教科「情報」必修の存続は国家的な課題
通産省時代には100校プロジェクトを実現し、教科「情報」生みの親の1人と言われている。97年、情報教育の必修化が決まったのは、鈴木氏の尽力が大きい。「情報教育は日本経済社会の扶養に不可欠」とし、トップダウンで教科「情報」の必修化が決定した。
「1995年当時、教科『情報』を必修にすることに現場からは抵抗があった。しかし『情報』を入れることで情報リテラシーをあげていくのは国家的な課題だと考えた。産業社会と情報社会では必要とされる能力が決定的に違う。物質が重要な価値を持ったのが産業社会であり、日本では産業社会で成功するための教育が根付いている。しかしこれからは情報社会として成功するための教育ノウハウを確立していく必要がある」
「情報」化の波は世界的なものだ。「情報過少の時代は『情報』を獲得することに意味があった。しかしインターネットの普及で『情報』量が圧倒的に増えた。その中で如何に差や異を作り、新しい価値を生み出せるのか。情報洪水の中で生き延びる力がこれからは必要」
母校の灘高で3年間「情報科」教員として勤めた際には「情報」の授業の中で自分の人生プランニングを課題とし、灘高生の「東大離れ」「海外大学への受験」を加速させる結果にもなった。
現在、教科「情報」にも未履修問題が浮上し、教科「情報」を必修から選択科目に、という声も現場から上がっているがそれについて「選択科目になると『情報』は形骸化してしまう。『情報』を必修とすることが学校教育全体にとって不可欠であるという証拠を意識して集めていく必要がある。それと共に、現場から多くの声を上げ、直接提言していくことも必要だ。秋以降に国会で討議されるだろう。国会の政策現場で『情報』のイメージを持てる人は少数派。それまでに説得力ある説明作りが必須。2007年度から改めてリセットして頑張っていく必要がある」と、教科「情報」必修の存続における今後の活動の重要性について強調する。
「かつて学校には世の中の最先端の設備が整っていた。今は、古いマシンを見たければ学校に行け、という笑えない状況だ。日本では、欧米諸国に比較し最も品質が良く安いインターネット通信環境が整っているにも関わらず、学校は『昔の環境』という状況を是正したい」
電子黒板については「政策のアジェンダにはなっていないが、情報教育の学習環境として何が必要なのかを考えたとき、電子黒板システムは標準装備として学校現場に入れていかなければならない。より望ましい学習環境の具体的な提案については、政府側のイニシアチブがまだ足りない状態。そこを手伝っていきたい」と述べた。
〈プロフィール〉
参議院議員。早大IT教育研究所客員助教授。慶応SFC助教授歴任。
鈴木寛公式サイト
【取材 西田理乃】
【2007年4月7日号】