衆議院議員
経済産業委員会委員・財務金融委員会委員
佐藤ゆかり氏
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「教育」「産業」日本の未来の両輪
耐震化、エコ化、ICT化を通し、安全・安心で、次世代の子どもを育てるのにふさわしい学校作りを推進するスクール・ニューディール構想。中でも太陽光発電の導入は、環境問題や教育的観点からも重要な意味を持つと佐藤ゆかり氏は述べる。太陽光発電の学校導入により期待できる影響を聞いた。
日本の太陽光発電は、かつて世界トップクラスの技術を誇っていました。それがドイツやスペインにその座を譲り渡し、今や総設備容量は3位にまで落ちています。2008年の1年間で新規に設置された数では、急激に太陽光パネルの設置を増やすアメリカに抜かれ、さらに日本の順位は下がります。
太陽光発電の技術開発や利用において、世界各国で熾烈な競争が繰り広げられる中、その重要性がようやく日本でも再び認識されるようになり、政府与党をあげて奨励する動きが出てきました。
現在すでに約1200校の公立の小中学校に太陽光パネルが設置されていますが、スクール・ニューディール構想では、この10倍にあたる約1万2000校にまで設置校を増やす目標を掲げています。学校への太陽光発電の導入に際しては、97・5%(国費50%、臨時交付金45%など)が国の予算で賄われ、実質的に自治体の負担は平均2・5%程度となります。
公立の全小中学校に太陽光パネルが設置されれば、学校で使用する電力のほとんどを太陽光でまかなうことも可能です。
太陽光パネルを設置した場合、1校あたり東京ドーム大の森林が吸収するのと同じぐらいのCO2が削減されます。これが全国の学校に広がれば、その効果は計り知れません。さらに日照量や発生電力量が一目で分かるパネルも同時に取り付けることで、自分たちの学校が太陽光から電気を生み出していることを子どもたちが目で見て確認することもできます。これまで目に見えにくかった「エネルギー」について学習する良い機会ともなります。
これからの社会において、環境関連は成長が期待される産業分野です。教育と産業は日本を動かすために欠かせない重要な両輪。産業が国を成長させ、その産業を動かすための人材を教育が生み出します。
しかし、残念ながら環境や医療・福祉関連など、成長が期待される国内需要の産業に人材を送り出すための教育体制は、十分とはいえません。現在の日本では、文系に人材が偏る傾向があります。高齢化社会にもかかわらず医学部を始めとする理科系の大学卒業者が不足するなど、科学技術立国日本を名乗るにはおぼつかないレベルです。
かつて子ども達が電車の機関士にあこがれたように、太陽光発電をきっかけのひとつとし、理科や科学技術への関心をより高め、環境関連の仕事やエネルギー技術に関する仕事に携わりたいと考える子どもが増えることに期待したいですね。学校への太陽光パネルの設置においては、休日の際に発生した余剰電力をどうするかといった課題もいくつか残されています。そこは議論を重ね、課題の解決を図ることで、世界に先駆けて日本がCO2削減の目標を達成できるものと信じています。
21世紀はアジア繁栄の時代と言われる中、アジアをリードしていける日本であり続けるためにも、これからの日本を背負って立つ子どもたちには、新しいものを取り入れ、様々な刺激を受けることで柔軟な発想のできる人になってほしい。また、それが可能になる学校環境を整備し、多彩な学習の機会を提供するのが、大人の役割でもあるのではないでしょうか。
【2009年08月08日号】
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