「国際バカロレア教育」でグローバル人材」を育てる
加藤学園暁秀高等学校・中学校 ウェンドフェルト延子氏 |
11月26日、教育家庭新聞では「英語教育とグローバル教育セミナー」を開催し、全国から英語教育担当者などが参集した。セミナーでは、各大学や高等学校が如何にグローバル人材育成に取り組んでいるかについて講演された。イマージョン教育で知られる加藤学園暁秀高等学校・中学校(静岡県・沼津市)では、国際バカロレア資格習得を念頭に入れたカリキュラムを展開し、生徒らは全世界の大学に入学している。(その他の講演内容については1月1日号掲載)
同校では、90年代初頭より全国に先駆け、英語イマージョン教育を行っている。中学バイリンガルコースの授業は、およそ半分を英語で行い、高校は約75%の授業を英語で行なっている。同校でバイリンガルコースディレクターを務めるウェンドフェルト延子氏は、「グローバル化の中で日本の企業は今、国際的な戦力獲得のため、国籍によらず有能な人材を求めています。社内の公用言語を英語にする動きも見られます。社会の急激な変化に取り残されることなく、国際的に活躍できる即戦力を育てるには学校教育の転換が必要」と話す。
同校で教育の主軸となっているのは、「文部科学省の学習指導要領」、「イマージョン教育」、「国際バカロレア教育」だ。ウェンドフェルト氏は「日本の学習指導要領と国際バカロレアの教育内容には親和性があり、両立が可能。それをイマージョン教育で取り組んでいる」と述べる。
国際バカロレアディゴロマ資格とは、スイスの財団法人「国際バカロレア機構」(IB)が定める資格だ。世界的に高等教育への入学資格として認知されており、海外の大学進学もスムーズにできる。2010年時点で、138か国中2925校で採用されている。
同校では2000年、インターナショナルスクールも含めて日本で初の国際バカロレアMYP(Middle Years Program=中等教育部門)の認定を受け、その2年後には国際バカロレアDP(Diploma Program=大学進学資格試験部門)が認可された。加藤学園のバイリンガルコースでは、高校1年までにMYPを取得し、高2、3生ではDP取得を目指す。
MYPで示されている学習者像は「探求する人、知識のある人、考える人、コミュニケーションできる人、正義感のある人、心を開く人、思いやりのある人、挑戦する人、バランスの取れた人、振り返りができる人」。ここから毎月一つ取り上げ、全教科でその月の課題テーマとする。
ある年度の高校1年の化学の試験課題は「原子力と武器」。「原子爆弾の開発者オッペンハイマーから原爆開発プロジェクトを中止すべきかどうか相談を受けた。その後起こったことに照らし合わせてオッペンハイマーに進言せよ」というものだ。
高2、3年ではDP取得条件である(1)知の理論の論文、(2)CAS(Creativity、Action、Service)、(3)課題論文執筆などの授業が展開される。知の理論とは、日常生活の道義的・政治的・審美的決断の根拠について問うものだ。
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ディプロマ国語試験の一例を挙げると、「文学作品が家や社会が人間性を抑圧するものとして描かれることがあるが、抑圧者と被抑圧者との闘いがどのように描かれ、どのような効果を上げているか学習した作品から例を挙げて述べよ」というものだ。
CASは、3つの分野における各50時間、計150時間の校外活動だ。俳句甲子園や英語ディベート大会、翻訳選手権ほか、さまざまな活動に参加する。こうしたカリキュラムを通じ、生徒は学校や自分の枠を打破した関わり合いから新しい自分を発見していく。
同校による「国際バカロレア」対策のカリキュラムは、日本における「総合的な学習の時間」や「協働学習」の理念と近似した部分がある。それについてウェンドフェルト氏は、「国際バカロレアの教育理念を日本の文部科学省も参照しているようです。バカロレアに関する学習会に文部科学省からの参加も見られます。文部科学省の実現したい学習理念は良いものの、成功に至っていない理由は、実践のために必要な細部にわたる積み重ねのためのシステムが整備されていないからでは」と話す。
【2010年12月4日号】