「文章法」「達成事項方式のポートフォリオ」を
日本教育心理学会でシンポジウム
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日本教育心理学会は、9月16日(土)〜18日(月)の3日間、東京・目黒区の東京大学教養学部駒場キャンパスで第42回総会を開催、そのプログラムの一つとして、17日(日)にシンポジウム「・総合的な学習の時間・の評価をどうするか」を開催した。
「総合的な学習の時間」での評価方法については様々な論議が繰り広げられているが、シンポジウムでは、先進的な評価理論・手法の研究に取り組んでいる安彦忠彦教授(名古屋大学教育学部)、鈴木秀幸教諭(静岡県立島田高等学校)、古庄輝夫教諭(品川区立宮前小学校)の3名から、それぞれの評価に関するアプローチと実践事例が発表された。
安彦教授は、総合的学習は自学自習として認められている時間であるのだから、評価は児童自身によるものがふさわしいと考え、自己評価の方法として「文章法」を推奨している。この方法では、児童は、学習を通じて何を感じ、何を思ったのかを自分自身で書くことによって、自己理解を深める。「教師の側からの所見は、・事実・と・賞賛・激励・示唆・を中心にした絶対的・質的評価とする。児童との合意に基づくものであると良い。しかし、評価項目を決めてしまうと評価が断片的になり、児童が項目に沿ってしか自己評価を書けなくなってしまう」と安彦教授は述べる。
「総合的な学習の時間で、20時間もかけてポスターを書き続けた例がある。子どもの成果として、何をしなければならないか、はっきりさせなければならない」と語るのは、鈴木教諭。鈴木教諭は、生徒が学習上、大きな進歩が見られた場合、その事例をポートフォリオに組み込むという「達成事項方式のポートフォーリオ評価」を推奨する。評価の基準として、学習過程上の処理技能、態度の発達、社会的技能の発達、概念の発達(教科で学んだ技能・知識を別のコンテキストで運用できること)、および身体技能の発達をあげた。このような基準を設ける一方で、「進歩の遅い生徒の場合や障害を持つ生徒の場合には、小さな進歩でもポートフォリオに組み込む配慮が必要である」と鈴木教諭は述べる。
具体的な評価の手続きとして、鈴木教諭は自身の教育実践から、次の4段階をあげた。(1)達成事項の選択は教師が行なう「教師主導段階」、(2)教師が事例を選択した場合は生徒の意見を聞く「生徒の一部参加」、(3)生徒と教師が共同で選択する「生徒との話し合い」、そして(4)生徒が事例の選択の責任を持つ「生徒中心」。「(1)から(3)は必ず実行したいが、(4)の段階に進むには時間がかかる。ある外国の事例では、高校または大学で到達するレベルである」と鈴木教諭は語る。
3人目の発表者として、小学校での実践事例を紹介したのは古庄教諭。児童が興味を持つインパクトのあるテーマとして、古庄教諭は、都会っ子の児童に酪農体験をさせている。牛に触れて乳絞りを体験するとともに、児童自身が酪農の専門家と手紙で連絡を取って話を聞く。そこで学んだ内容は学習を進めて、下級生や保護者に発表する。大切なこととして古庄教諭は、「児童は、学習が進むにつれて、はじめに決めたテーマの中心から外れていくことがある。教師は、無理に軌道を修正しようと思わずに、そこから新しいテーマとしてどのように展開していくのか見守ることが大切だ」と述べる。その良い例として、牛の乳から牛乳が生成される仕組みを調べていた児童達が、人間の母乳に関心が移り、それによって育てられた自分の命を尊ぶ心に気づいた事例が紹介された。
(教育家庭新聞2000年10月7日号)
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