「ロボット」で学ぶ科学技術
未来の科学者・技術者育成を目指し、世界の子どもたちが集う自律型ロボットによる教育コンテストWorld Robot Olympiad(WRO)第5回世界大会が今秋横浜で開催される。それに向け、国内では6月から各地で予選大会や指導者向けのセミナーなどを開始する。WROの開催意義とロボット製作による教育的意義について金井徳兼氏(神奈川工科大学)に聞いた。
自律型ロボットによる教育コンテスト「WRO」は、プログラム制御による自律型ロボットを子どもたちが制作、与えられた課題をクリアしていく「ロボット・アスリートによる競技」です。リモコン操作によるロボットではありません。公式競技では、小学生部門、中学生部門、高校生部門があり、各チームは2、3名の児童生徒と指導教員などの顧問で構成、ロボットの構造および制御ソフトをもとに自律型ロボットを作成して競技します。
WROはITスペシャリスト育成が目的ではなく、あくまでも科学技術体験を世界中の、より多くの子どもたちに提供することを目的としており、大会参加を目指した講習会や科学技術体験会を継続的に開催しています。各国がボランティアベースの活動であり、「ものづくり人材」育成支援への熱い気持ちが大会を支えています。
日本では財団法人科学技術振興財団の協力を得、産官学の有志によりWRO Japan実行委員会(名誉実行委員長 有馬朗人・財団法人日本科学技術振興財団会長)が組織され、ロボットや組み込みシステムをテーマとした「ものづくり人材」育成を目的に活動が開始されました。2004年開催の第1回世界大会から毎年参加しており、昨年実施された第4回では初の金メダルを獲得するなど、実績が上がってきてます。
11月、横浜市で実施される世界大会には、世界からおよそ600チームが集まります。日本からは、6〜8月にかけ約20か所で実施される予選会を経、8月31日に開催される決勝大会に勝ち残った80チームが参加する予定です。予選会は、科学技術体験をより多くの子どもたちに体験していただく機会の提供という点から、初めて参加する児童生徒や指導教員向けの「講習」を実施する予選会もあります。
さらにエキシビジョンとして、20歳以下の大学生部門もあり、国や言葉を超え、各国からの参加者が当日即席で混成チームを構成、競技する国際交流マッチなども予定されています。
平成23年度から実施される新学習指導要領「審議のまとめ」には、中学校段階からすべての生徒にプログラミング教育を実施することが盛り込まれており、ロボット学習はこれからますます重要性を増していきます。
そこで本国際大会では、教員や研究者による「ロボティクス教育シンポジウム」を開催します。これは日本発案によるWRO初の試みで、プログラミング教育含めた自律型ロボットやプログラミングによる計測・制御の指導の在り方を小中高の先生方に確立していただく一助になれば、との思いで企画しました。
当日は日本を含め世界各国の各国の教員から、ロボット教育の指導事例やアイディアについて多数の発表があります。現場教員にとって、各国の初等中等教育段階におけるロボット教育の実践事例を一同に会して見ることができる、貴重な機会になるのではないでしょうか。
今年度世界大会のテーマは「環境」。世界の子どもたちが地球環境を考える重要な機会を提供していきたいですね。
WRO Japan
(西田 理乃)
【2008年2月2日号】