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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」36

勇気を持って2年間ICT活用を

ハードルを越えれば効果が必ず見える
尚美学園大学教授
小泉力一氏

小泉力一氏の写真

■進行する地域間の情報格差

 全国的に見ると、LANやコンピュータなどの整備が進んでいる地域では授業におけるICTの活用も進んでいる傾向にあり、ICTの恩恵を受ける子どもの数の地域格差が無視できなくなっています。そろそろ教育の情報化を国民全体で考えていかないと、この格差の是正が難しくなってしまう。かなり危機的段階といえます。

 この状況を打開するためには、先生方が授業におけるICT活用能力を身につけること。数年前と比較すると成績処理やプリント類の作成など、校務でのICT活用は進んでいるのですが、その能力を授業でに結びつけていくには、もうひとつハードルを越す必要がありそうです。

 小学校ではICTを活用した優れた授業事例が増えてきていますが、中学・高校での進捗がはかばかしくありません。  中学・高校と進むにつれて各教科で学習する内容が多岐に渡り、先生方は「知識」ベースの内容を効率良く教えるには「黒板」が手っ取り早い、と考える傾向があるようです。しかし、例えば大手予備校や進学塾がe-ラーニングや映像コンテンツを活用しているのは、その明らかな効果があるからこそ。その「効果」に至るまでのハードルが学校の先生方はなかなか越せていない、ということではないでしょうか。

■明確な動機付けでICT活用を

ICT活用のポイントは「勇気を持って2年間は使ってみる」こと。初年度は準備に時間がかかったりハードやソフトに慣れないため失敗したり、逆に使いすぎたりといった「失敗」があるもの。そこを乗り越えると、ICTのメリットや効果的な使い方が分かってきます。ICTは「道具」ですから、ある程度の「慣れ」が必要なのです。

 そのためにも、やはり強烈な動機付け必要になるわけです。  まずは外側からの動機付けとして、文科省が掲げた、先生方の「情報活用能力」を評価、それを処遇に反映させるという目標があります。 その評価基準の策定目標が2006年度中。もうあと数ヶ月です。現在私も委員の1人として文科省の検討会に参加しており、「評価基準」を策定中です。  さらに「評価」するだけではダメで、「基準に満たない」場合どのような研修が必要か、どういう形で先生方に研修をしていただくかについても検討する必要がありますが、この件については来年度以降の作業になるかもしれません。

 もうひとつ、やはり内的な動機付けが必要です。現在、授業におけるICT活用が子どもたちの学力向上に効果があるということを検証するためのプロジェクトが進められています。昨年度に開始され、今年は2年目にあたります。

 今年度の特徴としては、教員や子どもたちの意識調査に加えて、ICTを使った場合と使わなかった場合との違いを、客観的なデータで検証する点です。今年度も年明けの1月26日(金)に成果発表を行います。昨年同様、多くの先生方に参加していただきたいですね。

 一方、情報教育の推進を目的として、文科省から11月に、リーフレット「すべての教科で情報教育を」が全国の学校に配布されました。これには、小中高のあらゆる教科で情報教育を実施していただくために、具体的な授業事例を挙げて教科における情報教育の可能性をわかりやすく説明されています。どの教科でも子どもたちの情報活用能力の育成にかかわる指導ができることを理解してもらえると思います。PDF版のリーフレットは文科省のサイトからダウンロードできますし、詳細な内容については、校種ごと教科ごとに分類されたWebページで参照することができます。是非、すべての先生にご覧になっていただきたいですね。

http://www.nicer.go.jp/it-edu/
<プロフィール>都立高校教諭を経て、H17年より現職。中央教育審議会専門部会委員(家庭、技術・家庭、情報)。

(取材 西田理乃)

【2006年12月9日号】