、ある市の教育委員会担当者は、「現場からすると、ありがたい。地域の人材活用が言われる時代であり、積極的に対応したい。しかし、学校の教育活動の中に入ってくる問題であり、すべてがうまくいくとは考えにくい面もある。校内の研修体制の強化などを含め、校内でどう活用するかが一番のポイントとなるだろう」と。
また、ある小学校の教師は「外部の人が入ってくるのは、歓迎。学校も狭い範囲に閉じてはいけない。ただ、技術だけでなく教育のことも分かる人であって欲しい」という。
@ 全生徒が学習できるだけのコンピュータの導入やインターネットへの接続を進め、コンピュータ取扱能力等の高い者を、小・中・高校等に臨時講師として活用することによるインターネット・コンピュータ教育の充実事業
A 海外勤務経験者等の外国語能力の高い者を、小・中・高校等に臨時講師として活用することによる国語教育の充実事業
B 小・中学校の直面する生徒指導上の課題を解決するため、児童・生徒の相談相手となる社会経験豊富な中高年を生活相談員として活用
C 中高年離職者等に対するホームヘルパー養成研修の実施、在宅介護ビジネス参入希望企業やNPO等に対する講習の実施等の介護保険導入円滑化事業
D シルバー人材センターやNPO等を活用した都市美化事業、地域環境資源の管理事業、観光振興事業等の地域奉仕・環境改善活動等の実施
E 発掘調査に専門的知識を有する者等を活用した地方公共団体が行う埋蔵文化財発掘調査の促進
F 地図上に、地下埋没物等災害対策、防災関係のデジタル情報を整備するGIS(地理情報システム)の作成作業の前倒し、環境マップの作成等の事業の、住民に身近な行政の効率化等を進める観点からの実施
G 研究支援者を活用した、地域のニーズ、特性、自然条件等に立脚した都道府県等の研究開発の促進
H 資料整理作業を民間企業にアウトソースする等による情報公開への迅速な対応等
教育的立場で技術使える人を
清水康敬・東京工業大学教授の話
「まずは人の問題。どんな人にお願いするか、今の学校が求めている人が来てくれれば非常にいい。しかし、技術的な知識だけを持つ狭い意味の技術者だと、すれ違う可能性もある。同じことが、SE派遣であったと思う。
万能な人はいないと思うが、教育的な立場で技術をどう使っていけば効果的なのか、という能力のある人が欲しい。例えば、退職されて自宅でコンピュータを使っている人とか。
米国では、学校区には大体ITコーディネータがいるが、基本的には教師経験者が多い。現場の先生がテクノロジーを学んでITコーディネータになっている。また、イギリスは全学校にICTコーディネータを置くことを決めている。最近、コミュニケーションのCを加えて呼ぶようになっているのだが、校内に1人ICTを決め、育成している」
現場は歓迎、教師一人では足りない
上越市教育委員会・中島憲一指導主事の話
「画期的だと思う。上越市も今回、ニーズ調査を実施したが、回答を見ると多くの学校が歓迎している。また、特別非常勤講師が直接指導する方式より、学校の教師を補助する方式が歓迎されている。
教師一人でコンピュータを使って授業をした場合、1つの質問にしか対応できず、他の子は待つほかない。また、パソコンの活用では、設置や設定が大きな負担であり、補助者の力は大きいと考える。
上越市では、今年4月に中学校に配置した教育補助員をコンピュータ活用にあてている学校もある。小学校にもコンピュータ活用補助員を設置する構想を持ち、関係者との折衝を進めている。操作技術だけあっても活用の幅は広がらないと考えるので、できれば教育的視点を持った人に期待をしている」
(教育家庭新聞99年7月3日号)
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