IT革命の行く手は
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人間のもつ「イメージ」を情報として活用する技術を調査研究し、文化や産業に、ひいては国民生活に生かすことを目的として平成4年から活動している財団法人イメージ情報科学研究所(遠藤彰三理事長)は・IT革命の行く手を担う・先進的メディア・コンテンツの形成と発展・のための・LIST Salon(イメラボ サロン)Tokyo2000・の第1回会合を7月27日午後1時30分から東京都文京区本郷の学士会館分館で開催した。この日は・なぜ、今・ヒューマンメディア・か・を東京大学原島博教授、・脱サラ、企業、夢に挑戦「生活者としての自分」はいまどこに・をニューミレニアムネットワーク社長工藤忠継氏が講演。研究者と実践者の違った立場で最新の情報を提供、参会者に感銘を与えた。
以下は原島教授講演の要旨。
「つい先日コンコルドが落ちたが、コンコルドの初飛行は1969年で、この年はアポロ11号の月面着陸があり、また原子力船むつが進水しています。大きな話題でしたがそれぞれが半ば挫折の経過を持っている。アポロ計画は13号で事故があり、もともと20号までの予定が17号で中止。コンコルドは69年の初飛行から結局16機しか生産されなかった。このように69年は乗り物の最先端技術のものが生まれた年だが、それぞれ失速していることに気が付く。
1914年蒸気機関車が生まれるとすぐ鉄道が開通、欧州ではイギリスから始まってヨーロッパ全体にあっという間に鉄道網が敷設されました。ビックリするのは航空機ですね。100年前1900年のときはまだ飛行機は飛んでいなかった。それが20数年後にはリンドバーグが大西洋を横断し、現在では誰もが当たり前のように飛行機に乗り、その延長線上として宇宙技術の開発に繋がっています。スプートニク打ち上げは1957年ですが、そのあとアメリカは僅か12年でアポロ11号を月に到達させている。この勢いで行けば2000年頃には誰でも月に行けるではないだろうかと、当時のSF小説はかなりそういうレベルで書かれておりました。
無線はマルコニーの1895年の通信実験からわずか20年後・30年後にラジオ放送・テレビ放送の形で実験がはじめられている。このように「技術」には発展する・旬・ピークがあるように思うのですね。現在その・旬・にあるのはコンピュータとその延長上にあるマルチメディア、IT(情報技術)でしょう。
技術に「旬」があるのはどうしてでしょうか。それは技術の発展の背景には国家、時代の要請があるからです。
現代は、情報ネットワークの制覇時代。アメリカによるネットワーク覇権は今後100年も続き21世紀はアメリカのリーダーシップのもとで世界が動くことになると思う。
交通技術の側面から歴史を整理してみたが、視点を変えてみた21世紀はどうなるだろうか。現代は対象が非常に複雑化して専門的な寄せ集めでは目標が見えない、あるいは目標の間にいろいろな矛盾が生じるようになっている。
かってわれわれは大目標があってそれを実現するために小目標を立ててきた。社会でも企業でもパターンは同じで大目標があってそれを達成するための小目標が分化して存在する。目標達成に至るプロセスは自明で疑問をはさむ余地はなかった。しかし今日は、今まで正しいこと、当然、と考えられていた科学や産業の発達が、本当に人類の幸せに結びつくのだろうか、いろいろなマイナス面があるのではないかとの疑問が生まれ、理だけでなく感性面でも広く考える時代が来た。
メディア融合ということで全体を突き詰めたところが重要になっている。
かつて天才レオナルドダビンチは一人ですべての能力を持っていたが、今は複数のダビンチが手をつないでものを探求する時代。それが21世紀だと思う。私は東京大学の新しい組織として・情報学環・を作ったが・部・でなくて・環・にしたところがミソで新時代に対応して、理系も文系も専門分野に関係のない異才集団が環に結ばれて、人類に役立つ研究を進めようとしている。これもヒューマンメディアの一つだと思う。
(教育家庭新聞2000年8月5日号)
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