衛星回線を使って

都心の学校と青ヶ島小が交流


 「これでマルチの研究発表を終わります。ありがとうございました」
 昨年12月11日、16人と3人の遠隔公開授業が衛星通信で東京の中央区立城東小学校と青ヶ島村立青ヶ島小学校を結んで行われた。両校は文部省のマルチメディア活用方法研究開発事業の指定を受け、平成8年度から3年間、月1回各学年1時間ずつ、衛星通信を利用した共同学習を重ねてきた。
 東京の都心から360キロも離れた地にある青ヶ島小学校は、全校児童数が12名の小規模校。一方、城東小学校も東京駅の真前にある、児童数80人で単学級の都心の過疎校。遠隔授業は本当の意味で何に役立つのか、TV会議による遠隔授業がさまざまな学校で行われつつある中で今後考えていかなければならない課題だが、公開授業では画面を通し遠く離れた2校の共同学習がごくスムーズに行われ、3年間の積み重ねが両校の児童、教職員の間に信頼関係を培っていることを示していた。
 3年間の実践を通して子どもたちはどう変わったのだろうか。「2年生は、児童1人しかいない学級。他校と交流できることが大変刺激になった。人間関係、意欲が広がった」と青ヶ島小の教諭。「4年生の青ヶ島小の学級は児童数2人で、最初は御雛様が黙って座っているようだったが、2年目になり「どうしてそうなるの」と積極的に質問できるようになった」と城東小の教諭。田舎の子ども、都会の子どもそれぞれに知識や興味、人間関係の幅が広がったようだ。
 では、教師にはどんな影響を与えたのか。「島の純朴な子どもと交流していると、比較対照ができ子どもに対する見方が広がる」、「双方向の授業を経験することで、日頃の授業を見直すきっかけになった」。教室の枠を超えた授業は他校の子どもや教師との交流により良い影響を与えたようだ。
 文部省小学校課の北俊夫教科調査官は、新学習指導要領で情報教育が全校種、教科等を通じて明示される中今後求められる学習内容について、たとえを引用し「一匹の魚を与えるより、魚の取り方を教えることが大切」と課題解決の方法を教える学習が大切、と締めくくった。

(教育家庭新聞99年1月1日号)